大阪・ミナミのシンボルと言えば「道頓堀グリコサイン」。
「グリコサイン」はランナーに青・赤・白色の背景のイメージですが、今月18日、看板のデザインが「QRコード」に変わりました。
このQRコードは、「グリコサイン」の下、いわゆる「グリ下」に集まる若者たちの悩みを聞くために作られたもので、読み込むことで大阪府警のLINE相談アカウントに誘導されます。
「取り締まりだけではなく寄り添いを」と相談対応を強化する警察。
「グリ下」に「塀」を設置した行政。
若者たちは「大人」たちに相談できるのかー。
「グリ下」を取り巻く「今」を取材しました。
■”居場所”だけど”不健全”「グリ下」に”塀”設置も…すぐ近くの「浮き庭」に移動
「グリ下」には2021年夏ごろから若者たちが集まるようになりました。
孤独を抱える若者たちの居場所となっている一方、”未成年飲酒”や薬を過剰摂取する”オーバードーズ(=OD)”が蔓延するようになり、犯罪に巻き込まれるケースも相次いでいます。
【グリ下に集まる若者たち】「1歳の時出て行った父親養育費払えよ!」「アル中の父親、私に缶ビール投げるのやめろ!」
【グリ下に集まる少女】「みんなでパキった(=ODしてハイになる)ほうが楽しいです。もう宇宙見えるっす」
そこで、ことし3月、大阪市は約1600万円をかけて「グリ下」に塀を設置。
「犯罪被害を減らすため」「環境の改善」といった理由が掲げられていましたが、実際は「たむろしている若者の排除だ」という声も聞かれていました。
(Q:塀設置はどう思う?」
【若者】「邪魔!」「塀ができたらこっち行くか別の所集まるか」
「グリ下」に留まる若者もいますが、300mほど離れたところにある「浮き庭(うきにわ)」と呼ばれるエリアに集まる人も増えてきたようです。
■繰り返す”補導” 警察は相談ダイヤル「グリーンライン」開設も認知度足りず
今月18日は、「グリ下」と「浮き庭」では警察官による補導が行われていました。
連絡を受けて警察官が駆け付けると、男女の集団がいました。
散乱しているゴミを見るに、飲酒していたようです。
【少女】「いやだいやだ!」
警察官が少女を落ち着かせて話を聞いていきます。
【少女】「中2です。オールしよーみたいな」
【警察官】「『オールしよ』やったん。全然帰らん予定なん。でもお家1人やったら帰ろうと思いづらいか…。でも危ないから、『グリ下』から流れてきて『ココ』やろ」
こういった若者たちは、家庭環境や人間関係などで悩みや生きづらさを抱えている場合が多いといいます。
警察はそんな若者たちに向けて電話相談ダイヤル「グリーンライン」を開設していますが、まだ認知度は低く有効な対策とまでは言えない状態です。
そこで警察が「江崎グリコ」と協力し、看板にQRコードを表示することで、LINEの相談アカウントに誘導する取り組みを始めたのです。
■「LINEシステム」は”高校生”が作成 相談件数”約2倍”に
LINEのシステムを作ったのは「大阪府立都島工業高校」の3年生4人です。
先月、8割ほどシステムができた段階で警察が説明を受けました。
【都島工業高校・朝田寛さん(17)】「『何でも相談していいの?』と聞いてみましょう。そしたら出てきますね」
AIが自動で悩みに応じて回答し、直接相談したい場合は「グリーンライン」の電話番号が表示されます。
【警察】「全体的にええ感じやんね」
【都島工業高校・朝田寛さん(17)】「警察の皆さんと相談しながら文面は考えたので、分かりやすくなったんじゃないでしょうか」
このシステムの運用は今月7日から始まり、「グリーンライン」への相談件数は去年の同時期より7件多い16件となりました。
(今月18日から29日までの集計)
実際にグリコ看板にQRコードが映し出される瞬間に高校生たちも立ち会いました。
【都島工業高校・朝田寛さん(17)】「すごい、こんなことできんねや」
【都島工業高校・奥田孔志さん(17)】「すご!言葉が出ん。グリコの看板やろ、大阪の顔やで。すげー」
31日、警察から感謝状の贈呈も行われました。
■若者「警察に相談しようと思わない」「LINEでハードル下がる」
この取り組みをミナミに集まっている若者たちはどう捉えたのでしょうか?
(Q:悩んだ時に警察に相談しようと思ったことありますか?)
【高校1年生(15)】「怖くてできん。親に言われそう」
今回作ったQRコードを読み取ってもらうと…
【高校1年生(15)】「え、LINEやん。バリやりやすそう!」
電話よりもLINEを使った相談の方がハードルが低いという声が聞かれました。
【大阪府警 少年課・大竹央朗少年育成室長】「『グリ下』が悪いイメージというのが、世の中に広まってると思う。ここに行くことが悪いことじゃないので、相談があるなら我々に言ってほしい」
■相談したくないのは大人への「不信感」か 感じる”矛盾”
その一方で、別の高校生から聞かれたのは大人たちの関わり方に対する「不信感」でした。
(Q:塀ができたことについて)
【高校3年生(18)】「(グリ下には)子供達もたまってたんで、警察の方も来てたんですけど。これができたことによって、みんな散らばることも増えたんで」
(Q:塀を作ったのも大人で、相談に乗るのも大人、どう思う?)
【高校3年生(18)】「正直何がしたいんかなと思います。やってること正直言ったらバラバラじゃないですか?全員が別の方向進んでるような感じ」
孤独を抱えた子どもたちに、信頼される大人の向き合い方が求められています。
(関西テレビ「newsランナー」2025年7月31日放送)