2025年7月に行われた第27回参議院議員選挙では、自民・公明の両与党が大幅に議席を減らし、衆議院に続いて過半数を割り込んだ。宮城選挙区では立憲民主党の現職が再選を果たしたが、勝負を分けたのはいわゆる“第3極“、新興政党の台頭だ。
「時代の流れに対して認識が甘かった」

自民党・石川光次郎陣営 安藤俊威選対本部長:
時代の流れ、大きな川の流れ、そういったものに対して認識が甘かった。その流れの中で流されていることを気がつかなかった。選対本部長として本当に申し訳ない
1議席をめぐり現職と新人6人のあわせて7人が立候補した宮城選挙区。
全体の勝敗の鍵を握る改選数1の32選挙区のうちの1つだ。
戦いに敗れた自民党の石川陣営は、「流れ」を読み切れなかったと、涙ながらに後悔の言葉を口にした。
台風の目となった参政党

エフエム仙台で約20年間アナウンサーを務め、6年前の参院選で初当選した立憲民主党の現職、石垣のり子氏を、県議歴19年の自民党の新人、石川光次郎氏が追う展開になるとみられていた宮城選挙区。
しかし、政治改革を求める世の中の声が大きなうねりとなり、選挙戦の構図を一変させた。

参政党神谷宗幣代表:腑抜けた政治に喝を入れて、面白くない日本の政治を面白くしようと!そういうメッセージを送ってください!
今回の参院選、全国的に台風の目となった参政党。全選挙区で候補者を立て、選挙期間中、日ごとにその存在感を増していった。

宮城選挙区でもローレンス綾子氏が急速に支持を拡大。
参政党ローレンス綾子氏:日本人ファーストを掲げて規制緩和ではなくて規制強化をする。外国人の労働力としての過度な受け入れを反対する
若い世代の支持を獲得 SNSフォロワーも急増

選挙期間中、X(旧Twitter)のフォロワー数がどれだけ増えたかを候補者別に分析したデータを見ると、ローレンス氏は最も数を伸ばし1,300人以上増加。
投稿した内容はほかの候補者が演説スケジュールなどを発信することが多かったのに対し、ローレンス氏は政策に関する投稿の割合が全ての候補者の中で最も高くなった。

また、仙台放送が行った出口調査の結果によると、投票先を年代別で見た場合、ローレンス氏が20代、30代、40代で、最も支持を集めた。
「日本人ファースト」に対し「人権ファースト」強調
選挙期間中に吹いた風…敏感に反応したのが立憲民主党の石垣陣営です。

立憲民主党・野田佳彦代表:
そもそも外国人と共生をしていかなければ日本の社会は成り立たなくなっているんじゃないでしょうか
公示から9日後、野田代表が、2回目の県内入りをした際、物価高対策よりも先に多様性を認め合う「共生社会」に言及。
石垣氏は政治信条である、「人権ファースト」を訴える場面を増やし、参政党とのコントラストを際立たせた。

立憲民主党・石垣のり子氏:
「日本人ファースト」なんて、ファーストもセカンドもないんだということを、7月3日の第一声で申し上げました。人権を守らないことには私たちの暮らしも足元も全てが崩れていってしまいます
自民党は従来の選挙戦を変えられず

一方で自民党の石川陣営は、党の大物幹部を次々と投入する組織戦を展開。
自民党・小野寺五典政調会長:
相手は相手でしっかりとやってらっしゃると思うんだけど、私たちは私たちでやるだけだから
保守層に浸透する参政党を意識しながらも、従来の戦い方を変えられなかった。
石川氏自身も、政治とカネの問題から自民党への逆風を感じていたが、組織戦を展開する中で党改革を訴えることに、遠慮があったと明かした。

結果として、選挙期間中に吹く”風”に敏感とされる、無党派層の動きにその結果が如実に現れていた。
仙台放送の出口調査によると、無党派層の投票先では、立憲民主党の石垣氏が32%で最も多く、次いで、参政党のローレンス綾子氏が22%、自民党の石川氏は16%に留まった。
各党候補者の弁
自民・石川光次郎氏:
逆風での中の戦いと認識はしていました。私一人の力不足
参政党・ローレンス綾子氏:
前回参院選の3年前と比べて、この国大丈夫だろうかという危機感がさらに高まっている感じがしました。その中でより参政党が、共感を得られたということではないかと
立憲民主党・石垣のり子氏:
今回「人権ファースト」とあえて言いましたが、こういうことを言わなければいけない、選挙の焦点にしなければいけない政治状況に関しては、非常に危機感を抱いています
有権者の声は

今回の参院選、宮城県内の投票率は55.37%で、前回3年前を6.57ポイント上回った。
有権者はどのようなことを感じたのか。
仙台放送が仙台市内で行った街頭インタビューでは、様々な意見が語られた。
「(注目したポイントは)消費税と子育て。(情報源は)私はSNSよりテレビが多かった」
「演説は暑かったので聞けなかったけれども、スマホで動画を見たり、新聞にもいろいろ広告が入っていたのでそれで決めました」
「(インターネットなどの情報は)根拠のないコメントもあるので、どこを信用したらいいか」
「短いメッセージでどれだけ表現できるか、各党必死になっていたのかと思う」
「自民党だけじゃなくて、他の勢力が強いと期待して」

新興勢力の躍進により、衆議院に続き、参議院でも与党が過半数割れに追い込まれた今回の選挙。
政治の転換点を迎えた今、私たちの1票がどう反映されていくか、注視する必要がある。
仙台放送