天皇皇后両陛下は、7月6日から8日間の日程でモンゴルを公式訪問されました。天皇皇后として初めて日本人が抑留された地に足を運び、慰霊碑を拝礼されたほか、現地の学校を視察したり、国民的なスポーツの祭典「ナーダム」の開会式に出席するなど、モンゴルの歴史や文化、自然に触れ両国の絆がさらに深まることを願われました。
広大な草原と遊牧民文化の国 天皇皇后の訪問は初めて
天皇皇后両陛下は、7月6日から8日間の日程で、モンゴルを国賓として訪問されました。
歴代天皇のモンゴル訪問は初めてです。

アジアの内陸国、モンゴル。広大な草原や遊牧民の文化で知られ、戦後は経済協力や大相撲など、日本との交流が進む親日国です。

7月8日、首都・ウランバートルの中心部にある広場で行われた歓迎式典。
両陛下は、フレルスフ大統領夫妻の出迎えを受けられました。

両国の国歌が演奏された後、陛下は儀仗隊の栄誉礼を受けられました。

式典には閣僚のほか、モンゴル出身の元横綱、朝青龍さん、白鵬さん、日馬富士さんの3人も出席。両陛下はにこやかに言葉を交わされました。

引き続き、政府庁舎にある応接用の伝統的なテント「ゲル」へと移動し、大統領夫妻と懇談されました。

陛下は「雅子にとっては初めてですので、今回2人で揃ってモンゴルの歴史、社会、文化に触れることを大変楽しみにしております」と伝えられました。
「もう一度、一礼しますか」…日本人抑留者の慰霊碑で2度の拝礼
この日の午後、両陛下は、モンゴルで抑留され亡くなった日本人の慰霊碑を訪問されました。

白い花輪を供え、雨の中およそ1分間にわたり黙とうを捧げられました。

モンゴルには、戦後、旧ソ連に抑留された捕虜のうち1万4000人が連行され、寒さや飢え、過酷な強制労働でおよそ1700人が亡くなりました。ウランバートルで、抑留者が建設に関わった政府庁舎やオペラハウスなどの建物は今も使われています。

雨がやみ、慰霊碑が立つ丘から街を一望された両陛下。

皇后さまは「雨がやんだようですが、もう一度、一礼しますか」と陛下に声をかけ、お二人は慰霊碑の前に戻り再び拝礼されました。

天皇皇后として初めて海外の抑留地で慰霊をされた両陛下。

遺族代表に「ご苦労がおありでしたね」と寄り添い、モンゴル抑留の歴史を心に刻まれました。
晩さん会でモンゴル語を交えスピーチ…ビオラの演奏も披露
この日の夜に行われた、大統領主催の晩さん会。

両国の関係者などおよそ120人が出席し、陛下はモンゴル語を交えおことばを述べられました。

天皇陛下:
ター・ブフンテェ・ダヒン・オールズスンダー・タータェ・バェン(皆様との再会を嬉しく思います)
両国間の交流や協力の可能性は、モンゴルの大草原のように、果てしなく広がっています。今後、両国の架け橋となる若い世代が先人たちの歩みを受け継ぎ、広大な土地にまかれた協力の種が多くの花を咲かせてほしいと思います。

晩餐会でビオラの演奏を披露された陛下。モンゴルの伝統楽器「馬頭琴」の交響楽団と共演されました。

日本の唱歌「浜辺の歌」は皇后さまと相談して選曲し、現地到着後も練習を重ねられたといいます。
ゲル地区の公立学校では子どもたちと交流
両陛下は遊牧民の移動式住居「ゲル」が立ち並ぶ地区にも足を運ばれました。

日本の支援で建てられ、ゲル地区で暮らす小学生から高校生までが学ぶ公立学校では、子どもたちの歓迎を受けられました。

両陛下は、ダンスや演奏などを披露した子どもたちに「素晴らしかったです。どうもありがとう」と声をかけ、笑顔で交流されました。

また、小学6年生のICT(情報通信技術)の授業を視察された両陛下。

パソコンで絵を描く様子をご覧になり、皇后さまは「真ん中は富士山ですか?」などと尋ねられていました。

学校をあとにする際も、見送りに集まった多くの子どもたちと触れ合われました。

両陛下と交流した生徒:
両陛下にお目にかかることができて大変幸せな気分です。めったにないチャンスに恵まれて良かったです。
「ナーダム」開会式へ…モンゴル特有の競技「シャガイ」を体験される場面も
訪問6日目、両陛下が出席されたのは、国民的なスポーツの祭典「ナーダム」の開会式です。

モンゴル語で「祭り」を意味するナーダム。相撲、競馬、弓を中心に、全国から選手が集まり、伝統の競技で競い合います。

両陛下は、開会式の迫力あるパフォーマンスの数々に見入られていました。

この後、両陛下は弓の競技場へ。民族衣装で弓を射るデモンストレーションを間近でご覧になり、拍手を送られました。

さらに、モンゴル特有の競技「シャガイ」を体験されました。これは羊のくるぶしの骨を使い、指ではじいて的に当てる競技です。

陛下に続き、皇后さまもご体験。最も得点の高い的に見事に当たると、大きな歓声と拍手に包まれました。

ナーダム2日目。ウランバートル近郊の草原で、5歳馬の競馬をご覧になりました。

体重の軽い子どもが騎乗し、100頭以上の馬が全長22キロメートルの距離を駆け抜ける花形の競技です。両陛下は双眼鏡とカメラを手に、熱心に観戦されていました。

国立公園では、世界最古の野生馬「モウコノウマ」の自然保護区へ。草を食べる群れを観察し、モンゴルの壮大な自然を体感されました。

陛下は1週間の滞在について「モンゴルの歴史、伝統文化、自然そういったものについて、二人で今度はそれを見ることができたということが、とても嬉しかったです」と振り返られました。

行く先々での温かいおもてなしに感謝された両陛下。夏のモンゴルで雄大な自然や文化に触れるとともに、日本とのかけ橋となる若い世代とも交流を重ね、両国の絆がさらに深まることを願われました。
(「皇室ご一家」7月20日放送)