少子高齢化によって、1人暮らしの高齢者も増えているんですが、そんな高齢者たちを救う!かもしれない、「若者との同居」という画期的なサービスを、関西テレビ秦令欧奈アナウンサーが調査しました。

■孫じゃない?他人が一つ屋根の下で共同生活

高齢化が進む日本。

去年、誰にも看取られず自宅で亡くなった1人暮らしの高齢者は、およそ5万8000人にのぼりました。

2050年には65歳以上のおよそ30%が1人暮らしになるという見込みです。

街の人にインタビューしてみると、多くの高齢者は、1人暮らしによる「孤独」を心配しているようです。

そんな中!

【秦令欧奈アナウンサー】「高齢者の1人暮らし問題を解決する、ある取り組みが行われているということで、奈良県大和郡山市にやってきました。のどかな住宅地です」

こちらは、79歳の東田和弘さんのお宅なのですが…。

(Q.おひとりじゃないんですか?)
【東田和弘さん(79)】「今は2人暮らし」

(Q.お孫さん?)
【東田和弘さん(79)】「孫だったらいいねんけど、他人さま!お預かりの方。大事な学生さん。老親等空き部屋のある方が、学生さんに部屋をリースするシステム。今、学生さんに4月から入っていただいている」

(Q.ホームステイみたいなこと?)
【東田和弘さん(79)】「はい、ホームステイ」

元々一人暮らしだった東田さんと、奈良高専に通う4年生、小原浩太さん(18)。2人は、この4月から東田さんの家で同居を開始しました。

【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「元々、奈良高専の寮に住んでいた。3年生で(満員のため)出される。1人暮らしするか、実家(滋賀)から電車で通うかというときに、寮の先生から紹介された。興味があったので行ってみたら、東出さんに出会えた」

■京都やパリでも行われる“ソリデール”の取り組み 家賃は2万円と補助金も

実は 2人が住む奈良県大和郡山市では、所有者世帯と学生の同居をマッチングする「大和郡山ソリデール」という取り組みが行われているんです。

この取り組みは、実はパリや京都などでも行われていて、パリのソリデールは、熱波の影響で1万5000人の高齢者が亡くなったことをきっかけにスタート。高齢者の孤独死を減らそうと、すでに4500組以上の同居実績があるそうです。

ちなみに、小原さんが東田さんに毎月支払っている家賃は…?

【東田和弘さん(79)】「2万円です。それと大和郡山市から補助が月5000円。それで1年たつと6万円をいただけるようになってる」

学生さんは2万円の家賃で暮らす場所を手に入れ、家主はそれに加えて補助金ももらえる、『ウィンウィン』のシステムなんです。

■空き部屋を有効活用 トイレ・風呂は共用、ご飯は別々

実際に、どのように暮らしているのでしょうか。

【秦アナ】「家族暮らしのような、すごい広い…」
【東田和弘さん(79)】「トイレとお風呂が共用。冷蔵庫や氷は自由に使ってもらっていい」
【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「ご飯だけは寮で出してもらえる。東田さんの家で何か自分が作るとかはやってない」

実は、家賃とは別に毎月4万円、寮に食費を支払っている小原さん。朝昼晩のご飯は、家から自転車で10分の寮で食べるので、東田さんに負担のないシステムになっています。

【秦アナ】「2人で遊んだりすることはあるんですか?」
【東田和弘さん(79)】「ラーメン2回行ったぐらい」

1階は、東田さんの部屋と共用のリビング、水まわりが。

【東田和弘さん(79)】「下は私が使って、空いてる2階を学生さんにお貸ししている」

(Q.どなたと住んでいた?)
【東田和弘さん(79)】「子ども2人と、嫁と。長女は結婚した、長男は県外に出てます」

(Q.なんでこの取り組みを?)
【東田和弘さん(79)】「空き家がもったいないなと思ってね。無駄になるかなと思ってた。市の広報誌でソリデールの取り組みを見て応募」

■家探しは賃貸物件を探すのと同じ「リストを見て広さにひかれた」

東田さんは、かつての子ども部屋だった2階を、今は小原さんに貸しています。

【秦アナ】「お邪魔します。え?めちゃくちゃ広くないですか?僕んちより広い」
【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「12畳ぐらい。部屋が大きいのも選んだポイント」

