創部1年目イワキテックが快進撃!
瀬戸内の離島、愛媛県上島町の岩城島に誕生した社会人野球のクラブチーム、イワキテックが「社会人野球の甲子園」とも呼ばれる、都市対抗野球の四国地区予選に挑戦。
創部わずか1年目の若獅子たちが、旋風を巻き起こした。

島の活性化を目指し創部された野球部
上島町岩城島に本社を置く造船関連の製造会社「イワキテック」。
岩城島の本社工場では従業員約300人のうち4割が外国人だ。若手の人材確保や島の人口減少を食い止めようと去年、硬式野球部を創部した。全国から集まったのは、独立リーグ経験選手や甲子園出場選手など18人。
全員がイワキテックの社員として働きながら、仕事と野球を両立させる日々だ。

「凡事徹底」で臨む都市対抗野球
イワキテック 小野耀平監督:
「おつかれ!とりあえずちゃんと練習できるのきょうが最後。あしたはほぼ移動なんで。気合いれてこ!いい雰囲気で。」
この日はチームが最大の目標としている、「社会人野球の甲子園」ともいわれる都市対抗野球の地区予選直前の練習日。新しいチームの指揮をとる小野監督もまた、監督としては新人だ。
小野監督:
「課題でいったら細かいプレー。細かいプレーとディフェンス面、というところでやっぱり課題があるのでそこをちょっと・・・とはいえ、都市対抗は目の前なので今からうまくなれというのは無理なので、それをできるだけ、全員でカバーできるように伝えていきたい」

最大のライバルは松山フェニックス
そんなイワキテック最大のライバルは。
加藤祥太投手:
「松山フェニックスがやっぱり勝たないといけない相手だなと」
小野監督:
「松山フェニックスさんに勝たないと、やっぱり全国はないと思うので、一番頑張らないといけないなとは思ってます」
松山フェニックスは愛媛でのクラブチームの先輩格。今年春の初対戦では負けているだけに、再び負けるわけにはいかない。

いよいよ都市対抗野球・四国地区予選
都市対抗野球の四国地区予選が始まった。参加するのは四国4県から6チーム。総当たり戦による1次予選の上位4チームが、トーナメントで戦う2次予選に進む。
しかも、この1次予選は、全日本クラブ野球選手権の四国予選も兼ねていて、四国に3つあるクラブチームの中で1位になると、四国地区代表としてクラブ選手権の全国大会に出場できるのだ。

大きな声で張り詰めた空気を盛り上げる
「しゃーダッシュしていくよ!気分上げていこう!お祭り騒ぎよこれ」
キャッチャーでキャプテンの吉尾竜一選手が、大きな声で張り詰めた空気を盛り上げる。
吉尾竜一選手:
「きょう加藤先発やけど、あおぐとかちょっと氷あてるとか、ほんと30℃余裕でこえてくるので、一番暑いのでちょっとそこベンチワークでもりあげて、ほんまちょっとこれ総力戦になるので、補助もそうやけど準備もしっかり、いつだれがでてもいいように頼むわ。お願いします」

初戦はクラブチーム徳島野球倶楽部
初戦は同じクラブチームの徳島野球倶楽部。
イワキテックの先発はエースの加藤選手だ。
試合が動いたのは4回表イワキテックの攻撃。
フォアボールとヒットで出たランナーを送って、1アウト2、3塁からスクイズで待望の先制点をあげた。
イワキテックはその後も得点を重ね、9回にはランナーを置いて9番坂本がライトへのタイムリーヒット。
この回3点を追加し6対0とリードした。
9回裏、徳島に2点を返されるものの、頼れるエース加藤が後続をおさえ、初戦を勝利でかざった。

予選2連勝で迎える相手は松山フェニックス
小野監督:
「初戦獲れるのは、めちゃくちゃいい。めちゃくちゃいい結果。とりあえずこっから波乗っていこう。とはいえちょこちょこミスあるからな。」
前田恵史マネージャー:
「次の松山フェニックス戦を勝てればクラブの全国が決まるので、まだまだ気を緩めないし」
都市対抗野球四国地区の1次予選2連勝で迎える次なる相手は、松山フェニックス。
最大のライバルに勝てば、チームのもう一つの目標、「全日本クラブ野球選手権」への切符を手にすることができるのだ。

