TSKさんいん中央テレビと山陰中央新報社のコラボ企画「カケル×サンイン」。
共通のテーマをテレビと新聞、それぞれの視点で取材し、ニュースの核心に迫ります。
今回は、島根県西部の伝統芸能『石見神楽』にスポットをあてます。
田中祐一朗記者とお伝えします。

田中祐一朗記者:
石見神楽は、今月、開催中の大阪・関西万博で特別上演が行われました。2日間・4回の公演はいずれも満席で、その魅力を世界の人々にアピールしました。今回の公演では新しい演出も加えられ、進化した姿を見せた石見神楽、次の時代へ新たな伝統を加えようと模索する関係者の思いに迫りました。

6月11日。
8日後に控えた大阪・関西万博での上演に向け、最後の練習会が浜田市内で開かれました。
11日は、市内の社中から約100人が集まり、最終確認のため「通しげいこ」です。
大阪・関西万博の公演には、浜田市内の社中から約150人が参加します。
石見神楽が万博会場で上演されるのは、前回1970年の大阪万博以来55年ぶりです。
その大舞台に向け、2025年3月からほぼ毎週、練習を重ねてきました。

55年ぶりの万博公演、目玉は「55頭の大蛇」。
「55年ぶり」にちなんだ演出ですが、前回の万博では8頭、普段は4頭程度が一般的で、55頭はまさに桁違い、かつてない数です。
そこで、市内の神楽団体が合同チームを結成。
舞い手や囃子手だけでなく、衣装や道具も持ち寄って「オール浜田」で演じます。
その練習を見守るのは、55年前、大阪万博の舞台で出演じた長冨幸男さんです。

長冨幸男さん:
この田舎から出るとものすごい広いところだった。なんとびっくりするぐらい広かったなというのが、まず第一印象でございます。

55年前を感慨深く振り返ります。
長冨さんは当時23歳で、大蛇の頭を出したり、尻尾を動かす役を務めました。

長冨幸男さん:
片付けている時にね。観客の人から『あんたら今日は公演があっただろうが、公演が無いときにはこの大蛇どうやって飼っているんかい』って言われたこともあるんだよ。なんと笑い話のようなことなんですが、それだけ先輩方の芸が、いかに立派だったかなということを肝に銘じている。

長冨さんは、そんな先人たちからその伝統を受け継ぎ守ってきました。
そして、今度は次の世代にバトンを渡す番です。

大蛇役・前澤文次郎さん(26):
結構やってて楽しい。浜田市の神楽はすごいって思ってほしいです。

大蛇役・品川生翔さん(17):
僕は幼稚園の年中さんのころからやってます。前回の万博で55年前の万博で、一気に有名になったこともあって、同じ大阪万博なのですごい頑張ろうと思っています。

そして公演初日。
会場のエキスポホールには、開演の3時間ほど前から観客の列が出来ました。
2日間合わせて4回の公演は、すべて満席。
約6400人が石見神楽の世界に浸りました。
プロジェクションマッピングにナレーションといった、これまでなかった演出を取り入れ、観客を魅了しました。

長冨幸男さん:
今日は最高によかったですね。今まで練習といっても段階が違うし、練習をしていた会場も違う。本当に立派に見えた。

55年の時を経て臨んだ大舞台で圧巻のパフォーマンス、新たな境地を切り開き石見神楽の伝統に新たなページが刻まれました。

石見神楽の演者:
教えられたことしかできないので、今まであの先輩方に教えていただいたことを忠実にやることを心がけてやってみたつもりです。いい演技だったかなというふうに思います。

石見神楽の演者:
浜田市にある神楽産業、ものづくり、こういうものがあって本当にこういう場に立てて、先人のこう知恵というかですね、石見神楽のものづくりがあって、ここに立たせていただいてるなというふうに、改めて感謝しながら今日はさせていただきました。

少子高齢化が進み、地域文化の担い手確保も課題となる中、55年ぶりの万博をきっかけに石見神楽の伝統のバトンは、確実に次の世代に渡されようとしています。

田中祐一朗記者:
大阪・関西万博での石見神楽、私は初日の公演を取材しましたが、終演後、観客席からはまさに「万雷の拍手」が起きていました。かつてない圧巻のステージでした。

福島睦アナウンサー:
伝統を受け継ぐだけでなく、新しい魅力を加えて次の時代にバトンを渡したい、新しい演出には、浜田の皆さんのそんな思いが感じられました。

田中祐一朗記者:
伝統を守りながらも、最新のテクノロジーを取り入れた演出からは、石見神楽の新たな可能性も垣間見えました。この2025年の万博は、石見神楽の継承にとって大きな転機だった次の世代の人たちが、将来、そんな風に振り返ることになるかもしれません。

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