物価高騰が続く中、酪農家も飼料価格高騰などで厳しい経営を強いられている。この10年で県内の酪農家は292戸から200戸に減少している。そんな中、都城市の酪農家・渡辺信也さん(49)は、2人の息子に酪農を継いでもらうため、奮闘を続けている。

 約90頭を飼育、年間500トンの牛乳を出荷

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渡辺さんは26年前に就農し、家族経営で約90頭を飼育、年間約500トンの牛乳を出荷している。「牛乳は栄養面でも欠かせないものなので、是非飲んでほしい」と語る渡辺さんだが、経営は厳しい。

 夏の電気代は10万円超、飼料価格は2倍に

牛舎では、暑さで牛の食欲が落ちないよう扇風機をフル稼働させており、夏の電気代は月に10万円を超える。また、飼料価格は酪農を始めた頃と比べ約2倍に高騰している。自家栽培の飼料でコスト削減を試みるも、現在の出荷価格(1キロ約130円)では利益はほとんど残らない状況だ。「エサをたくさん食べる乳牛の飼育には畑仕事も機械も必要になる。自分の手取りが少ない状況では、いつまでも続けられない思いもある」と渡辺さんは胸の内を明かす。

 生乳出荷価格は引き上げも、消費減退を懸念

8月からは牛乳用の生乳の出荷価格が1キロあたり4円引き上げられた。しかし、渡辺さんは収入アップを期待する一方で、牛乳の消費量が減ることも懸念している。2022年から2年連続で出荷価格が10円上がったことで、牛乳の店頭価格も上昇し、全国的に需要が減少したからだ。「消費あっての生産。消費者が買えない価格になると売れないのは当たり前だ。消費者の負担が少ないよう、お互い理解できる妥協点があればと考えている」と渡辺さんは語る。

 酪農を継ぎたいと話す2人の息子が希望

厳しい現実の中で、渡辺さんの希望となっているのが、「酪農を継ぎたい」と話す2人の息子の存在だ。長男の聖那さんは宮崎県立農業大学校で酪農を学び、三男で中学1年生の瑠偉さんは「好きな動物といるのが楽しいです。お兄ちゃんと跡を継ぎたいです」と話している。「後継者がいれば投資を考えて、いなければやめ方を考える。息子2人が継ぎたいと言ってくれて、すごく嬉しい」と渡辺さんは目を細める。

 酪農家の数は約20年前の半数以下に

後継者不足などを理由に、都城市の酪農家の数は約20年前の半数以下の85戸に減少した。渡辺さんは「子供たちが安心して酪農を続けられる環境を残したい」と語り、「息子の代でどれだけ良い設備、仕事がやりやすい環境を作れるかを考えると、投資をして楽に仕事ができる、きつい農業でなく、楽しんでやれる仕事にしたい」と未来を描いている。

 消費者の理解と適正価格での供給が願い

消費者の理解を得ながら、コストに見合う価格で牛乳を食卓に届けられるようになることが、酪農を続ける生産者の願いだ。総務省の小売物価統計調査によると、宮崎市における牛乳1リットルあたりの平均価格は284円で、2021年と比較して50円以上値上がりしている。

また、総務省の家計調査によると、2022年の宮崎市内の家庭における牛乳の購入量は約56リットルで、全国52の主要都市中18位。農家を守るためにも「牛乳」を飲むことが大切になっている。

(テレビ宮崎)

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