(Q.他の選択肢はあった?)
【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「もちろん選択肢としてはあったんですけど、貸し家候補のリストを見ることができて、場所や間取りをみて、12畳っていう大きさにひかれて」

3月末まで、寮暮らしだった小原さん。この家に来て、倍以上の広さの部屋を手に入れました。そのため、趣味のギターも、自由に弾けるように。

【秦アナ】「女の子を連れてきたり…」
【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「ないです」

【秦アナ】「仮に連れてくるってなったら?」
【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「東田さんに伝えたら『いいよ』と。女の子に限らず、友達は全然呼んでいい」


■知らない人との共同生活に不安は? 今ではLINE、インスタで交流

住み始めて4カ月。すっかり東田さんの家に馴染んできた小原さんですが…。

【秦アナ】「不安や抵抗はなかった?」
【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「全く知らない方だったので、最初は。(同居前に)2~3回は会って話せた。僕の直感ではあるんですけど、いい人やなっていうのがあったんで。僕としては非常に良かったなと思ってます」

(Q.両親の反対は?)
【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「『ちょっと心配やったな』と、後から聞きました」

(Q.問題は起こってない?)
【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「寮の癖で、自分の電気代とかを把握してなくて、つけっぱなしで学校へ行ってしまうとか、ちゃんと注意してもらって、受け止めて、改善する」

(Q.親みたいな関係?)
【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「そういう感じです」

最近では…

【奈良高専4年生 小原浩太さん(18)】「LINEでも話させてもらってる」
【東田和弘さん(79)】「インスタでフォローしあってます。(使い方を)時々教えてもらいます」

■「寮“不足”と若者の愛着を育てる思惑が見事にマッチ」と市職員

市の取り組みから始まった不思議な縁ですが、大和郡山市はなぜこのような事業を行っているのでしょうか。

【大和郡山市都市建設部まちづくり戦略課係長 小谷佳代さん】「きっかけは、奈良高専の寮が不足していることと、大和郡山市の課題として、若者の愛着を育んでいきたい。うまいことマッチして取り組みがスタート」

元々は、若者のための制度でしたが、高齢者の1人暮らし問題解決の糸口にもなっているんです。

(Q.実績は何件ぐらい?)
【大和郡山市都市建設部まちづくり戦略課係長 小谷佳代さん】「今、同居されているのは3件。なかなかハードルが高い事業だと思っていたので、知らない方と一緒に住むって言うのは、お互いにとってもなかなか難しいんやろうな。性格もすごく会っている方々が3件出てきたのは、本当にありがたい」

(Q.家賃の2万円はどうやって決まった?)
【東田和弘さん(79)】「最初から申込書に書いてました。僕は額にはこだわらなかったです」

【大和郡山市都市建設部まちづくり戦略課係長 小谷佳代さん】「お安い家賃で提供していただくのも、ソリデールを選んでもらうメリット。一般的に流通している賃貸よりはお安く2万円」

■学生の親はどう感じている? 「とても親切にしていただいている」と信頼

他人である東田さんと暮らすことに、最初は不安もあったという小原さんの両親。

今はどう思っているのか、聞いてみることに。

【秦アナ】「この取り組みは親御さんからすると、心配になる面もあるんじゃないかな、と」
【小原さんの母・和美さん】「とても親切にしていただいている。それぞれのスケジュールをしっかり話して、干渉しすぎない。子どもが生活しやすい」

61歳差の2人は、生活リズムもバラバラ。お互いに干渉しすぎないことが、暮らしやすさにもつながっているといいます。

【小原さんの母・和美さん】「(東田さんは)私の父親とキャラが似ている。とてもフレンドリーで人懐っこいおじさん。子どもからしても、おじいちゃんと重なる接しやすさはあるんじゃないか。父親の面影を感じる」

【秦アナ】「実は、東田さんも一緒に聞いてるんです」

【小原さんの母・和美さん】「お世話になってます」
【東田和弘さん(79)】「優秀なお子さんをお預かりして、けがのないように頑張ってます」
【小原さんの母・和美さん】「ありがとうございます。私の胸の内を話してしまいました」

【東田和弘さん(79)】「いっぱい褒めてもらったね。冷や汗が出てきたよ」

(関西テレビ「newsランナー」2025年8月8日放送)

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