水面を覆い尽くすほど、うようよと集まった魚。
高級魚マダイです。

この大量のマダイが今、青森県の陸奥湾で別の高級食材を食い尽くす迷惑者となっています。

「耳づり」という160枚ほどの稚貝を取り付けたロープを海中に入れる形で養殖されていたのは、県の名産品であるホタテです。

しかし、漁師がつり上げると、ほとんどの貝殻が欠け、中のホタテの身が食べ尽くされていました。

貝殻にはマダイの歯形がくっきり。
被害に遭ったホタテの割合は全体の7割から8割にも上るといいます。

ホタテ養殖歴20年という男性漁師は、被害の深刻さを「全滅に近い。今までこんなにひどいのはなかった。タイを怒ったってしょうがないですからね」と訴えます。

この事態の原因は何なのでしょうか。
陸奥湾では2025年、海水温の上昇でホタテの成長が遅れていました。
それにより、タイが集まるハイシーズンと重なる結果となったことが背景にあるとみられています。

産卵ができる成貝に成長するまでに3年ほどかかるというホタテ。
今回、被害に遭ったのは2026年まで成長させるはずだった2年目のホタテです。

野辺地町漁業協同組合 副組合長理事・横濵福太朗さん:
親貝がなくなるので、来年の産卵がどういう状況になるかというのが一番心配。

今回のマダイによる“ホタテ危機”に対しては「自分たちだけでは対処しきれない」と漁協の組合長は話します。

野辺地町漁業協同組合 代表理事組合長・砂原則行さん:
県漁連などで支援してもらって県に陳情していきたい。

青森県の宮下知事は27日、すでに解決策を模索し始めていることを明かしました。

青森県・宮下宗一郎知事:
今、実際、水産総合研究所では稚貝とマダイを使って、マダイがどういうふうに攻撃するのか、ホタテを食べるのかという実験を始めている。そうした結果も踏まえて、今後の対策を考えていきたい。

高級食材のさらなる高騰を招きかねない危機。
早急な対策が求められています。