■信濃町の自然と素材を”ギュッ”と詰めた驚きのジェラート
北信五岳の山々に囲まれた長野県信濃町。この自然豊かな地で、地元の野菜や果物をジェラートに変身させる挑戦が続いています。「チェントットジェラート」では、トマトやトウモロコシ、さらにはシイタケまで素材の可能性を最大限に引き出した個性豊かなフレーバーが、訪れる人を驚かせています。
■素材をまるごと味わう ぶっ刺さり系ジェラート
「うちはもう、素材丸出しの”ぶっ刺さり系”でいくので、他と同じことはやりません」と語るのは、オーナーの外谷社長。信濃町の食材をもっと多くの人に届けたいという想いから、2022年に「にのくらマルシェ」をオープンし、その隣でジェラートづくりをスタートさせました。
看板商品のひとつは、信濃町の特産品であるトウモロコシ。当初は茹でるなど様々な方法を試しましたが、「美味しさが逃げちゃって」と外谷由比さんは振り返ります。
試行錯誤の末、アルバイトスタッフに頼んだ「少し炒めすぎた」トウモロコシが、逆に旨みと香りをギュッと引き出す結果となりました。この発見から生まれたジェラートは、「トウモロコシの味が本当に濃くて」「焼きトウモロコシの味がして、濃厚」と、地元客からも絶賛される一品に。
「いいですよね、こうやっていろんな野菜のジェラートが食べられるって」「トマトとか、トウモロコシとか、あんまり他では味わえない感じがあって」と訪れる客は口々に感想を述べます。
地元の素材をそのまま食べているような感覚と、ジェラートならではの甘さが絶妙にマッチした味わいが人気の秘密です。
■素材に合わせて変化する その日だけのレシピ
このジェラートを手がけるのが、須坂市出身の静谷真紀子さん。結婚を機に信濃町に移住し、まったくの未経験からジェラート作りをスタートさせました。「未知の挑戦だったので難しかったし、想像もできなかった。どうやってやったらいいか全然分からなかった」と静谷さんは当時を振り返ります。
静谷さんのこだわりは、その日の素材に合わせてレシピを変えること。長野市内のイチゴ農園で「紅ほっぺ」を仕入れた日は、「イチゴがすごく甘いから、普段よりグラニュー糖のパーセンテージを下げて。その代わりに、糖度は保ちつつ甘さを抑えてくれるブドウ糖に少し助けてもらって」と、その日のイチゴの甘さと酸味に合わせて配合を調整していました。
「野菜や果物ってシーズンによって糖度が変わってくるんで、毎回同じレシピじゃなくて、その甘みに合わせたジェラートを作れたらいいな」と語る静谷さん。素材の個性を最大限に引き出し、ベストな状態でお客さんに届けるための工夫を考えています。
■意外性が生む新たな発見と感動
静谷さんの挑戦は続きます。店の隣にある「にのくらマルシェ」で見つけたのは、なんとシイタケ。「なんとか野菜やキノコをジェラートにしたい。シイタケもジェラートにしないとだめだろうなって」と意外な素材に挑戦します。
大きく肉厚のしいたけを電子レンジでじっくり乾燥させ、うまみを凝縮。その後、鍋で丁寧に戻して作ったジェラートは、しいたけの濃厚な旨みとクリーミーなミルクの絶妙な組み合わせが特徴の、他にはない味わいとなりました。
最新の挑戦は、信濃町特産のブルーベリー。農薬を使わず自然と共に育てたブルーベリーは、寒暖差の大きい地域ならではの驚くほどの甘さが特徴です。「ブルーベリーをダイレクトにジュースにする。ブルーベリーを食べているような」というコンセプトで、ブルーベリーを60〜70%も使った贅沢なソルベを開発。社内の試食会を経て、最もブルーベリーを使ったインパクトある「めっちゃブルーベリー」が店頭に並びました。
「あっと驚くような野菜がジェラートになったら、面白いと思います。まだジェラートにできていない野菜はたくさんあるので、信濃町の農家さんが作ってくれる範囲で、これからも挑戦していきたい」と静谷さん。素材の可能性を最大限に引き出す彼女の情熱は、信濃町の大地から生まれる新たな驚きとともに、私たちの味覚の常識を塗り替え続けています。
※本記事は、NBS「フォーカス信州」2025年7月25日放送回
「信州クラフトの味~つくる人と、味わう人と。~」をもとに構成しています。