荒尾市の児童養護施設で、約5年間にわたって職員の男性から性行為を強要され、妊娠・中絶を余儀なくされた女性が施設側の責任を追及しようと、損害賠償を求める裁判を26日起こしました。
女性は顔を出して記者会見に臨み、「大切な10代の時間を奪われ、自分の人生を奪われた思いがする」と悲痛な胸の内を明かしました。
【平山 ひかりさん(仮名・24歳)】
「自分なりの『SOS』を出していたけれど助けてもらえなかった。『助けてもらえていたらもっと早く被害から抜け出せていたのに』と、何度も思いました」
訴えを起こしたのは、社会福祉法人『慈愛園』が運営する荒尾市の児童養護施設
『シオン園』に、2010年から約10年間入所していた現在24歳の平山ひかりさん(仮名)です。
訴状などによりますと、平山さんは中学2年生の頃から約5年間にわたって施設職員の男性から性行為を強要され続け、高校1年生のときには妊娠が発覚し、人工妊娠中絶手術を受けたということです。
この職員の男性は、児童福祉法違反の罪で懲役1年10カ月の実刑判決を受けています。
平山さんの友人が施設に対して、職員との間で性的関係が疑われることなどを訴えたこともありましたが、適切な対応はとられなかったということです。
平山さんは、園を運営している『慈愛園』や当時の『シオン園』の施設長に対し、男性を雇用した責任や性的虐待を未然に防ぐ義務を怠った責任などを追及しようと、2200万円の損害賠償を求めて26日、熊本地裁に提訴しました。
平山さんは複雑性PTSDを発症し、現在も病院に通っているということですが、自身の顔を隠さずに法廷で争うことを決めました。
【平山 ひかりさん(仮名・24歳)】
「サポートしてもらえる社会であるべき。隠す、『恥』と言われない世の中であってほしい。
大切な十代の時間を奪われ、自分の人生を奪われた思いがする。悪いのは加害者だが、園にも子供を守る責任があったと思う」
一方、被告の慈愛園はTKUの取材に、「訴状が届いていないので現時点でのコメントは差し控える」としています。