ニジマスの養殖日本一の静岡県富士宮市で知る人ぞ知るブランド“くぬぎ鱒”を味わえる専門店がオープンした。目指すは「富士宮やきそば」に続くご当地グルメだ。
”やきそば”だけじゃないご当地グルメ
世界文化遺産・富士山のお膝元に位置する静岡県富士宮市。
誰もが知る人気のご当地グルメと言えばもちろん”富士宮やきそば”だ。

そんな“やきそば”の街にあって2025年5月にオープンしたのが「富士山ふもと食堂うちっち」。
ニジマスの専門店で、”幻”のブランドマスを提供している。
なぜ、いまニジマスなのか?
知る人ぞ知るブランド“くぬぎ鱒”
訪れたのは同市にあるくぬぎ養鱒場。
実は富士宮市は富士山の湧水を活かしたニジマスの養殖が盛んで、その生産量は日本一を誇る。
くぬぎ養鱒場は市内に10軒ほどある養鱒場の1つだ。

くぬぎ養鱒場の功刀芳康 社長は“くぬぎ鱒”について「口の中に広がるさわやか感、甘さ、余韻が広がるような食材を作りたい」と”野望”をのぞかせ「満点とは言わないがそれに近づいた味になっている」と胸を張る。
半世紀近く鱒と向き合うことで培った技術には自信を持っていて、出荷先は功刀社長が認めた全国の一流レストランや料亭が大部分を占め、味わいにこだわった“くぬぎ鱒”はブランドマスとなっている。
このため、地元の人であってもその味を知る人が少ない、それが”くぬぎ鱒”だ。

実家が飲食店だったという功刀社長は「(“くぬぎ鱒”を)使ってもらう店側と魚の特徴や使い方をお互いに話し合い、納得して使ってもらう」とのこだわりを持っている。
味に惚れこみ苦節10年
この“くぬぎ鱒”の味に心を打たれたのが「うちっち」のオーナー・中村一雄さんだ。

「小さい頃からいろいろな魚を食べてきたが、“くぬぎ鱒”は全然違うレベルだった。養殖の川魚がこんなにおいしいのかと感動を得た」と話す中村さんは「地元が誇る最高級の味を気軽に堪能してもらいたい」と思い立ち、“くぬぎ鱒”専門の飲食店を開きたいと功刀さんに相談。
だが、なかなか色よい返事をもらえなかった。
それでも諦めることなく功刀さんと信頼関係を築き、交渉や説得を重ねること10年。

功刀社長が「(”くぬぎ鱒”を)食べておいしさに感動してくれた。店に食べに来た人がそれと同じ感動を味わってほしいという気持ちで始めてくれたので」と振り返る通り、ついに取引を認めてもらった。

中村さんの熱意によってオープンにこぎつけた「うちっち」で提供するのは”くぬぎ鱒”本来の味を楽しむことができる刺身はもちろんのこと、フライや塩焼き。
食通をうならす味を市民に広めたい
連日、市民や観光客が店を訪れていて、この日は稽古のため富士宮市に滞在していた大相撲・高砂部屋一行も来店した。

食にこだわりを持つ力士たちも“くぬぎ鱒”に舌鼓を打つとともに太鼓判を押し、「マスの刺身は初めて。甘っ!」と朝紅龍関が驚けば、元大関・朝乃山関も「おいしい、身がぷりぷり」とその味に感動した様子だ。
中村さんは「市民のみなさんに“くぬぎ鱒”を知ってもらい、その良さを知ってもらえれば富士宮全体のマスの良さがわかると思うのでみなさんに広めて、扱う店の数も増えていったらと思う」と意気込みを語る。

73歳にして一念発起した中村さん。
“くぬぎ鱒”のおいしさを多くの人に広めたいという夢はまだスタートラインに立ったばかりだ。
(テレビ静岡)