自治体の大事な収入源となっている「資源ごみ」
回収した古紙やアルミ缶などの金属類などを売却することで得られる収入は、自治体によっては数億円にも上るといいます。

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しかし、近年、ごみ集積場所から「資源ごみ」が持ち去られる事案が多発。
環境省が行った調査では、全国1741市区町村のうち、約4割にあたる729市区町村が「持ち去り事案があった」と回答しました。

「サン!シャイン」は、ごみ持ち去りの現場を取材。自治体の徹底した対策と、それでも持ち去る人々の言い分とは…。

看板設置に抜き取り防止の防犯パトロールも

近年、ごみの持ち去りが増加しているという、京都府宇治市。

ごみ集積場所には、市が持ち去りの対策として住民と協力して設置した「持ち去り厳禁」の看板が。さらに、持ち去りを防ぐために、月に3回、市の職員がパトロールを行っているといいます。

宇治市・まち美化推進課 三島了 主任:
きょうは早朝の青色防犯パトロールに行ってきます。燃えないゴミの中から資源物を抜き取る者がいますので、その抜き取り防止の為に、今から防犯パトロール行ってきます。

警察と合同で住宅街をパトロールしていると、扇風機などの電化製品のコードを持ち去ろうとする男性の姿が。すかさず、職員が注意をします。

職員「これいくら位になるの?」
男性「200円くらいかな…100円くらい?50円、100円やな」
職員「で、たばこ一箱分くらいになったら中国人に渡すんや?」
男性「そうやね」
職員「中国人の連絡先とか分かるの?」
男性「知らん、知らん知らん」
職員「きょうもどこかで落ち合うつもりだった?」
男性「回っているだけ、誰でもええ」

集積場所から持ち去ったものを、面識のない中国人に売ってタバコ代を稼いでいるといいます。職員は男性の名前や住所を聞き、「次はこんなのじゃ済まない」と注意して解放しました。

パトロール以外にも、週2回、市の職員が住宅に出向き、自転車やフライパンなど持ち去りの多いごみを直接回収しています。

宇治市住民:
すごく助かりました。燃えないゴミの日に出すと、先に集める方が来てしまって。

「時間があればやる」月20万円の収入という人も…

19日、資源ごみの回収日だった東京・葛飾区を取材していると、自転車に大量のペットボトルが入った袋を乗せて、持ち去ろうとする男性に遭遇しました。
スタッフが走って追いかけ、声をかけると…。

取材スタッフ「これをどうするんですか?」
男性「回収ボックスにいれる、スーパーに持って行っちゃう」
取材スタッフ「区が回収する前に持って行ってしまう?」
男性「そう。きょう休みだから、休みのとき、時間あればやっているんですよ。じゃあ、変わるんで信号」

そういうと、制止も聞かずに走り去っていきました。
取材を続けると、今度は荷車のようなものに大量の資源ごみ山積みにしている男性が。再びスタッフが声をかけます。

20年ほど前から、ごみ集積場所から資源ごみを勝手に回収しているという男性。月10万~20万円程度の収入を得ていると話します。

男性「(今載せている分で)5000~6000円、量やんなくちゃ金にならないから、量やれば金になる。1kg200円くらい」
取材スタッフ「生活保護とかは?」
男性「これやるために切っちゃったんだ。本当はこれやりたくなかったんだけど…」

このような持ち去りに対し、葛飾区では貼り紙や看板などで持ち去り防止対策を行っています。また、葛飾区が交付しているステッカーを回収業者の車両に貼ることで、業者を装って持ち去る車と区別しているといいます。

葛飾区清掃事務所 久保克彦 所長:
区の信頼もありますので、持ち去りはなくしていきたいっていう、ところはありますけれど…。いたちごっこの部分もあるので。一生懸命パトロールとかをして、頑張っているというところですかね。

――対策の効果のほどは?
パトロールをやっても、相手が察知して逃げてしまう。場所を変えてしまうっていうのがあって。警告書(命令書)を出したとしても、そこではやらないで、他のところで抜き去りしているというところもありますので、なかなかうまく捕まらないっていうのが現状ですね。

組織的な持ち去りが増加

行政が頭を悩ます、資源ごみの持ち去り行為。自治体の収入には、どれほどの影響が出ているのでしょうか。

通常、自治体は「資源ごみ」を売却して収入を得ています。
例えば2023年度には、東京・杉並区は約4億円、栃木市は約1億1000万円もの収入を資源ごみの売却で得ているといいます。

資源ごみの売却で得られた収入の多くは、行政サービスに活用されていますが、合同でごみ収集を行っている埼玉県蓮田市と白岡市では、資源ごみの売却で得た収入をごみ処理施設の運営や収集業務の費用にあてているため、持ち去りで収入が減ると、ごみ処理業務が滞るなどの影響が出る可能性があるそうです。

ダイナックス都市環境研究所 山本耕平 会長:
影響はなかなか市民には目に見えにくいですが、全体的にはかなり大きな収入がありますので。20年ほど前に東京都で大規模な持ち去り問題が起きた際は、半分ほど(持ち去り)回収されていたという推計もあるくらいで、特に大都市では影響が大きいと思います。

――個人と業者が関わっているケースどちらが多いのですか?
問題なのは、組織的にやっているというところですね。個人でやっている方は昔からいらっしゃって、いくらたくさん集めてもそんなに回収できなかった。ところが、委託業者を装ったり、軽トラでどんどんつんでいくとか、組織的な持ち去りがすごく増えていて、大きな問題だと思います。

――そのような業者を逐次摘発することはできない?
リサイクルできるものは、法律上廃棄物ではないんです。再生利用に要するものということで、廃棄物処理法の規制から外れるんですね。だから、古紙しか扱えませんとか、鉄くずしか扱えないという業者は廃棄物は関係ないんですよ。でも、実際には他の廃棄物も入ってきますから、産業廃棄物の処理業の許可とか、他の許可も持っているんですけど、そういう意味でこれが完全に違法かどうかは(判断が)難しいですね。

――ごみ集積場所に出した時点で、所有権は自治体になる?
いや、ごみ集積場所に置いてあるだけでは、無主物といって所有権がない状態です。そうすると、これを持っていっても法律違反にならないものですから、自治体が知恵を絞って、ごみ集積場所に置いたら行政のものだという条例を作って、仮にそれを勝手に持っていったら窃盗罪に当たると、そういったことで検挙をするような条例を作ったところもあります。

それから、市が委託した業者以外持っていってはいけないという条例を作って、それ以外の業者がやっているのを見つけた場合は、罰金を取るという行政罰を科すとか。自治体によって色々な対策を取ってはいますが、取り締まりをするだけで相当な人件費がかかりますし、仮にやめさせたとしても行政の収入が増えるということには、なかなかならないので。継続が難しいというのが実態です。
(「サン!シャイン」 6月20日放送)