一枚の写真から街を再発見する「兵動大樹の今昔さんぽ」。

今回の舞台は京都・東山区にある「六道珍皇寺」です。

ここでは毎年8月7日から10日にかけて「六道まいり」という行事が行われます。

この行事には平安時代から伝わる不思議な言い伝えが残されているのです。

兵動大樹さんが、1954年(昭和29年)に撮影された写真の謎を追いながら、「あの世とこの世をつなぐ」と言われる場所を探訪しました。

■お地蔵さんだけど“顔”がない?「まか不思議」な写真の謎を追う

兵動さんが今回手にしたのは、1954年(昭和29年)に京都市東山区で撮影された写真。

写真には複数の人が地蔵のようなものの前に集まっている様子が写っています。

この写真は「まか不思議なスポット」で撮影されたものなんだそうです。

【兵動大樹さん】「なんかすごい…。お地蔵さんだけど顔がないよね。石みたいな感じよね。お参りやろな。まか不思議…わかるんかな」

写真の場所を特定するため、兵動さんは東山区の清水寺方面に向かって歩き始めます。

■“現世”と“あの世”を結ぶ「六道さん」

聞き込みを始めた兵動さんですが、最初に出会ったのはフランスからの観光客。

身振り手振りで昔の写真について尋ねますが、残念ながら情報は得られません。

続いて地元の人に写真を見せると、興味深い返答が。

【地元の人】「六道さん。現世とあの世と結ぶような。そこはもうお盆の時は絶対に」

「六道まいり」と呼ばれているそうです。

【地元の人】「閻魔大王のなんかをお祀りしてはる」

【兵動大樹さん】「それは確かにまか不思議やな」

この「六道さん」という言葉をヒントに、兵動さんは六道坂の方向へと向かいます。

■「バラライカ」で不思議体験 東山は“あの世”と“この世”の境目

路地を進んでいくと、「不思議茶屋バラライカ」という看板を発見。店内に入ると、畠中英輔さん(75)が迎えてくれました。

【畠中さん】「残念ながらいまは飲食店じゃないんです」

バラライカは2010年から5年ほど喫茶店として経営されていましたが、畠中さんが体調を崩し、閉店。

畠中さんがロシア・モスクワの大学で研究していた経験を生かして、以降は出版社を立ち上げてロシアに関する本などを出版しているそうです。

店名の「バラライカ」はロシアの弦楽器のこと。
畠中さんが実際にバラライカの演奏を披露してくれました。

「不思議」という店名の由来は、畠中さんの趣味であるマジックから来ているとのこと。トランプを使った見事なマジックも披露してくれました。

なんとも不思議な体験をしたところで、写真について聞いてみると…

【畠中さん】「この辺みんなそうですよ。東山ってだいたい平安時代の初期は死体を捨てた場所だから。だからこの辺のこと『六道の辻』っていうでしょ?ここはあの世とこの世の境目なんです」

■300年以上続く「もやし」店と500年の歴史を持つ「幽霊子育飴」

さらに歩いていくと、創業300年以上という「菱六もやし」というお店に出会います。店主の助野彰彦さんによると、「もやし」は野菜ではなく、味噌や醤油、日本酒などの発酵食品に不可欠な「種麹」のことなんだそう。

いまも全国では10軒ほど“もやし”店があるそうです。

助野さんに写真を見てもらうと、「六道珍皇寺」ではないかという情報を得られました。

そして、次に訪れたのは「みなとや幽霊子育飴本舗」。

なんと創業500年で、店主の段塚きみ子さんは20代目なんだそうです。

麦芽糖の飴には、“幽霊”が買いに来たという不思議なエピソードがあります。

【段塚さん】「お腹が大きなまま亡くなったんですよ。それでお墓に葬ってしまったんです。そしたらお墓の中で亡くなったお母さんから、赤ちゃんだけが頑張って生まれてきたんです。(亡くなった)お母さんはどうしても子供を育てたいと思って、毎晩幽霊になって飴を買いに来て、お墓に持ち帰っておっぱいの代わりに与えてた」

悲しくも美しい「母の愛の話」を教えてもらったところで、段塚さんにも写真を見てもらうと…

やはり「六道珍皇寺」。

【段塚さん】「小野篁(おののたかむら)という人が、あの世へ行ったという井戸があるんですよ。何年か前に帰ってきた井戸も見つかったんです」

■「六道珍皇寺」で1000年以上続く「六道まいり」

ついに兵動さんは「六道珍皇寺」にたどり着きます。

住職の坂井田興道さん(78)に話を聞くと、写真の謎が明らかになりました。

【坂井田住職】「『精霊迎え・六道まいり』って言うんですけど。本堂の水塔婆(みずとうば)で故人の戒名を書いてもらって、鐘をつくんです。夏にご先祖の御霊が帰ってみられる」

「六道まいり」は毎年8月7日から10日まで行われる行事で、精霊を迎えるためのものです。

京都では「精霊迎え」と呼ばれる行事の中で、先祖の魂を迎えるために、この六道珍皇寺で「六道まいり」を行うのです。その歴史は1000年以上になるといいます。

写真は「六道まいり」の風景だということが分かりました。

■「小野篁」の伝説 ”冥界”へ行き来する井戸はいまも残っていた

「六道珍皇寺」は東山の「鳥辺野」という平安時代の葬送地の入り口にあり、「六道の辻」というあの世とこの世の分岐点に位置しています。

ここには平安時代の文人官僚・小野篁(おののたかむら)と閻魔大王の木像が安置されています。

小野篁は、閻魔大王とともに罪人の裁きをしていたと言われていて、「冥土に行く力を持っていた」と住職は説明します。

冥界へ通じる井戸「冥土通いの井戸」は、今も残されているのです。

【坂井田住職】「この井戸にやってきて、冥界にすっと消えて閻魔さんのそばへ行って」

さらに最近、「黄泉がえりの井戸」も見つかったといいます。冥界に行くための井戸と、冥界から戻ってくるための井戸、両方があるというのです。

■「六道まいり」で先祖を偲ぶ

写真が撮影された場所は、六道珍皇寺の大石地蔵尊がある石仏群だとわかりました。

「あの世とこの世の境目」とされる東山。その不思議な言い伝えと風習。

毎年お盆になると、先祖を想う人々の思いが、この場所に集まります。

【兵動大樹さん】「いい風習も続いております。勉強になりました。井戸もすごかったです。ありがとうございました」

みなさんもご先祖さまを想う時間を持ってみてはいかがでしょうか。

(関西テレビ「newsランナー」2025年8月1日放送)

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