「次の作品はこれまでやったことのないことを」高岡市の漆芸家・林曉さん、人間国宝に認定

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伝統的な漆芸技法「髹漆」の高度な技術で知られる高岡市の林曉さん(71)が、このたび国の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定されることになった。3Dコンピューター技術を伝統工芸に取り入れるなど、常に革新を追求してきた林さんの姿勢は、伝統を守りながらも新たな表現を模索する現代工芸の在り方を示している。

伝統と革新の融合で独自の作風を確立

「髹漆」は漆芸の中でも最も古い技法であり、素地の造形から下地、塗り、仕上げに至るまで多様な技術が求められる。この高度な技法の保持者として認定された林さんだが、その受け止め方は謙虚だ。

「手放しで喜ぶという感覚では全くない。責任も伴うので、そういう気持ちでいる」と語る林さん。一方で「私の大切な人たちに喜んでもらえたのは、喜ばしいことだと思う」と周囲の反応には感謝の意を示した。

林さんの作品制作における特徴は、伝統技法に現代技術を融合させた点にある。漆を塗る工程だけでなく、立体造形の設計にコンピューター技術「3D CAD」を取り入れ、独自の世界観を表現している。

制作過程の「下仕事」に見出す喜び

工房で取材に応じた林さんは、作品制作の過程について「組み上げていくところまですごくおもしろい」と語る。「こんな形も実際にCADの上で考えて、それを削りだしたものを貼り合わせて手で修正して、部品を作ってそれを組み上げるって感じ」と、3D技術と手作業を組み合わせた制作工程を説明した。

興味深いのは、林さんが「形を作っていく下仕事までが楽しい。ここからは決まった仕事になるので」と笑みを浮かべながら語った点だ。多くの人が完成品に注目する中、林さんは制作前半の造形過程に独自の喜びを見出している。

71歳の挑戦者、次なる革新へ

日本伝統工芸展会長賞など数々の受賞歴を持ち、富山大学名誉教授や金沢美術工芸大学の客員教授として後進の指導にも力を注ぐ林さん。しかし、その創作意欲は今なお衰えを知らない。

「次の作品のものはやったことのないことを必ず入れようというのは思っていて、製法や形にしてもそうで、それを続けていけたらいいと思う」と語る林さんの言葉からは、71歳になった今も新たな挑戦を続ける姿勢が伝わってくる。

人間国宝に富山県内在住者が認定されるのは20年ぶり3人目という。これからもその活躍を期待したい。

富山テレビ
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