福井県内で販売される卵の8割を賄う県内最大手の鶏卵業者が県内最大級、最新鋭の鶏卵農場を新たに整備しました。
 
近年、取り巻く環境が厳しくなり鶏卵農家の廃業が相次ぐ中、なぜ新設したのか、背景に迫りました。


◆福井県内でのシェアは8割

午前6時20分
福井市内のスーパーにトラックが到着。販売コーナーに卵が次々と陳列されていきます。
 
これらの卵を生産したのは、鶏卵卸販売を手掛ける福井市の土田鶏卵グループです。「10種類くらい。とてもにぎやかなお店なので、品ぞろえを豊富にして切らさないようにしています」
 
1937年に創業した土田鶏卵は、あわら市と坂井市にある3つの農場で、約70万羽の鶏を飼育していて、その羽数は県内シェア8割を占めます。


◆自動化を進め生産体制を増強

南越前町湯尾の道を走っていると、見えてきたのは真新しい農場。2025年4月、土田鶏卵が新たに整備した大規模な鶏卵農場です。約4万平方メートルの敷地には鶏舎4棟、集卵場2棟、堆肥舎などが並びます。

上野社長が施設を案内してくれました。
「鶏が入るケージは、この中に10羽くらい入ります。卵が斜めになっているので転がってきて、1回このワイヤーでワンクッションして、これを時間で上げることでコロコロとベルトの所に転がってきます。そしてベルトが動いて前の方に卵を集めていきます」

産まれた卵の収集だけでなく餌の供給、糞の収集などもすべて機械によって自動的に行われます。
 
現在、4棟の鶏舎のうち1棟あたり10万羽が飼育され、卵の生産が始まっています。4棟すべてが稼働すると最大で40万羽の鶏が入り、1日あたり32万個の卵が生産できるようになります。
 
集卵場には1時間に4万個を集めることができる機械を2台導入。1時間で最大8万個を集卵することができます。この生産増強で、県内での羽数のシェアは9割に達するといいます。

◆鳥インフルエンザで供給不足、価格が高騰

物価の優等生といわれ、食卓に欠かせない存在の卵ですが、近年、鶏卵業界を取り巻く環境は厳しくなっています。
 
鶏卵の卸値の推移は、2023年にはいわゆるエッグショックと呼ばれる価格高騰が起きました。翌年の10月からは、再び右肩上がりで価格が上昇。主な原因は「鳥インフルエンザの流行」です。発生した農場は全個体を殺処分しなければならず、卵が供給不足となり、価格が高騰しました。

◆農場の距離を離し感染対策

土田鶏卵が今回、南越前町に農場を整備した理由について、上野社長は鳥インフルエンザ対策を大きな理由の1つに挙げます。「鳥インフルエンザの問題から、今の農場から少し離れた土地を探していた。今までの農場から50キロほど離れているので鳥インフルエンザの問題がクリアできると考えていた。鳥インフルエンザが発生すると、国が主導して農場の鳥が殺処分されてしまうので、そうなると供給体制に問題があると考えている。まず、そういう病気が入らない体制を作っていきたいというのもるが、既存の農場から離すことによってリスクヘッジをできると考えている」
 
県内ほぼすべてのスーパーに卵をおろす土田鶏卵。1つの農場が仮に鳥インフルエンザが発生したとしても、県内に卵がない状態は絶対に避けなければいけません。新たな農場を整備することで、そのリスクは回避できるとみています。

2026年8月頃には、新農場のすべての鶏舎に鶏が入る予定です。上野社長は県内で8割のシェアを誇るだけに使命感を感じています。「これだけのシェアを持たせてもらっているので、安定供給がものすごく大事だし、一般の人たちに広く食べてもらえる卵を作っていくのが使命だと思っている」
 
安心安全な卵を県民に安定供給する。この土田鶏卵の使命は、新農場の整備でより強固なものになりそうです。

福井テレビ
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