生活保護費を段階的に引き下げたのは違法だとして受給者が取り消しなどを求めた裁判で、最高裁は、引き下げは違法とする初めての統一判断を示しました。
最高裁前から、フジテレビ社会部・空閑悠記者が中継でお伝えします。
最高裁が引き下げを違法と判断したことで、国は対応を迫られることになります。
国が2013年から2015年にかけて段階的に生活保護費を引き下げたことについて、受給者が引き下げの取り消しを求める訴えを全国で起こしています。
このうち、上告された大阪と名古屋の裁判について、最高裁は判決で、「デフレ調整で物価の変動率のみを直接の指標にしたことには専門的知見との整合性を欠くところがあり、厚労大臣の判断には誤りがあった」と指摘し、引き下げは違法とする統一判断を示し、取り消しを命じました。
一方、国への賠償請求については退けました。
全国各地の裁判所では同様の裁判が続いていて、最高裁がどのように統一判断を示すか注目されていました。
最高裁が引き下げは違法とする統一判断を示した裁判ですが、改めてこれまでの経緯を見ていきます。
生活保護費引き下げ訴訟は全国各地で起こされていたわけですが、生活保護費の引き下げが違法だったり適法だったりと裁判所の判断はバラバラでした。
そこで今回、最高裁が統一判断を示したということになります。
この裁判の争点を整理すると、国は2013年から2015年にかけて、生活保護費を総額約670億円削減しました。
この引き下げは適法だったのか、それとも違法だったのか。
まず受給者側は「引き下げに合理的な根拠はない」などとして、引き下げは違法だと主張しました。
これに対して国側は、リーマン・ショックよる物価や賃金の下落をもとに計算したもので、これは「デフレ調整」と呼ばれていますが、「引き下げ自体は妥当だった」と反論しています。
そして27日、最高裁は、この「デフレ調整」は「専門的知見を欠いていて厚労大臣の判断は誤り」として、生活保護費の引き下げは違法と判断しました。
しかし、損害賠償までは認めませんでした。
青井実キャスター:
このような流れですが、柳澤さんは最高裁の判断はどうお考えですか?
SPキャスター・柳澤秀夫氏:
損害賠償が認められなかったことは、原告側の不満は残ると思うんですが、でも当然の結果と受け止めています。憲法で国民は健康で最低限の生活を送る権利ということは保証されていますから、それを「厚労大臣の判断は誤りだった」というところまで踏み込んで判断しているということは、今回の判断の意味は大きいと思います。
青井実キャスター:
今回違法だと判断されたことで今後、国の対応も注目されます。