記録的な猛暑から一転、九州を中心に短時間で集中的に雨が降り被害が出ています。福井県内でも、ここ数日はまとまった雨となりました。
渇水による影響が心配されていた農業やダムの貯水率にはどんな変化があったのか、取材しました。
◆農家にとっては“恵みの雨”に
吉田圭吾アナウンサー:
「猛暑が続く県内、ここ数日のまとまった雨を農家はどうとらえているのでしょうか」
取材したのは、坂井市坂井町の農事組合法人「ファーム五本」。約15ヘクタールでダイズを栽培しています。6月上旬に種をまき、この時期は花を付ける重要なタイミング。ファーム五本の北野雅彦さんは「今は、花が咲き始めていて、一番水を必要とする時期なので、ちょうど恵みの雨です」と話します。
記録的な暑さと少雨に見舞われた7月。坂井市春江の降水量は35.5ミリで、7月の観測史上最少となりました。
北野さんは今回の雨について「今は大事な時期だから(降らなかったら)影響したかもしれない。順調にいけばいい収量になる」と話しています。
◆ダム貯水の回復には“ばらつき”
ここ数日の雨は、農家にとっては“恵みの雨”となったようですが、県内各地のダムの貯水量の回復には、ばらつきが出ました。
▼福井県内の主なダムの貯水率(12日午後1時現在)
※<>内は9日午前9時との比較
龍ケ鼻ダム(坂井市)79.84%<19.97ポイント増>
浄土川ダム(勝山市)100.13%<0.13ポイント減>
九頭竜ダム(大野市)60.90%<8.20ポイント増>
桝谷ダム(南越前町)38.10%<0.40ポイント減>
広野ダム(南越前町)46.80%<15.50ポイント増>
河内川ダム(若狭町)56.10%<0.40ポイント減>
大津呂ダム(おおい町)21.70%<0.60ポイント増>
ここ数日の雨で大きく貯水量が回復したところもありますが、場所によって雨の量や雨がダムに流れ込む「集水域」が異なるため回復にはばらつきがあります。
中でも、南越前町にある桝谷ダムやおおい町の大津呂ダムは依然として水位が低いままで、ともに貯水率は平年(過去5年間の平均)の半分ほどとなっています。
◆桝谷ダムの水位に変化なし
ダムによって水の主な用途は異なりますが、農業や生活への影響が続いています。
南越前町の桝谷ダムは、日野川を通して越前市や鯖江市など5市町の農地へ水を供給しています。
少雨の影響で貯水率が40%を下回ったため、日野川用水土地改良区では8月5日から農業用水の使用を半分に制限しています。
今回、まとまった雨となりましたが、日野川用水土地改良区の杉本寛重理事長は「ダムの貯水率が上がるほどの期待ができる雨ではなかった」と話します。
桝谷ダム周辺の観測地点・今庄の12日午後3時までの72時間雨量は56ミリと、ダムの水位が上がるような変化はありませんでした。
ただ、杉本理事長によりますと、今回の雨で川の水位が増えたため、この先3日ほどは必要最小限の使用に抑えられるといいます。「何とか農家の協力の上で水量を保てている。9月以降は未定だが、天気とダムの貯水量をみて判断していきたい」
取水制限を開始して1週間。桝谷ダムの12日の貯水率は38.1%で、何とか1%程度の減少にとどめています。
◆大津呂ダム流域では節水要請が続く
一方、おおい町にある大津呂ダム、町内の約4割が上水道の水として利用しています。おおいの観測地点の72時間雨量は47ミリで、貯水率は21.7%とほぼ横ばいでした。
貯水率の減少を食い止めようと、おおい町は7月下旬から日中、水道へのダムからの取水を停止する代わりに、井戸からの取水量を通常より増やす対策を取っています。
これに伴い、町では住民や事業所に節水を呼びかけていますが、引き続き周知し、今後の天候にも注視しています。
おおい町の上下水道課・山口晶史主査は「思ったより貯水率が回復しないので、水道利用者には引き続き節水に協力してもらいたい。正直、井戸水だけで全ての量をまかなうのは難しい。少しでも雨が降ってほしく、雨を待っている状態」と話します。
まとまった雨が降らなければ、今まで以上に住民に節水への協力を求める可能性もあるということです。