「最強の左腕」を武器に、アームレスリング全日本選手権で4階級制覇に臨んだ山形市の植松政憲さん。試合前の努力・気持ちに弊社記者が迫り、前人未到の記録に挑戦した大会に密着した。

自らを取り戻す・自分に勝つための挑戦
山形市のアームレスラー植松政憲さん(43)。
鍛え上げた左腕を武器に、これまで全日本選手権で3階級を制覇。

2024年にレフトハンドでは大会史上初となる4階級制覇を目指して-80キロ級に臨んだが、大記録の目前、決勝で涙をのんだ。

2024年6月のインタビュー映像を振り返りながら、弊社記者に語ってくれた心の内は…。
記者の「去年は何と言っていた?」という問いに対し、植松さんは「『優勝して山形に必ずメダル持ってくる』って言っていましたね」と。

記者:
去年は残念でしたけど…。
植松さん:
一番になるというのはそんなに簡単じゃない。
負けた後が大事になってくるので、3階級制覇しているが負けてきた数もある。
そこからケガもあって、またはい上がれたのは自分のプライド。

植松さんはこれまで、レフトハンド-70キロ級・-75キロ級・-90キロ級で優勝し、3階級を制覇。
2024年には日本代表にも選ばれ、韓国との国際試合のワンマッチ5本勝負で4勝1敗という圧倒的な強さで日本を勝利に導いた。

植松さんにとって、日本代表として勝負して勝利をおさめたことは、「自分はまだまだいけるぞ」という強みにもなり、-80キロ級でもう一度チャレンジすることへの意欲・自信につながっているという。

植松さんは2024年のリベンジに向け、韓国と戦った-90キロ級の筋肉を維持したまま脂肪だけを10キロ落とす難しいトレーニングを続けてきた。

初戦から優勝候補同士が激突!
全日本選手権の-80キロ級は、植松さん同様、複数階級の制覇を目論む選手が多く出場するハイレベルな階級。
2024年だけでなく、4年前(2021年)には決勝の試合中に「上腕二頭筋腱」を断裂し優勝を逃すなど、植松さんにとって苦い記憶も残っている。

しかし植松さんは、「この階級で負けっぱなしで終わりたくない。自分にとっては因縁の階級。弱いから負けた。自分を取り戻す、自分に勝つ。4階級制覇はその後についてくるものであってリベンジです」と語る。

6月22日に栃木で行われた全日本選手権には全国から約600人が出場し、-55キロ級から無差別級まで最大9つのクラスで争われた。
植松さんが挑むレフトハンド-80キロ級に出場する三重の選手は、「植松選手は去年決勝まで行っているので一番警戒している。攻め方も自分と似た感じなので頑張って勝ちたい」と話していた。

また高知の選手は、「-75キロ級でおととし優勝した。きょうの最大のライバルは植松さん。正面で当たったら一番強い人。できるだけ技術を駆使しないといけない」と話し、植松さんをライバル視する強者がそろっている。

いざ初戦。
植松さんの相手は2023年の-75キロ級チャンピオン。優勝候補同士がぶつかる注目の一戦となった。
「同じ条件なら自分の方が強い」「やってきたことを信じて勝つだけ」
その信念を力に重ね、植松さんは優勝候補をねじ伏せた。

会場の空気を一変させた決勝戦
その後も、鬼気迫る様子で圧倒的な強さを見せ決勝に駒を進めた。
決勝を前に、「勝って初めて4階級制覇・チャンピオンなので、ここで気持ちが切れないように何としても取る気持ちで絶対勝つ」と意気込みを語ってくれた。

決勝の相手は過去-70キロ級で2度優勝し、国体2位の実力者。
前人未到の4階級制覇なるか…、会場の空気が変わる。

一瞬に見えた勝負には、植松さんの情熱と努力が凝縮されていた。

見事に4階級制覇を達成した植松さんは、「何回も何回も挫折してはい上がって取れた4階級制覇なので最高です。アームレスリングってかっこいいな、楽しいなとか、自分もやってみたいという人が増えてもらえればうれしい。やっと取ることができました!」と、うれしそうに話してくれた。

表彰式で突き上げた手には一層の力強さが宿っているように見えた。
(さくらんぼテレビ)