地域で育む子どもたちの挑戦
松山市の梅津寺に、夏休み限定で子どもたちが営むカフェがオープンした。
「KIDS CAFE」と名付けられたこの喫茶店は、高浜小学校・中学校に通う約40人の子どもたちが切り盛りする。
コーヒーを入れ、ワッフルを焼き、注文を取り、商品を運ぶ。
すべての作業を子どもたちが担当。
地域の大人たちに見守られながら、この夏の特別な挑戦が始まった。

メニューを配るのも注文を取るのも子ども
厨房に立つ子どもたち。
注文をとりに向かうのも子ども。
商品を運ぶのも、ぜーんぶ、子ども。
席に座った女性:
「がんばれー」
女性客:
「なんかちょっと感動」
地域の大人に見守られながら、子どもたちの夏休みのチャレンジを追った。

目指す店のイメージを話し合う
1学期の終業式の日。松山市の高浜公民館に、子どもたちが集まっている。一体何をしているのだろうか。
子ども:
「こども喫茶について話します。まずどんなカフェにしたいか紙に書いてください」
実は子どもたち、夏休み限定で喫茶店をオープンする。メンバーは高浜小学校、中学校に通う約40人。目指す店のイメージを話し合っていた。
子どもたち:
「こどもからお年寄りまでが気軽に来れるカフェ」
「お友達がいっぱい来てほしい店」
「カフェだから落ち着いた雰囲気」
「おっきい声でいらっしゃいませって言う」

子どもの遊ぶ場所を作りたかった
子どもたちの挑戦を支えるのは、加形静香さん。地元で7人の子どもを育てている。
加形静香さん:
「わたし自身が子育てをしていたとき、いまも現在進行形なんだけど、この地区で遊ぶ場所がなかったんですよ。じゃあ作ろうかって気軽に始めたのが、きっかけなんですけど。子どもたちがただ笑ってくれたらおもしろいよねってだけで。」
子どもたちの笑顔のために。
その思いに賛同した地元の人たちと一緒に、去年2月からこども食堂や放課後こども教室など「子どもの居場所」作りに取り組んでいる。
夏休み限定の喫茶店もそのひとつ。
地域から寄付された食材や、 こども食堂の売り上げをもとに立ち上げる。さあ、どんな居場所になるのか。

プロから直々にドリップコーヒーの淹れ方を教わった
オープン5日前。
加形さん:
「はい、これあなたたち覚えてますか?教えてもらった通りにどうぞ」
子どもたち:
「スタバの人に教えてもらいました」
実は、去年12月クリスマスに合わせ、人気のコーヒーチェーン店スターバックスが、加形さんたちの子ども食堂で「バリスタ体験」をプレゼント。この経験が今回の喫茶店につながった。
加形さん:
「こどもたちがね、やりたいということを、できないよという大人にはなりたくなくて」

社会の縮図をわかってほしい
加形さんたちの思いはもうひとつ。
加形さん:
「お店屋さんするのってただ接客するだけじゃない、いろんな役割があるので、それを自分たちが感じ取ってくれて、苦手なことってカバーしてくれる子が必ずいるので、協力しながらひとつ大人の仲間入りじゃないですけど、少しずつ社会の縮図というものをあの子たちがわかっていったらいいな」

お店を経営する感覚を学んで
店で出すワッフルも試作して、トッピングのアイデアをつのった。
参加した子どもや大人から出た意見は…
「アイスクリーム」「ジャム」「バナナ」
加形さん:
「だいぶ豪華になりますね。コーヒーとワッフルセットで300円です」
子ども:
「安っ!」
加形さん:
「安い、そう。ということは、バナナつけたりフルーツつけよったらどうなる?」
子ども:
「高くなる」
加形さん:
「そう、どんどん高くなります」
店を営む立場としてお金の感覚を学ぶのも大切な経験。

いよいよオープン!めっちゃ緊張
7月28日オープンの日。
子ども:
「初めてやるんで、めっちゃ緊張もしてるし、楽しみでもあります」
店から歩いて、3分ほどの公民館ではワッフルの仕込みも始まっていましたが…
参加者:
「あと10分もないですね。やばいです」
「今のところこれで15個、15人分くらいあるので、その間にこっちでどんどん焼かせて、走らせます」

お客さん第一号登場!
大人も子どもも準備に追われる中、お客さん第一号登場。
一人目の男性:
「一番に来ようかなと思って」
加形さん:
「いってきてオーダー」
子ども:
「メニューは?」
加形さん:
「メニュー表そこにある」
いざとなると子どもたちは緊張してなかなか接客に向かわない。
加形さん:
「なんで!」
子ども:
「だって初めてだから」

勇気を出して、いざ
注文をとりにいくその一歩がなかなか踏み出せない。
でも勇気を出して、いざ。
子ども:
「いらっしゃいませ、何にしますか?」
お客さん:
「カフェオレのアイスをください」
子ども:
「わかりました」
やった!言えた。
女性客:
「こんにちはー」「やっほーおつかれさん」
「あったかい紅茶がふたつとアイス」「わかった?」「わからんかったら電話して」

お客さんで一気に賑やかに
次々にやってくるお客さんで、店内は一気に賑やかになってきた。
女性客たち:
「チョコとホイップお願いしまーす」
「すごーいよそいきやねえ」
「なんかちょっと感動、こうやって大きくなっていくんやなって思って、なんか感動しちゃう、あはは」
オープンから1時間もたつと、子どもたちの顔つきに自信がのぞいてきた。
子どもたち:
「意外と、慣れてきました、意外と。」
「こんなに来ると思わなくてめっちゃ来てくれてうれしい」

この場所でカフェを経営していた女性も来店
お店にひとりの女性がやってきた。もともとここでカフェを営んでいた池田典美さん。
池田典美さん:
「去年主人が亡くなったので、そしたら加形さんがこどもの場所で貸してほしいっていうので、主人もこども食堂とかもやってみたいって言ってたので、人が集まるのが好きな人だったので、喜ぶなと思ってお受けしたんです。地元のこどもたちに来てもらって交流できているのがうれしいです」
一度は明かりを消した夫婦の思い出の場所が、子どもの居場所、地域の憩いの場として再び活躍している。

ひとつひとついい経験になればいいな
加形静香さん:
「やってみて失敗してこうしたほうがよかった、ああしたほうがよかったって、たぶんみんな経験するので、ひとつひとついい経験になればいいなって、みんな楽しそうなのが一番です」
1人目の男性客:
「一生懸命しててすごいがんばってるなと思いました」
中3女子客:
「地域やけんできるみたいな、ふんわりした雰囲気ですごいいいなって思いました」
子どもたちが営む夏休み限定の喫茶店は、子どもはもちろん、地域のみなさんにとって大切な居場所になっているようだ。
