暑い日が増えて、水遊びを楽しむ時期になってきましたが、気を付けたいのが水の事故。警察庁によると近年増加傾向で、去年は発生数・水難者数とも過去10年で最多となりました。

「猛暑」がおぼれの一因に!?

波に飲まれたり、水中で足がつったりと、ヒヤリとした経験がある方もいるのではないでしょうか。
波や風にはやはり注意が必要ですが、これらに加えて近年特に顕著な猛暑もおぼれを引き起こす要因となりえます。なぜなのでしょうか。

さらに、水の事故と気象との関係をひも解くと、おぼれるリスクが急増する“魔の時間帯”がありました。それはいつで、気を付けるべきことは何でしょうか。

午後2時が最もおぼれやすい?

『日本財団 海のそなえプロジェクト』によると、時間帯別のレスキュー出動数は午後2時が最も多く、次いで3時、4時でした。また『公益財団法人 河川財団』の調査でも、河川の水難事故は午後2時前後に集中し、昼すぎから夕方がピークとなっています。

そのため、水の事故は、午後2時が“魔の時間”といえそうです。

“魔の午後2時”にいったい何が?

では、なぜ午後2時なのでしょうか。気象予報士が考える原因は大きく3つあります。

1つ目は、「海風が強まる時間帯」だから。
朝は陸から海に向かって「陸風」が吹きますが、昼前になると海から陸に向かって吹く「海風」に徐々に変わります。
この「海風」は気温が高くなるほど強まるため、昼すぎに強さを増し、風の強さにつられて波も高くなって海面が荒れ、おぼれるリスクが高くなると言えます。

2つ目は「天気の急変しやすい時間帯」だから。
気温が高くなる夏の午後は大気の状態が不安定になりやすく、夕立やゲリラ雷雨がしばしば起こります。川遊びしている所では晴れていても、上流で急な大雨となると、時間差で中流や下流が増水することがあります。

3つ目は「熱中症のリスクが高まる時間帯」だから。
医師で気象予報士の徳田充宏さんに聞くと、午後2時ごろは一日で最も気温が高くなるため、汗を多くかいて水分や塩分の喪失によって熱痙攣(こむらがえり)や熱失神(立ちくらみ状態)などの症状が出るおそれがあるそうです。これらは軽度の熱中症ですが、遊泳中であれば十分おぼれることにつながりうるといいます。

より「暑い」と、より「危険」に

上記3つの原因に共通しているポイントが、気温の高さです。暑くなるほど海風が強まり、天気の急変が起きやすくなり、熱中症のリスクも高ります。

水遊びをしたくなる状況になるほど、皮肉にもおぼれる危険性が高くなってしまうのです。

今年の夏も猛暑に…どう備える

6月に続き、7月、8月も全国的に平年より気温が高い予想で、猛暑となるのはほぼ確実です。

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例年よりも、上記に挙げたおぼれのリスクも高くなると考えられます。

水のレジャーへ行く際の気を付けるべきポイントですが、まずはとにかく天気予報を入念にチェックしてほしいです。

前日から出発前にかけては、「波浪注意報」や「高潮注意報」、「強風注意報」が出ていないか、そのほか、泳ぐ時間帯の1時間ごとの天気、気温、風などを見てください。

到着後は周辺の天気も確認をしましょう。特に川では上流に雨雲が発生していないか、雨雲レーダーでこまめに確認してください。雷の音が聞こえてきたり、黒い雲が現れたり、急に冷たい風が吹いてきたりした際は天気の急変に要注意。空模様もこまめに確認しましょう。

また、川は時間をかけてゆっくりと増水することもあるので、前日に雨が降っていないかを確認するとさらに安心です。

さらに、水中では汗をかいていることに気付きにくく、岸まで上がらなければならないなどアクセスが悪いため、水分補給がおろそかになりがちです。意識的かつ定期的に水分を取り、しっかりと日陰で休みをとってください。
海にいる間は直射日光を遮るものがないので、帽子をかぶって水遊びをするのも効果的です。

天気予報や天気急変のサインをうまく利用し、無理せず、そして油断せず、海や川を目いっぱい楽しんでください。

【執筆:ウェザーマップ・東杜和気象予報士】

【参考文献:警察庁「令和6年における水難の概況等」/日本財団 海のそなえプロジェクト「これで、おぼれた。『おぼれ100』」「「海のそなえ」水難事故対策に関する調査結果サマリー」/公益財団法人 河川財団「No more 水難事故」】

フジテレビ気象センター
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最新の気象・防災情報や、「なぜそういったことが起こるのか?」現象の背景を徹底解説。フジテレビ気象センターに所属する気象予報士9人の他、日本気象協会、ウェザーマップとも連携し、天気を味方につけて毎日が楽しくなる情報や、つい誰かに話したくなるような情報などお届けします。