2025年は戦後80年の節目の年である。
戦争を体験した人の高齢化が進む中、兵士の遺品など悲惨な過去の歴史を伝える多くの品々が自治体に寄贈されている。

ただ、その数が増えてきたため、保管場所の確保が課題となっている。取材した。

大分市歴史資料館に寄贈された多くの遺品
大分市歴史資料館に寄贈された多くの遺品
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大分市歴史資料館に寄贈された「銃弾が貫通した兵士の日誌」

大分県の大分市歴史資料館。

高畠豊館長が見せてくれたのは、大分市出身の兵士の日誌だ。そこにつづられているのは、太平洋戦争での激戦地・硫黄島での日々。

端が破れているのは銃弾が貫通したためだという。

ーー高畠豊館長
「赤紙で招集されて、結果的に戦死することになる硫黄島、 孤島だがそこに送られていくような運命をたどった人」

硫黄島で戦死した大分市出身の兵士に日誌
硫黄島で戦死した大分市出身の兵士に日誌

寄贈されたもののなかには空襲で被害を受けた「民家の柱」も

銃弾が突き刺さった柱は、大分市の空襲で被害を受けた民家のものである。これらはいずれも、大分市歴史資料館が市民から寄贈されたものだ。

大分市歴史資料館の高畠豊館長は「大分の街が経験した戦争、大分出身の方が経験した戦争のことを展示している」と話す。

地元が経験した戦争の歴史を知ってもらいたいと、資料館では2024年企画展を開催し、寄贈された所蔵品も展示。こうした企画展はこの夏も開催を予定してる。

空襲で被害を受けた民家の柱
空襲で被害を受けた民家の柱

保管スペースの確保が課題に「慎重に断らせてもらうこともある」

戦争を経験した人たちが少なくなる中、悲惨な歴史を伝える資料を受け継ぐことは重要ですが、課題もある。

それは保管スペースの確保だ。
戦争関連の資料だけでも1000点以上。ほかの時代の所蔵品もあり、3つある収蔵庫はほぼ埋まりつつあるという。
資料館では毎年10件近くの寄贈があり、戦後80年節目の年である2025年はさらに増えることを見込んでいるが、場合によっては、申し出を断らざるを得ないという。

高畠豊館長は「戦争関係の本などをもらってほしいという希望がかなり多い。普通に出版されている本についてはお断りする。大分と関わりのないものなどについても慎重に断らせてもらうこともある」と語る。

いっぱいになりつつある収蔵庫
いっぱいになりつつある収蔵庫

戦時中に海軍航空隊の基地があった宇佐市でも戦争関連の品を約4000点所蔵

一方、戦時中に海軍航空隊の基地があった宇佐市の公共施設には、遺族の方々から市に寄せられた遺品などが収蔵されている。

2025年1月にも、戦死した特攻隊員ゆかりの遺品約100点が家族から寄贈されるなど、終戦から80年を迎えようとする中、地元の戦争の記憶を伝える多くの品が寄せられている。

宇佐市が所蔵する戦争関連の品は約4000点。
1か所の施設ではスペースを確保できないことから、展示と保管の両方を行うことが難しいという課題がある。
そのため、保管は複数の公共施設で行っているという。

こちらの公共施設では軍服や飛行機の部品などを。
また、特攻隊員の遺書など紙で傷みやすいものは室温や湿度を一定に保つことができる収蔵庫のある別の施設で保管している。

このように既存の公共施設の限りあるスペースを有効活用している。

戦争を経験した人たちが少なくなる中、平和への願いの継承を担う品々。受け皿となる場所をどう確保するか、各地で課題となっている。

大分県宇佐市の資料館
大分県宇佐市の資料館
テレビ大分
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