中国ではいま、日本発の地下アイドル文化が急速に広がっているという。若者の間で何が起きているのか。その背景を取材した。
流ちょうな日本語で歌う「地下偶像」
中国の首都・北京市。
この日、開演前のライブ会場を訪れると長い列ができていた。

ファンのお目当ては「地下偶像」、いわゆる“地下アイドル”と呼ばれる女性アイドルグループだ。

ステージに立つのは中国出身の女性アイドルたちだが、日本のアイドルを思わせる衣装に身を包み、歌うのも流ちょうな日本語だ。

歌いながらファンとハイタッチを交わし、会場を盛り上げる。
300グループ超「地下アイドルの戦国時代」
こうした地下アイドルの文化は、2023年ごろから北京や上海などの都市部を中心に拡大した。

当初は40グループほどだった地下アイドルだが、今では300を超えるグループが活動しているといわれ、「地下アイドルの戦国時代」と呼ばれるほどの盛り上がりを見せている。

こうしたブームは、中国各地に広がっている。

7月の週末、湖北省武漢市では大規模な地下アイドルのライブイベントが開催され、多くのファンが詰めかけた。

武漢市のアイドル「EAUX」:
こんにちは!私たちは湖北省武漢から来た、女性地下アイドルグループ「EAUX」です。みんなとまた会えてうれしいです。私は「EAUX」のピンク色担当「花枝(ハナエ)」です。

中国の地下アイドルは、日本風のニックネームで親しみやすさを演出している。
熱心な若い男性ファン「1年間で数十万円は使っている」
メンバーの多くは、学業や本業の仕事と両立しながら活動している。

そんな彼女たちを支えているのは、熱心な若い男性ファンたちだ。
ライブが始まると、最前列のファンは歌声に合わせて頭を振り、熱狂的な声援を送る。

さらに、ライブの後は「特典会」も開催された。
ファンが推しのアイドルに直接、応援の気持ちを伝える機会だ。

写真撮影は1枚約1200円だが、推しのアイドルと2人きりで数分間トークができる特典もあるため、大量に購入するファンもいた。

ファンに話を聞くと「きょうは十数枚買いました。武漢の多くの地下アイドルグループに好きなメンバーがいるので、たくさん話をしたいです」「去年1年間で地下アイドルに数十万円は使っています。地下アイドルは今の若者が求めている娯楽の形だと思う」「彼女たちが全力で歌っている姿に心を打たれました。自分も全力で応援し、彼女たちがさらにうまく歌えるように勇気と希望を与えたい」と語った。

“ファンがアイドルを育てる”そんな日本発の地下アイドルのスタイルも、中国のファンの間に根付いているようだ。
「日本は憧れている先輩や好きな音楽がたくさんある」
では、なぜ彼女たちはあえて日本語で歌うのか。

複数の地下アイドルをプロデュースしているIDOLREALMのRemi社長は、「地下アイドル文化の起源は日本なので、その本場の雰囲気を忠実に再現したいと思う。そのためには日本語で歌を歌うことから始まる」と話す。

本場・日本の地下アイドルへのリスペクトを背景に、最初は日本のカバー曲から始まった中国の地下アイドルたちだが、今では日本語のオリジナル曲まで作っていて、将来の夢は日本でのライブ開催だという。

武漢市のアイドル「緊急集合」餃子さん:
日本は地下アイドル文化の本場で、私たちが憧れている先輩や好きな音楽がたくさんあります。日本でライブができるなら本当にうれしいです。

「Sweet2Poison」Harukaさん:
夢は東京ドームで歌うことです。
中国で流行している日本発の地下アイドル文化。
外交では日本に対して厳しい態度で臨む中国政府だが、若い世代の間では日本に対し、異なる価値観があるのかもしれない。
(「イット!」 7月31日放送より)