8月21日から長野県軽井沢町で夏の静養に入られた上皇ご夫妻。軽井沢は、お二人が出会われた場所であり、ご家族の夏の思い出がたくさん詰まった場所でもある。今回は13年ぶりに軽井沢を訪問された上皇ご夫妻のご様子を取材した平成15(2003)年9月28日放送「皇室ご一家」(第1242回 天皇・皇后両陛下 思い出の地へ)を振り返る。
なお、本記事は当時のナレーションをそのまま記載。上皇ご夫妻はそれぞれ「天皇陛下」「皇后さま」。現在の天皇皇后両陛下は「皇太子ご夫妻」と記載する。
天皇・皇后両陛下 軽井沢へ
長野県の東部・浅間山のふもとに広がる避暑地・軽井沢。ここは、天皇陛下と皇后さまが、昭和32年8月に初めてお会いになった所であり、その後も、お子様方とご一緒に毎年の様に夏を過ごされてきた思い出の地です。

8月26日、両陛下は13年ぶりに軽井沢を訪問されました。駅前ではこの日を待ちわびた多くの町民から大歓迎を受けられました。

この日、両陛下は軽井沢町植物園におでかけになりました。

園内には浅間山ろくの植物など1600種類が植えられています。その中には、元々は軽井沢に自生していたものを両陛下が東宮御所で増やし、昭和57年に町に贈られたアサマキスゲもあります。

ノーネクタイの陛下と白い上着姿の皇后さま。のんびりと園内を散策されました。

両陛下は、今年90歳の佐藤邦雄園長の案内で、オミナエシやオオバコ、さらにオニグルミなどの植物を楽しそうにご覧になっていました。
南ヶ原開拓地へ
翌27日は、小諸市の南ヶ原開拓地をお訪ねになりました。
この開拓地は、戦後間もない昭和22年に、国が一戸当たり2.5ヘクタールを払い下げた所です。この時27家族が入植し、初めは農作物を栽培、その後は酪農もはじめました。

両陛下は昭和58年にもここを訪れており、今回が20年ぶり二度目です。集会所では入植者やその家族ら40人と親しくお話しになりました。

陛下は「元々はとぢらから開拓地に入られたのですか?」と尋ね、「ずいぶん灯りのない生活が長かったんでしょう?」などと、当時の生活について質問されていました。
この後、入植者の一人、湯本正夫さんの農場を見て回られました。

湯本さんは、高原キャベツやとうもろこしなどを栽培しています。

陛下は「今年の天候で作物はどうですか」などと盛んに冷夏の影響を心配されていました。
「草津夏期国際音楽アカデミーアンドフェスティバル」へ
13年ぶりの軽井沢での夏を過ごされた両陛下は、30日、群馬県草地町で開かれた「草津夏期国際音楽アカデミーアンドフェスティバル」のクロージングコンサートを鑑賞されました。

昭和55年から行われているこのイベントは、世界の著名な音楽家を招いてコンサートなどを行うもので、両陛下は皇太子時代にも二度出席されています。

秋の気配漂う高原のホールで、バッハやモーツァルトの調べに耳を傾けられた両陛下。翌31日、軽井沢駅から帰京されました。
皇太子ご夫妻 茨城県つくば市をご訪問
皇太子ご夫妻は、8月20日と21日の両日、「第16回アジア知的障害会議」の開会式ご出席の為、茨城県つくば市を訪問されました。
開会式ご出席に先立って、ご夫妻は市内の知的障害者更生施設「ラ・フィーネつくば根」をお訪ねになりました。

ここでは18歳以上の知的障害者が、自立に向けてガーデニングなどの作業に取り組んでいます。

生け花クラブの活動をご覧になったご夫妻は、続いてガラスの工芸作業をしている食堂へ。

ご夫妻はガラスカットをしている人に「作業は楽しいですか」とやさしく話しかけられました。

またスズランの絵柄に色塗りしている人には、「きれいな色ですね」と声をかけていらっしゃいました。
第16回アジア知的障害会議ウェルカムレセプションへ
この夜、つくば市内のホテルで催された第16回アジア知的障害会議のウェルカムレセプションに出席されました。

この障害会議は2年ごとに開催され、アジア各国の専門家による研究発表と討論が行われます。

ご夫妻は各国の参加者らと和やかに歓談されました。
第16回アジア知的障害会議開会式へ
翌21日、つくば市のつくば国際会議場で開会式が行われました。

この会議には、27の国と地域からおよそ1000人が出席。「主体性の確立と完全参加」をテーマに、5日間にわたって活発な議論がくり広げられました。

《皇太子さま おことば》
私たちも、毎年秋に開かれる障害者スポーツ大会、今月初めに開かれたアグーナリー大会の障害者によるスカウト活動、全国各地の福祉施設の訪問など、いろいろな場で障害のある人々と一緒に得た思い出や感動が、今も数多く心に残っています。
今回のアジア知的障害会議において、知的障害のある人々とその家族を中心にして、医学、教育、心理学、福祉、労働などの専門家が共に集い、知恵を出し合い、その成果を実践につなげていくことを通じて、知的障害のある人々の主体性の確立と社会への完全な参加が一層進んでいくことを願い、私のあいさつといたします。

続いて、土浦市の知的障害更生施設「尚恵学園」で暮らす人たちによるハンドベルの演奏です。

お帰りの際、ご夫妻は「ずいぶん練習なさったのですね。上手にできましたね」と労いの言葉をかけていらっしゃいました。
(「皇室ご一家」第1242回 平成15年9月28日放送)