大事な一戦を前に選手に”喝”
小野監督:
「中途半端なプレーして盛り上がんな。いいか?このタイミングで。いいと思う?盛り上がるのはええけど、ちゃんとやって盛り上がろうぜ。楽しむのはいいよ。でもちゃんとやって楽しめ」
初めてのメンバーで目指す全国の舞台。新人監督もまた悩んでいた。
小野監督:
「しまってる風には見えなくて。いい雰囲気でやるというのができてなかったんで一喝したんですけど。それは選手だけのせいじゃなくて、ぼくのせいなんですけどトータルでいったら。ぼくが監督できてないのがだめなんですけど。ダメっすね。」

選手たちも互いに思いを伝えあう
監督の言葉を受けて、選手たちも互いに思いを伝え合う。
石川智規選手:
「きょう自分は全然いつも通りのプレーできなかったんですけど、試合だったらプレッシャーかかる場面とかあると思うんで、プレー前に頭整理して、 そういうところ意識していきましょう」
久保伊織選手:
「普段のノックも含めですけど、自分も同じミスを何回もやってたらよくないと思うんで、ここから全員気持ち入れてもう一回やっていきましょう」
チーム全員:
「はい!」

イワキテックの負けられない一戦
都市対抗野球そして全日本クラブ野球選手権、全国大会出場をかけての負けられない一戦。イワキテックの先発はエース加藤。
試合開始早々、松山フェニックスに2点を先制される。さらに追加点を許し0対4と苦しい展開が続くイワキテック。
そんな中、5回裏。打球がピッチャー加藤の左ひざ下を直撃。エース降板でチームに重い空気が漂う。
しかし7回裏。センター中村要が渾身のダイビングキャッチ!このファインプレーで、嫌なムードを断ち切る。
すると直後の8回、イワキテックの打線が爆発。
9番坂本直弥!1番益田雄斗!2番松田光記の3連続ヒットでノーアウト満塁。続く3番中村の内野ゴロの間に1点を返す。
さらに4番石原悠志。5番吉尾竜一。打線の奮起で3-4で1点差に迫る。

8回に打線爆発!大逆転勝利なるか
あと1点。2アウト満塁のチャンスに打席に立ったのは8番片山怜唯。タイムリーヒットでランナー2人が返り、5対4と逆転に成功!
そして9回裏。マウンドは3人目の塩田竜大に託される。バッター2人を三振にとり、あとアウト1つ。
ここでフォアボール、そして暴投で2アウト2塁。
ここでマウンドは4人目の佐藤大青へ。
9回裏、1点差で2アウト1、3塁。長打が出ればサヨナラのピンチだ。
ここで打者をピッチャーゴロにさばき試合終了。
イワキテックは1点差で松山フェニックスを敗り、念願の「全日本クラブ野球選手権」への出場と都市対抗野球四国地区大会の2次予選への出場を決めた。

全員野球でつかんだクラブ選手権の切符
吉尾選手:
「ナイスキャッチャー!もうしんどかった。よかったっす。(あの打席)めちゃくちゃ集中してました。本当にあの8回の攻撃全員で、絶対にとれると思って束になっていけたのがよかったと思います。」
打球を足に受け、途中降板した先発で登板した加藤選手は、悔しさに涙が止まらない。
久保選手:
「何回も助けられてるから」
小野監督:
「前回はお前が(戦った?けど今回は)野手が助けた1試合やった」
久保:
「いいチームになったきょうで」
小野監督:
「いうたやんかピッチャーにおんぶにだっこじゃあかんぞって、次は助けてってとおりになったな」

イワキテックは全日本クラブ選手権に挑む
イワキテックはこのあと都市対抗の2次予選決勝まで進み、JR四国に敗れたが、強豪相手に大健闘だった。
出場を決めた「全日本クラブ野球選手権」の全国大会は、9月に坊ちゃんスタジアムで開催される。
その1球、1打を手繰り寄せて束になる。
創部1年目のイワキテックの歩みは着実に全国へと向かっている。
