「ツイセキ」です。
クマやイノシシなどの出没が県内各地で相次ぐ中、「ある液体」を使って害獣を人里から遠ざけようとする実験が安芸高田市で始まっています。
その可能性を「ツイセキ」します。
【五十川記者】(8月29日 @広島県安芸高田市)
「この木です。クマの痕跡ではないかということなんです。クマが引っかいたような跡が確認できます」
人里のすぐ近くまでやってきたとみられる「クマ」の痕跡。
クマやイノシシ、鳥などを含む野生動物全般を「未然に」追い払おうと安芸高田市内では、この夏からオリジナルのある「液体」を使って効果を検証しています。
【江の川漁協・熊高昌三 組合長】
「この辺を避けて通っているんだということになれば、さらにそれを広げていって人里から遠ざける形ができれば目的を達成できる」
クマが来たとみられる木に液体を吹きかけ、およそ1カ月…周辺に、新たな痕跡は見られなくなりました。
【江の川漁協・熊高昌三 組合長】
「カプサイシンの臭いに反応したのかなと。いま実証実験中なので、記録をしているんですけどね」
含まれているのはトウガラシから取り出した辛み成分「カプサイシン」クマに直接吹きかける「クマよけスプレー」にも使われる刺激の強い成分に着目し、江の川漁協が実験に乗り出しました。
【五十川記者】
「こんにちは、宜しくお願いします」
重要な成分「カプサイシン」は庄原市東城町で生産されたトウガラシを使います。
【吉岡香辛料研究所・吉岡紘 代表】
「国内で手に入る品種の中では一番辛いものになりまして、ハバネロの8倍くらいの辛みを持っている激辛トウガラシになります」
【五十川記者】
「ハバネロの8倍ですか」
臭いはそれほど感じませんでしたが、どれほどの辛さかと言うと…
(なめてみる)
【五十川記者】
「味はしないんですけれども、痛みが来ますね。味はないです。辛さを超えている感じが…ちょっと汗が出てきました。顔全体から小さな汗の粒子が吹き出てくる感じですね」
【吉岡香辛料研究所・吉岡紘 代表】
「動物を忌避する商品っていうのは、必ずカプサイシンが入っているんですよ。人間と同じで異常はかなり感じると思います」
クマだけでなく、イノシシの出没エリアもカプサイシン入りの液体をまいてから変化が見え始めたと言います。
【住民は】
「朝来てみたら、(イノシシの足跡が)しっかりあったけえの。ここまで来てどこに行ったんかのとたどってみたらこっちに逃げとるんよ」
【江の川漁協・熊高昌三 組合長】
「裏に帰ったんだ」
畑の周辺に「カプサイシン」の液体をまいたところ、臭いに敏感なイノシシは農作物に一切手をつけることなく引き返していました。
【住民は】
「効果があったんじゃない?
【江の川漁協・熊高昌三 組合長】
「あそこにうまいウリがあるのに行ってないけえね」
【住民は】
「行っていないんじゃけえ。うちはこれをやってもらったけえ、ちょっと半分安心しとる」
江の川漁協では、今後、さらに実験データを増やし、「カプサイシン」の効果を確かめたい考えです。
【江の川漁協・熊高昌三 組合長】
「まだまだ実証中なので分かりませんけれども、一定の成果は見えてきたのかな。柵は手間もかかるし、お金もかかるし、柵をシカは飛び越しますし、その辺を二次的に防ぐようなもので臭いというものを使えないかなと」
一方、専門家は「カプサイシン」の効果の持続性を課題にあげます。
【広島市安佐動物公園・野田亜矢子 獣医師】
「臭いによる刺激って、慣れてしまうと思うんですね。舐めたり鼻についたときにそこに痛いという刺激が続くのであれば、ある程度、もしかしたら『ここは危ない』という認識につながってくれるかもしれないですけれども」
一度まいた「カプサイシン」の効果がどこまで持続するのか…野生動物への「見えないバリケード」をつくるためのハードルになりそうです。
<スタジオ>
元々は江の川漁協が魚を食べるカワウをどうにかできないかということで始めたということで、発想の転換というところも感じます。
ちなみに使っている唐辛子の品種ですが、ドラゴンズブレス=龍の息ということでハバネロの8倍の辛さがあるということでした。