カーボンニュートラルの実現に向け、コンクリート製造の脱炭素化が急務となる中、宮崎県延岡市で画期的な実証実験が始まった。廃線となった旧高千穂鉄道のトンネルを活用し、コンクリート製造時に発生する産業廃棄物でCO2を吸収するという試みだ。製造過程で排出されるCO2を削減できるだけでなく、廃棄物の再利用も期待できるこの取り組みは、循環型社会の実現に貢献する可能性を秘めている。

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廃線トンネルでCO2吸収実験

この実験は、延岡市と福岡県のコンクリート製品製造会社ヤマウなどが、宮崎大学工学教育研究部 李春鶴(リ チュンフ)准教授の助言を受けて実施している。

コンクリート製品の製造過程では、大量のCO2が排出される上、「コンクリートスラッジ」と呼ばれる産業廃棄物が発生する。

李准教授によると、このコンクリートスラッジに水をかけて化学反応を促進させると、大気中のCO2を吸収することが分かっている。

2月に行われた実験では、コンクリートスラッジ1トンあたり100キログラムのCO2吸収が確認された。

旧高千穂鉄道のトンネルを活用

今回の実証実験では、温度と湿度が安定している旧高千穂鉄道の小峰トンネルを活用している。コンクリートスラッジの粒の大きさなど、様々な条件を変えてデータを取得し、CO2吸収効率の向上を目指している。

李准教授は、「コンクリート製造におけるCO2排出量を画期的に減らすことにつながる」と期待を寄せている。

 目指すは「循環型コンクリート製品」

さらに、CO2を吸収したコンクリートスラッジは、再生炭酸カルシウムとなる。これはコンクリート製品の原材料として活用できるという。

ヤマウなどは将来的に「循環型のコンクリート製品」の製造を目指している。廃棄物の削減とCO2排出量削減を同時に実現する、持続可能な社会の実現に向けた取り組みとして注目されている。

(テレビ宮崎)

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