京都府北部・丹後地方に位置する「伊根町」。京都市内から車で2時間ほどの、のどかな地域です。
海の上に古民家が浮かんでいるような「伊根の舟屋」が人気スポットとなっています。
唯一無二の風景を求め、人口2000人に満たない町には年間48万人超えの観光客が訪れます。
歓迎の声が聞かれる一方で、観光客をめぐっては問題が続出。小さな町の観光名所で、何が起きているのでしょうか。
■日本海に浮かぶ「舟屋」は世代を問わず人気の観光地
京都府伊根町にある観光名所「伊根の舟屋」。「舟屋」とは一階部分が海に面し、舟置き場となっている独特な建物です。
およそ230軒が軒を連ねていて、日本海に浮かぶ「舟屋」は世代を問わず人気の観光地となっています。平日も、多くの観光客でにぎわっていました。
【観光にきた大学生】「風情があるっていうか京都を感じますよね。静かでいい観光地やな」
しかし、そんな町でいま、ある異変がー。
【地元住民】「(観光客が)増えていることは感謝しんとあかんこともあるのもわかるんですけど、ちょっと異常ですね」
【地元住民】「(週末は)もう出ないですし家から。穏やかな伊根に戻して欲しい…無理だろうけど」
住民が頭を抱える理由は、京都市などの都市部で問題になっているオーバーツーリズム。伊根町でも深刻な事態に陥っているのです。
地元住民によると、週末は観光客でごった返すとのこと。小さな町に起きた「大きな変化」。週末の現地を取材すると、みえてきたのは町を二分する問題でした。
■狭い路地に多くの車と人が行き交い、危険な場面も
日曜日の午前中に訪れると…
【記者リポート】「観光客はまばらで、決して多い印象はまだ受けません」
平日とさほど変わらない光景が広がっていますが…平日にはいなかった交通誘導員の姿が!
【交通誘導員】向こうからも来るし、だから両方からくるからこっちを止めたり。昼休みがごちゃごちゃになる。他県ナンバーが多い」
さらに、午後1時をすぎると、町の中に多くの車が入り込みあたりは大渋滞に!
伊根町には鉄道がなく、ほとんどの観光客が車で訪れます。
周辺の道路はかなり狭いうえ、対面通行のため対向車とすれ違うときはすれすれ…さらに歩行者もいて危険な状況です。
【京都市から来た観光客】「道が狭いなと思って。さっき脱輪しかけたので怖かったですね。周りの方が助けてくれました。後ろから『右右右!』って言われて」
伊根町の去年の観光客数はおよそ48万人と過去最多を更新。ことしはそれを上回るペースで推移しています。
オーバーツーリズム対策として、伊根町は3カ所の駐車場を設置し、およそ100台をとめられるようにしているものの、この日はほぼ満車状態。
■ポイ捨てや私有地への侵入、勝手に泳ぐ人まで…
ほかにもこんな影響がー。
【記者リポート】「私有地につき立ち入り禁止と書かれています。無断で立ち入る人が多いのでしょうか。ここにもありますね。細い道なんですが、ここにも書かれています」
無断で私有地に立ち入る観光客が後を絶たず…さらにー。あちらこちらでみられるゴミのポイ捨て。そして個人の舟屋周辺で泳ぐ観光客まで。
小さな漁師町で巻き起こる深刻なオーバーツーリズム。取材を進めると、その影響は住民たちの関係性にも及んでいる現状が見えてきました。
■観光客の恩恵を受ける地元住民は「ありがたい」
物産店を営む北野恵さん。昔は地元住民用の食料品を主に扱っていましたが、いまは、観光客向けの商品を多く販売しています。
【北野商店・北野恵さん】「伊根町にうちしか店がないんですわ。2~3軒あったんですけどみんな辞められて。もう70%が観光客です。ありがたいですね。この商売だけで生活しているので」
こうした、観光客の恩恵を受けられる地元住民はほんのひと握り。多くの人がそうではありません。
■「ひたすら迷惑」と話す地元住民も
舟屋で生まれ育ったというこちらの女性は、観光客への不快感を滲ませます。
【地元住民】「(観光客は)ひたすら迷惑!本当に。人が入っていると、入ってもいいんやということで入ってくる」
舟屋が観光客が多く通る道路に面しているため、無断でトイレを使われることもあるそうです。
■取材中にも勝手に敷地に入っている人が…
取材中にも勝手に敷地に入っている人が。写真を撮っていたのでしょうか。
【地元住民】「伊根は産業がないとこなんで、だから伊根町としては観光業で生活を立てようと思うとそれはOKかな。我々はいらんけど…」
町の状況を理解した上でいまの状況を“我慢”すると話す女性。最後に、カメラに向かって不満を口にしました。
【地元住民】「伊根町がどう思っているかですよね我々を。お客さんが多い方が収入があるんかどうか知りませんけど」
■観光業にかじを切る町は、この状況をどう受け止めているのか
地元住民の生活を脅かすだけでなく、町の分断を助長しかねないオーバーツーリズム。
観光業にかじを切る町は、この状況をどう受け止めているのでしょうかー。
【伊根町企画観光課・豊田裕子係長】「多くの方に伊根町を楽しんでいただいているんだなと思いつつ、一方で地域住民の皆さんの静かな暮らしが…維持ができていないと、問題を抱えていると認識している。観光の方も楽しんでいただいて町民の方も安心して過ご安心して過ごしていただけるまちづくりを目指していきたいです」
オーバーツーリズムがもたらす様々な問題。解決の手はあるのでしょうかー。
■「駐車場を作るという投資と規制が必要」京大・藤井教授
都市社会工学が専門の京都大学大学院の藤井聡教授はこの問題について、「駐車場を作るという投資と規制が必要」だと指摘しました。
【京都大学大学院藤井聡教授】「一般的には、あの地域は交通が入りすぎているので一番最初に我々が考えるのは、料金をかけることですよね。通行料金、あるいは通行規制をかける。
料金をかけることをしなくても、この土地だったら駐車場をたくさん作って、駐車料金にしっかりお金を取る。そこにいくのにお金がかかると言う状況にそれなりに調整を図っていくことが必要ですよね。入場料を取るのもあるでしょうけど、規制をかける方法がいくらでもありますから。
しっかりと駐車場を作るという投資としっかりとした規制をかけていく。それでオーバーツーリズム問題を解消していくのが 一番必要なんじゃないかと思います。あの土地はあそこで暮らしている方のためにある土地なんだから。余っている部分にちょこっと観光客が行かせていただくだけだから」
(関西テレビ「newsランナー」 2025年8月29日放送)