TSKと山陰中央新報の共同企画「カケルサンイン」。
同じテーマをテレビ・新聞、それぞれの視点で掘り下げ、核心に迫ります。
今回の担当は気象予報士の山根さんです。
山根収気象予報士:
島根県で566、鳥取で501…これは2025年の8月24日までの時点で熱中症で搬送された人の数です。記録的な猛暑だった2024年の同じ時期と比べて、ほぼ同じかそれを上回っています。
「猛暑日」の日数が、2023年から2025年にかけて松江や鳥取で過去最多となるなど、記録的な暑さに見舞われています。こうした中、私たちは熱中症という災害と新たに向き合う必要に迫られています。
松江市の島根大学附属義務教育学校。
体育館では後期課程、中学生のバスケットボール部の練習です。
夏休み期間中、少しでも涼しい時間帯にと開始時間を例年より早め、午前8時すぎから練習が始まりましたが、外はすでに30℃を超える暑さ。窓を開け、冷風装置を稼働させますが、数分もたたないうちに生徒たちは汗だくです。
約1時間後。練習は一時中断、生徒たちが向かったのは、体育館近くの教室。冷房の効いた室内でクールダウンします。この学校では2023年から練習中、約1時間ごとに15分間、クールダウンすることにしています。
生徒:
「氷のうで押さえているところは血流のあるところで、氷のうをあてることで熱中症予防につながる。」
「涼しい部屋で休むことで体力も回復できるし、そのあとの部活でも倒れずいいいプレーができると思う。」
島根大学附属義務教育学校 藤田壮志教諭:
熱中症に関わる危険性について、年々その意識は強くなってきていると思いますので、安心安全に活動できるというところを一番に考えてやっている。
部活動の現場でも厳重な「熱中症対策」。背景にあるのが、近年の記録的な猛暑です。
鳥取環境大学 重田祥範准教授:
2018年の夏に非常に気温が高かった。気象庁がこの暑さが「災害級」と言いました。
暑さを「災害」と言ったことが非常にインパクトが大きかった。
地球温暖化の影響や熱中症リスクについて研究している、鳥取環境大学の重田祥範准教授。近年の気温上昇のペースに危機感を抱いています。
鳥取環境大学 重田准教授:
今まで35℃というと非常に暑いなと身構えたんですけれども、実際のところもう38℃くらいが頻発していますので、山陰でも40℃という値が出てもおかしくないというような気がしています。
鳥取市では2024年8月、最高気温39.4℃を記録。山陰両県でのこれまでの最高気温を更新。さらに2025年の「猛暑日」の日数が、松江で23日(27日時点)と観測史上最多を更新。33日の鳥取、27日の米子でも史上最多をさらに上回る可能性が高くなっています。
今や「災害級」といわれる猛暑、熱中症による搬送者も増加傾向です。
24日の時点で島根・鳥取両県では、ともに500人を超え、島根では去年の同じ時期を上回り、鳥取もそれに迫る勢いで、9月にかけても厳しい残暑が予想される中、さらに増えるのは確実です。
こちらは松江市消防本部。
連日、熱中症患者の救急搬送にあたっています救急救命士の三浦さんは、重症化を防ぐためにも体調の変化に早く気づくことが大切だと話します。
松江市消防本部 三浦雄大救急救命士:
ふだんと比べて、様子がおかしい状態を素早く察知することが必要。
顔色とか体のだるそうな状態とか、ちょっとおかしいぞというところがあれば、大丈夫かという風に声かけをしてもらうことが必要かなと思ってます。
また、めまいや頭痛など自覚できる症状もあり、気づいたら体を冷やすなど早めの対応が命を守ることにつながります。
気象庁の3か月予報によると、気温が高い状態は10月まで続く見込みです。
鳥取環境大学の重田准教授は、長期化する「夏」に対処していくには、スポーツをはじめ屋外の活動を朝や夕方以降に限定するなど1日の行動パターンやライフスタイルを変えていく必要も出てくると指摘します。
鳥取環境大学 重田准教授:
GWを過ぎたかくらいから残暑も厳しい9月くらいまで、明らかに夏がもう倍くらいに感じている。約4か月…年間3分の1の期間は熱中症に注意しなければいけない。
今年の「異例の暑さ」が異例ではなく、当たり前に…。
熱中症への対策など暑さへの対処法を変えなければならない時代が、すぐそこに迫っています。