近年、人気が高まる「民泊」。大阪市内では、新築マンションをまるごと1棟「民泊」とする計画も進められている。
一方で、民泊をめぐっては、全国各地で地域住民とのトラブルも。
民泊が急増する地域で、いま何が起きているのか調査した。

■「民泊」は、5年ほどでおよそ1.5倍に増加している
大阪市・西成区にあるお好み焼き店。海外からの観光客に宿泊先を聞いてみると…近年、存在感が高まる、あのワードが…。
中国からの観光客:私は“民泊”を選びました。エアビーアンドビー(民泊予約サイト)で探しました。
「民泊」は、先月15日時点での届出住宅数が3万件を超え、ここ5年ほどでおよそ1.5倍に増加している。

■ホテル宿泊料金の相場が上がり、民泊に需要
街で観光客に話を聞いてみても…。
フランスからの観光客:ホテルの半額くらい。グループで一緒に泊まりたかったからホテルより民泊にした。
中国からの観光客:民泊です。
(Q:ホテルより快適ですか?)
中国からの観光客:はい!
多くの人が「民泊」を利用しているようだ。
需要の高まりについて民泊に詳しい専門家はこう話す。
阪南大学・松村嘉久教授:ホテル宿泊料金の相場がかなり上がってきている。(民泊は)一部屋いくらでとか一棟いくらで宿泊するんで頭割りすると料金が安い。

■全室民泊に使用される新築マンションも登場
そして、ついにこんな場所まで…
記者リポート:後ろに見えるマンションですがおよそ200室あり、すべて民泊に使用されるということです。
こちらの新築マンション。なんと1棟まるごと民泊として提供される予定。中では「天然温泉」なども楽しめ、さながらホテルのような施設のようだ。
その一方で、今月5日には、地域の住民たちが、計画の撤回などを求める署名を提出。
事業者は「複数回説明会を実施するとともに、管理体制について前向きな打ち合わせを継続している」などとしていますが、一部住民の反対は続いている。

■民泊「反対」の動きが広がる
こうした「反対」の動きは、ほかの地域でも…
記者リポート:ここは大阪市東成区の住宅街で民泊反対の紙が…。
一体、なぜこんなことに。専門家は、その背景についてこのように指摘します。
阪南大学・松村嘉久教授:大人数で1つの部屋に泊まってワイワイガヤガヤ騒げるっていうのは、ある意味『騒音』のもとになる。居住空間の中に滞在者が入り込むのでトラブルが多くなると思います。

■民泊の届出件数が1位の東京都内では
実際に、民泊の届出件数が1位の東京都内では、こんな事例も。
近隣住民:ガラガラとキャリーケースを引く音も聞こえて。
こちらは、FNNが住民から入手した映像。キャリーケースを手に、大勢の外国人らしき旅行客が移動する姿や、深夜になっても響く笑い声が。
治安の悪化の影響もあり、民泊反対の声があがっているようだ。

■「特区民泊」とはどういうものなのか
大阪でいま何が起きているのか?大阪市内を緊急調査した。
まずは、大阪市・此花区「西九条」エリア。街を歩いてみると、いくつもの建物で、「特区民泊」の表示が。「特区民泊」とはどういったものなのか。
阪南大学・松村嘉久教授:大阪市内に空き家がたくさんあるので、空き家を利活用して外国人を受け入れようと。背景には宿泊施設が2015年以降、大阪にくるインバウンドが急増したので、宿泊施設が足りなくなった。特区民泊を認可しようということで特区民泊をつくった。
通常の民泊は年間180日までしか営業出来ないのに対し制限がない「特区民泊」。
そのおよそ95パーセントが集中しているという大阪市。実際に、取材をしたエリアだけで49件の「特区民泊」が。

■地域住民は「騒音」に悩まされている
地域の住民に訪ねると、東京と同様、「音」が悩みの種となっているようで…。
民泊の近くの住民:ガラガラガラね。いつも大きな音して、荷物を持って。言葉が通じないから、なんか言いたいことがあっても相手に言えないでしょ。
(Q:注意したくてもできない?)
民泊の近くの住民:できない。
さらに取材班が出会ったこちらの男性は、まさに民泊が密集する場所に暮らしているという。
民泊が密集する場所に住む男性:こういう狭い地域に(民泊が)20個くらいあるんですよ。問題に対してちゃんと対応できるかどうか。

■騒音だけではなくたばこの吸い殻などにも悩まされる住民
男性は、不安を抱えながらも、共存を目指してきた。
民泊が密集する場所に住む男性:私が辞書引いて、中国語も書いてます。
貼られていたのは、外国語で書かれた注意喚起。
(Q:外国の方と共存のために?)
民泊が密集する場所に住む男性:そうそう。
しかし…
民泊が密集する場所に住む男性:(普段なら)10本くらいありますよ。
路地に落ちていたのはたばこの吸い殻。
民泊が密集する場所に住む男性:ここで座ってたばこ吸うんですよ。真向かいの人とか心優しき隣人が掃除するしかない。

■民泊オーナーと「協定書」を交わすも…
一方こちらは、大阪市・東成区の住宅街。1年前から反対運動を続けているという人に話を聞くことができた。
近隣住民:この角の建物が民泊されている家。一回(夜に)うるさいから言うて文句言うたことあんねんやけど、そしたらオーナーから午後10時までは騒いでいいですよって聞いてますって言われて。
住民によると、オーナーは中国人。コミュニケーションをとるのも困難な中で、男性らは、(去年)地域のルールを守ることを求める「協定書」を交わした。
オーナー側も、一度は理解を示したということだが…
近隣住民:守る理由も義務もないっていうのを急に言い出して。あとはもうやりたい放題です。
住民たちは、今後、火事などが起きないか、不安がつきないという。
近隣住民:住むなら別ですよ。(住むなら)お互いで歩み寄っていける部分もあると思うんですけど。安心できることがないですね。
大阪市内で起きていた「特区民泊」を巡るトラブル。専門家はいま、行政の働きかけが求められていると指摘する。
阪南大学・松村嘉久教授:苦情に対して反応がなかったら例えば特区民泊の認定を取り消すとか、特区民泊の制度そのものを10年経っているので見直さないといけないと思う。

■「民泊」に関する苦情件数は、この3年でおよそ4.5倍に増加
大阪市によると、「民泊」に関する苦情件数は、この3年でおよそ4.5倍も増えている。
民泊に詳しい阪南大の松村教授は、「不満を持っている人も多いと思うが、日本人は『近所トラブル』を避ける傾向。苦情を言える第三者機関がある仕組みづくりをするべき」と訴えている。
ジャーナリストの浜田敬子さんは、民泊によって不動産価格が高騰し、「住みたい人が住めなくなってしまう」と懸念を示した。
ジャーナリスト浜田敬子さん:民泊で物件をまわした方がオーナーは高収入を得られる。もともと住んでいた方に2~3倍の家賃を請求すると出ていかざるを得ない。結果的に不動産価格が高騰して、住みたい人がその地区に住めなくなってしまう。
不動産は誰もが買える仕組みになっているが、どういう用途で使うのか、特区民泊を活用しても、誰もが住みやすい地域をどうやって作っていくのかを考えないといけない。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年6月17日放送)
