北陸新幹線の敦賀-新大阪間のルートを再検証する声が上がっている。2016年に与党間で小浜-京都ルートが決定しているが、京都府や京都市が地下水への影響などの懸念を表明し、議論が停滞。その状況下で行われた参院選で、京都選挙区では、計画の見直しを主張した日本維新の会新人がトップ当選を果たし、小浜・京都ルートを主張している北陸新幹線与党整備委員会委員長の西田昌司氏は、2番手での当選という結果に。この結果を受け、西田氏はこれまでの主張をひるがえし「米原ルート」を含むルートの再検証を国土交通省に依頼した。現状を打開するために必要なことは何なのか、取材した。

西田氏が“ルート再検証”を国交省に指示

北陸新幹線与党整備委員会の委員長を務める自民党の西田氏は、7月20日の参院選で再選を果たしたものの、米原ルート再検討を訴えトップ当選した日本維新の会の新人候補に大差をつけられた。
  
この結果を受けて7月30日には、自身のYouTubeチャンネルで次のような発言をした。
 
「北陸新幹線の小浜ルート、これに対して米原ルートなどももう一度再検証して報告してほしいという事を国交省に指示した」
  
これまで「小浜・京都ルート」以外聞き入れなかったこれまでの主張を大きく転換した形だ。
  
日本維新の会代表で大阪府の吉村知事も「米原ルートと比較検討したうえで、どのルートが一番適切なのか、そこを判断するべきだ」と主張した。

参議院・京都選出の自民党の西田昌司議員
参議院・京都選出の自民党の西田昌司議員
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加熱するルート再検証を福井県知事が“けん制”

8月8日、隣の石川県で開かれた自治体や経済団体でつくる石川県民会議が開かれた。会議では、現行の小浜・京都ルートについて、年内に課題解決のめどが立たない場合は、米原ルートを含めて検討するように国に求めることを全会一致で決議した。
 
石川県・馳浩知事:
「いつまでも待っていられないということです」 
 
過熱し始めたルート再検証の動きを、同日、福井県の杉本知事は定例会見で、こう“けん制”しました。    
  
福井県・杉本達治知事:
「長い経緯があって現在の形になっている。法律や事実関係を全部なしにして白地で物事を議論しようというのは、少し乱暴。まずは乗り換えなしの利便性、ルートが短く近い、という経済性や時間の優位性や国土強靭化の観点を踏まえて小浜・京都ルートが決定されているという事実をなしにすることはあり得ない」
  
そもそも、敦賀-新大阪間を着工するには5つの条件があり、その中には沿線自治体やJRの同意がある。福井県に加え、滋賀県も米原ルートを求めておらず、JR西日本も従来からの考えを変えていない。 
 
JR西日本・倉坂昇治社長:
「小浜・京都ルートが、お客様の利用状況からすれば望ましいルート。大阪まで直通で結ばれて初めて効果が出るのであって、米原で直接乗り入れすることが難しい米原ルートは私たちも望まない」

福井県知事
福井県知事

地元で活発化する小浜・京都ルート実現に向けた動き

8月24日には若狭町で、小浜・京都ルートの早期実現に向けた地元の声を届けようと署名活動が行われた。企画したのは、若狭の経済界の若手でつくる団体だ。
  
署名に協力した人は―
「将来、近くで新幹線に乗れるようになるといいなと思って署名した」
「敦賀延伸の状況を見てみると、いい影響が出ているので、それを小浜まで、さらには京都までつなげることで、さらに福井県に新幹線効果が出てくると思う」
 
署名活動を企画した未来若手プロジェクトの水江会長は「ルート問題が再検証となったので、そこで振り出しにもどることがないよう、若狭に住む我々としては小浜・京都ルートを切実に望んでいるという民意を届けたい」とその意図を話す。
    
