命を守る「逆走対策」 高速道路で相次ぐ事故受け富山県内でも強化

「思い込みで逆に入ってしまう。誤進入してしまうというのが一番大きい要因」。交通事故鑑定人の中島博史さんはこう指摘する。高速道路の逆走による重大事故が相次ぐなか、富山県内でも対策が強化されている。

逆走事故の背景

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今年4月26日、東北自動車道で多重事故が発生した。逆走車が別の車と正面衝突し、3人が死亡する惨事となった。逆走した車は入口と出口がY字で交差するインターチェンジ(IC)から誤って進入したとみられている。

このような構造は「平面Y字型」と呼ばれ、入り口から本線に向かう進入路と出口のある料金所に向かう車線がYの字のように交わっている。この構造のICは富山県内にも東海北陸道の「五箇山」「福光」(南砺市)、能越道の「灘浦」(氷見市)の3カ所存在する。

本線と出入口車線が同一平面で交わる「平面交差」は、運転手の思い込みや見落としによって逆走を招く危険性がある。県警高速隊によると、県内では2022年から今年5月末までに40件の逆走が確認されている。

強化される対策

NEXCO中日本は五箇山と福光の両ICで今年5月、進行方向を表す矢印板や照明器具を設置した。

「路面を黄色と青で分かりやすく表示することや、進入禁止の看板、矢印の設置など、進行方向を分かりやすくする対策を行っている」とNEXCO中日本の鍛冶竜馬ドライブアドバイザーは説明する。

実際に現地を取材した菅谷アナウンサーは「正面に矢印の看板が沢山あるのが分かります。左側を見ると三角のコーンが3つ並んでいて、そして更に左を見ますと進入禁止の看板が2つあります。右に進みますと右へと黒い看板に書かれてあります」と現場の様子を伝えている。

専門家が指摘する課題

しかし、交通事故鑑定人の中島さんは現状の対策だけでは不十分だと指摘する。

「逆走ができないような、例えばバーの設置であるとか、トラフィックスパイクのような、逆方向に進もうとするとトゲが出て車を止めてしまうというような設備の必要があると思う」

県内で確認された逆走の多くは、目的のICを通り過ぎた後に料金所の近くでUターンしたケースだという。幸いにも事故に至ったのは2件で、けが人は出ていない。

逆走時の対応と今後の取り組み

県警高速隊は「高速道でのUターンやバックは絶対にしない」と呼びかけている。目的のICを通り過ぎてしまった場合は「そのまま走行して次のICで降り、料金所スタッフに申し出てほしい」としている。

万が一逆走してしまった場合は「ハザードランプをつけて車を路肩などの安全な場所に寄せ、110番や非常電話で知らせてほしい」と注意を促している。

県警は8月16日に県警ヘリと高速隊が連携し、北陸道上空からの監視を実施するなど、上空からの監視や啓発活動を強化している。

命を守るために大切なことは、運転する私たち一人ひとりの「心の余裕」である。焦らず、慌てず、ゆとりある運転が事故を防ぐ最大の鍵となる。

富山テレビ
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