技術力の差とは?

そして、「水の制止力」に守られているはずのこれら島国は、ほとんど欧米列強の植民地でした(台湾は1895~1945年、日本領でしたが)。やはり、軍事力、技術力に圧倒的な差がある場合、「水の制止力」だけでは十分でないのです。

「技術力の差ってなんだ?」。ある国は銃を持っていて、別の国にはない場合、力の差は圧倒的になります。例えば南米に存在したインカ帝国は1532年、わずか168人のスペイン人に滅ぼされました。

主な理由は、インカ人には銃がなく、スペイン人は銃を持っていたことです。あるいは、ある国がいわゆる黒船(蒸気船)を持ち、別の国(島国)が持たない場合、やはり征服される可能性が高いでしょう。これが「技術力」の差です。

ですが、軍事力、技術力が拮抗(きっこう)している場合、「水の制止力」が大いに役立ちます。「水の制止力」はどのように働くのでしょうか?

ミアシャイマーの解説を要約してみると、以下のようになります。

・海軍が一度に運搬して上陸できる部隊の数と火力の強さには限界がある。
・敵の防衛部隊を圧倒できるほどの強力な攻撃部隊を、敵国の岸に侵略させるのは難しい。
・航空機、鉄道、トラック、戦車などの発明は、敵の上陸部隊が岸に上陸した後の行動をさらに困難にした。
・空母があっても、侵略側には不利。なぜなら、「国全体」を「空母」と考えれば、被侵略側は空母よりもはるかに多くの航空機を置いておくことができる。
・地上に基地を持つ航空部隊は、接近してくる敵の海軍を沈める能力を持つ。
・潜水艦は、上陸する兵士を運んでくる艦船を沈めることができる。
・機雷によって、海からの侵入を防ぐことができる。

例えば、ある国が日本を占領、征服しようと試みたとしましょう。1億2334万人の日本を占領、征服するためには、かなりの数の兵士を上陸させる必要があります。

しかし、はたしてそれほどの数の軍人、軍隊を、日本に上陸させることができるでしょうか?上陸軍を運んでくる敵艦船のほとんどは、日本の戦闘機、艦艇、潜水艦などに撃沈されることでしょう。

これが陸続きであれば、全く話が異なります。マッキンダーが、「ロシアは、現代のモンゴル帝国だ」といったのは、鉄道や自動車が普及したからでした。ロシア軍が望めば、あっという間に陸続きの東欧に到達することができます。