新潟県三条市のスーパーで随意契約による21年産米の備蓄米が販売され、開店前から多くの人が列をつくっていた。一方で、JA新潟中央会の伊藤会長は、コメの店頭価格の高騰に伴う政府備蓄米の放出が消費者だけでなく生産者にも不安を招いたと指摘している。
地域密着スーパー“古古古米”を販売
6月28日、新潟県三条市のスーパーに開店前からできていた行列。目的は店の特設コーナーに並べられた備蓄米だ。

こちらの店舗では、6月上旬にも競争入札による備蓄米を販売していて、客からより多くの販売を求める声が寄せられていたという。
スーパーマルセンの太田雅悠専務は「日頃から『備蓄米はこのスーパーに入るの?』とか『いつ入るの?』とか、そういう声をいただいていた」と話す。
そこで今回、新たに随意契約による2021年産の備蓄米いわゆる“古古古米”を仕入れ、5kg入り50袋が用意された。
競争入札による備蓄米と比べさらに安く、2000円を切る価格に設定。さっそく多くの客が備蓄米を手に取っていた。
購入した客からは「格安だし、試食させてもらっておいしかった。いいと思って買った」「コメをなかなか買えない。ありがたい」などの声が聞かれた。
備蓄米入荷も米不足解消の実感薄く…
農水省の6月27日の発表によると、前の週1週間にスーパーやホームセンターなどで販売された備蓄米を含むコメの価格は5kgあたり平均3835円と値下がり傾向にある。

ただ、こちらの店舗では、一部の問屋からは仕入れの量に制限がかけられるなど備蓄米の流通によるコメ不足解消の実感はいまだ薄いと太田専務は話す。
「コメは依然潤沢ではなく、まだ不足気味。もう少し簡単に、必要な時に必要な分を仕入れられると我々としてはいい」
「良い結果ではなく不安招いた」苦言も
このコメの価格高騰に伴う備蓄米の放出に関して苦言を呈したのは、JA新潟中央会の伊藤能徳会長だ。

6月27日に開かれた会見で「コメの店頭価格の高騰と政府備蓄米の放出は、消費者と生産者の双方にとって良い結果を招かず、むしろ不安を持たすのが実態」と話したほか、消費者目線の政策ではなく、生産者にも目を配り、持続可能な農業を実現する政策が必要だと訴えた。
「生産者の不安を取り除く。価格を下げると同時に、不安を取り除く対策が必要」
“直接契約による買い取り”今後検討へ
また、JAのコメの集荷にあたり、小泉農水大臣が要請した農家に一時的に支払う仮払金制度の廃止について、伊藤会長は「生産者の手取りが最高になるように努めたいので、買い取り方針についてはその一つの方法と考えている」と、直接契約による買い取り方針について新潟での運用も今後検討していくと説明した。
今後どうしたら生産者と消費者が納得できる環境がつくられるのか、日本の主食・コメについての議論は続く。
(NST新潟総合テレビ)