宮城にゆかりのある映像制作者たちで作る「みやぎシネマクラドル」という団体が、設立10周年を記念し、8月9日から仙台でイベントを開催します。ドキュメンタリーを作る意味を市民とともに考えたいと意欲的に準備を進めています。

みやぎシネマクラドル代表 我妻和樹さん
「地元の作り手の活動を広く地元の人に知ってほしい。作品を通して世の中の事社会の事と出会って、新しい何かが開けていくきっかけになればと思っている」

「みやぎシネマクラドル」代表の我妻和樹さん。
白石市出身の我妻さんは震災前後の南三陸町を舞台にした長編ドキュメンタリー映画「波伝谷に生きる人々」などを制作したドキュメンタリー映画作家です。
宮城にゆかりのあるドキュメンタリーの作り手が、互いの存在を知ることで切磋琢磨し合う環境を作り、映像を通して市民とも対話・交流できるコミュニティーを作りたいと、2015年にこの団体を立ち上げました。

みやぎシネマクラドル 我妻和樹代表
「立ち上げた2015年当時は震災から4年たって、(被災地の)土地に根差して活動してきた人たちがつながっていった時期でもある。僕自身東日本大震災に関するドキュメンタリーを作っていたということもあって、作り手に声をかけて集まった」

メンバーの半分以上は、ドキュメンタリーの作り手です。

津波で児童と教職員84人が死亡または行方不明となった石巻市の大川小学校をめぐる作品「あなたの瞳に話せたら」を制作した佐藤そのみ監督。

末期がんの父を自宅で看取ったドキュメンタリー「あなたのおみとり」を制作した仙台市出身の村上浩康監督など、県内出身者が多く在籍しています。

みやぎシネマクラドル代表 我妻和樹さん
「みんな個性も違うし、思想・信条・価値観も違って当然だが、お互いリスペクトして交流しながら10年重ねてきたからこそ、みんなでまとまって発信できることがあるのではないかということで、今回この企画を開催することになった」

この日は、10周年記念のイベントに向け準備が行われていました。

「10周年という一つの節目だが、どんどん新しい方にも出会いたい。見る人も作る人も映像文化に触れて、自分たちの暮らしをより豊かにするような人が1人でも2人でも増えて、何人かがクラドルに同じ仲間になってくれたらいいかな」

仙台市出身の映像作家宍戸さんは、「みやぎシネマクラドル」の存在意義を次のように語りました。

宍戸大裕さん
「(制作で)迷った時に同じような立場で相談できる人がいる。心強くて、そういう場を持ちたいという気持ちをかなえられる場所だなと。もうひとつ良いのは作り手じゃない人にも意見をもらえるので貴重。」

「みやぎシネマクラドル」の活動の主軸は、せんだいメディアテークの事業の一つである「映像サロン」です。参加者の市民とともにメンバーの作品を鑑賞して感想を話し合ったり、制作途中の作品についても意見を出し合うなど、制作者と市民がともに作品を作り上げる場になっています。

この日は、宍戸監督のドキュメンタリー映画、「杳かなる」などの予告を上映し、参加者の市民と語りあいました。

参加者
「多分監督が音に対して敏感なものを持っていらっしゃるのではと」
宍戸大裕監督
「みなさん人工呼吸器を使っているが、吹き出すときの呼気がシューって出てくる。あれは生きている証だと思っていて、この人は今ここに生きている証明だと思っている」

筋肉や呼吸機能が徐々に失われていく難病ALS当事者の葛藤などを描いた作品で、作り手だけではなく、様々な立場の人が参加して、人の生き方、社会、表現のあり方をともに考えました。

参加者
「(こういう機会)大事なことかと思う、人数は少ないが、少ないなりに膝を突き合わせるような、話し合いの中で何かを考えたり作り上げる作業は、今の時代においては非常に稀有な状態。ぜひやり続けてほしい」

9日から2日間開催されるみやぎシネマクラドルの10周年イベントでは、7人の作り手たちによる10作品のドキュメンタリー映画が上映されます。そして、参加した市民と作品について語りあう場を設けるとともに、この時代にドキュメンタリーを作る意味について考えるシンポジウムも開催されるということです。

みやぎシネマクラドル 我妻和樹代表
「少しでも社会が何か変わるきっかけになりうるというのがドキュメンタリーの一つの役割だと思う。この時代にドキュメンタリーを作る意味や映像を通して思考と対話を深めるような場をこれから先も地元の多くの人と手を取り合って続けていけたら」

仙台放送
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