■住民震撼…母親は「痛くて苦しかったと思う。かわいそうでならない」
7月12日早朝、北海道南部の福島町の住宅街で男性がクマに襲われ死亡した。
住宅地に現れた体長約1.5メートルのヒグマ。被害に遭ったのは新聞配達中だった佐藤研樹さん(52)。佐藤さんは襲われた後、約100メートル離れた笹やぶに引きずり込まれた状態で発見された。全身に引っかき傷や噛まれた痕があり、特に腹部の損傷が激しかった。
一部始終を自宅の窓から目撃した男性は、「あそこで噛まれて引っ張られ、茂みに連れて行かれた」と証言する。近くに住む男性は「クマが人間の上に覆いかぶさるような形だった。声を出して追い払おうとしたが逃げなかった」と悔やむ。
救急車で運ばれる佐藤さんを確認したという母親は「痛くて苦しかったと思う。かわいそうでならない」と悲しみを語った。
■徘徊し続けるクマ…専門家「常識が通用しない」
クマは依然として発見されておらず、福島町では警察やハンターによる捜索が続いている。
出没は続いており、7月13日夜には警察官が町内の交差点でクマを目撃。14日には住宅のガラス戸にクマの足跡が残されていたほか、鉢植えや家庭用コンポストが荒らされた。
また近くのスーパーの物置の扉が強い力によって壊され、中の生ごみが散乱していた。
小学校では登下校時の警戒が続いており、住民の不安はピークに達しつつある。
北海道大学獣医学研究院の坪田敏男教授は、以前からゴミをあさるため町に出入りしていたクマが、餌場として認識し、何かいい事があると、繰り返し現れている可能性があると指摘する。そのうえで「いったんクマが市街地や人里に入り込んでしまうと普段の常識が通用しない。いくら鈴を鳴らしても市街地の中でクマがいれば人を襲ってしまうことも十分にある」と警告する。
■少なくとも2頭が徘徊か…福島町では過去にも人身被害
現地でクマのDNAなど痕跡を調べた道総研によれば、現場周辺で大型と小型の2種の足跡が確認されており、少なくとも2頭以上のクマが出没していることが明らかとなったという。
福島町では2021年7月にもクマによる死亡事故が発生。当時、農作業中の女性が襲われたが、そのクマは未だ駆除されていないが、今回のクマとの関係は不明だ。
人と野生動物の境界が揺らぐ中、福島町では住民の不安が日増しに高まっている。