また小浜市は8月から、小浜・京都ルートの認可・着工を待たずに、新駅が予定されている位置周辺のまちづくり計画の策定に着手した。

若狭町で行われた署名活動
若狭町で行われた署名活動

県議会議長「小浜・京都ルート以外なら地元負担する気ない」

停滞するルート問題。この状況をどう打破していくのか。
   
福井県議会の宮本俊議長は、8月に行われた近畿2府7県議長会で「小浜・京都ルート以外なら福井県は1円も負担しない」と発言。その真意を尋ねると「小浜・京都ルート以外のルートに決まっても着工5条件の中で地元負担というのは確実にあるが、我々はそれを負担する気は全くない」とした。
    
さらに宮本議長は、今後やるべき3つのことを挙げた。 
1つ目は、与党PTや北陸新幹線整備委員会の早期開催。
2つ目は、「小浜・京都ルート」のメリットを県民にPRすること。
3つ目は、「小浜・京都ルート」実現に向けた全県一区の新たな運動組織の設立。
   
福井県議会・宮本俊議長:
「県民すべての思いとして北陸新幹線を要望しているということをきちんと政府に分かってもらえるような動きが今後は必要。できることは何でもするべき」

福井県議会の宮本俊議長
福井県議会の宮本俊議長

国交省は2026年度予算の概算要求で、敦賀-新大阪間の建設費については金額を示さない「事項要求」とする方針で、小浜・京都ルートの事業推進調査を含む整備新幹線の建設推進・高度化事業として、2024年度と同額の19億2300万円を計上した。
 
北陸新幹線敦賀-新大阪間の行方どうなっていくのか、2026年度の認可・着工に向け「小浜・京都ルート」の正念場が続く。

敦賀以西は事項要求へ
敦賀以西は事項要求へ

極めて厳しい2026年度中の認可・着工…高い3つのハードル

福井テレビの豊岡猛解説委員長は、概算要求で2年連続の事項要求となったことで、福井県などが求める“2026年度中の認可・着工”は極めて厳しい状況だと話す。その背景には、3つの高いハードルがある。

今年度中の認可・着工は望めず
今年度中の認可・着工は望めず

4年連続の調査費どまり…巻き返しには大きな政治判断が必要

ハードルの1つ目は、予算だ。2026年度の整備新幹線に関する概算要求は、来年度も国費804億円とこれまでと同額が計上されたが、その多くは北海道新幹線に充てられる見通しで、北陸新幹線は4年連続の調査費止まりだった。国の概算要求がトータル120兆円と過去最大に膨らみ精査が必要な中、ここから巻き返すには、かなり大きな政治判断が必要となる。

4年連続の調査費止まり
4年連続の調査費止まり

2つ目は、ルート問題。「事項要求」から本予算に整備費を計上するには、年内に小浜・京都ルートの詳細なルートや京都駅の位置を決める必要があるが、その前に国土交通省によるルートの再検証が行われる。再検証結果は与党プロジェクトチームが会合を開いて確認するが、その時期については、自民党が総裁選が行われた後、新たな政権の枠組みが決まった後に、という声も出ている。ただ、仮に開かれたとしても年末までに検証結果を確認し、ルートを決定する時間的な余裕はないとの見方も出ている。

いまだルート決定に至らず
いまだルート決定に至らず

3つ目は、政権の枠組み。自民党と公明党が少数与党となったことで、どの野党と連立を組むのかが焦点となっている。専門家の間には、日本維新の会が最も政権に近いとの指摘もあるが、維新の会の議員の中には米原ルートを強く推す声もあるため、仮に維新と組むようなことがあれば、議論のこう着状態が続きルートが決まらない事態も想定される。

政権の枠組み次第ではこう着状態が長引くか
政権の枠組み次第ではこう着状態が長引くか

2026年度の認可着工は厳しいという認識を共有した上で活動を強化し、年末までに小浜・京都ルートの詳細を決定する、これに全力を挙げるしかない状況だ。

福井テレビ
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