高齢者介護を支える介護福祉士不足解消へ、国家試験不合格でも5年間働ける特例が争点となっている。現場では人柄重視で賛成の声が上がる半面、専門家は社会的信頼が得られなくなる可能性を危惧している。
不合格でも5年間は介護福祉士として登録OK
高齢化が進む日本だが、高齢者の生活を支える介護福祉士は深刻な人出不足が続いている。そこで重要なのが、外国人の介護福祉士だ。

介護福祉士は高齢者の日常生活や相談相手など、状況に応じた介護サービスを提供する介護のスペシャリストだ。
2017年度以降、介護福祉士の資格を得るには国家試験に合格することが必要になった。しかし経過措置として、養成施設を卒業した人は特例で不合格でも5年間は介護福祉士として登録OKとなった。また、それ以降も介護現場で働き続ければ、引き続き介護福祉士として働ける。
介護施設では資格を持っていない人でも働けるが、特例措置で介護福祉士として働いていることをどう思うか、街の方に話を聞いた。
街の人:
資格がなくても現場で実務を学んでもらい、従事してもらえればいい。人材不足はあると思うので。
街の人:
まず実践してもらって働いてもらいたい。試験受かった人は給料をよくして、受からない人はそれなりの給料に。そうすれば頑張って来年受けようとなるのでは。

社会福祉振興・試験センターによれば、特例の適用者数は日本人・外国人含め、2024年度までで累計8033人にのぼる。日本介護福祉士養成施設協会の調査では、2023年度までの7年間に養成施設を卒業した外国人留学生は8346人で、その内卒業時に国家試験に合格したのは、3284人だ。残る5000人超が特例措置の対象だった。
国家資格を持っていない外国人が介護施設で働いている状況には、こんな声も上がっている。
街の人:
日本語もしゃべれて、教育を受けてこないと難しい。介護の現場が追いついてない、切迫したところはあるが難しい。介護の質が落ちたり、ホーム内で問題が起きたら本末転倒。
イット!は、介護施設で働く特例措置を受けている外国人を取材した。

8年前にネパールから日本にやってきたナビナさんは、養成学校を卒業した後国家試験に落ちたため、現在特例措置で介護福祉士として働いている。
ケシ ナビナさん:
小さい時からおじさんとおばさんと一緒に住んでいました。ネパールでは介護の仕事がないので、日本で働きたいと思って。
国家試験に落ちた外国人が介護することに一部で不安の声があることについて、どう思っているのか聞いた。
ケシ ナビナさん:
試験に不合格でも、介護の勉強は2年間したので働くことができます。介護の漢字はすごく難しい漢字がいっぱいあるし、すごく勉強しても落ちる事があります。今後も介護福祉士の資格があってもなくても、ずっと日本で介護で働きたいと思います。
実際に介護を受けている人は、どう感じているのか。

介護を受けている人:
素晴らしい方です。初めてです、こういう方。丁寧なところと話しやすいところ。自分を隠さないところが素晴らしい。
ナビナさんが働く会社の代表は、試験に不合格でも働ける状況について、こう話している。

撫でし子株式会社・加藤英樹代表:
一言で言うと賛成の立場です。もちろん試験に受かる事は凄く重要だが、それ以上にこの世界に必要な人柄と人間力が築かれることの方が、現場では大切。現場として外国籍の方が、非常に良い働き方をしている現実を毎年見ている。(資格の有無で)給料の面は差を設けていないです。
人柄重視の一方社会的信頼を危惧
青井実キャスター:
資格ではなく現場では人柄だと思う一方で、国家資格は何なのかとなってしまいますね。

SPキャスター柳澤秀夫さん:
ランク付けするということは可能なのかもしれませんが、でも実情、現場がどうなっているかということに則した格好で、資格試験というのは考えても良いと思います。
青井キャスター:
厚労省に聞くと、こんな答えが返ってきました。特例措置は2026年度末の卒業生までで、各団体から措置の延長・廃止、どちらの意見も貰っているので、専門委員会で検討を進めたいということです。専門家は国家資格が必要な職業にも関わらず、特例措置があることについてこう話します。

東洋大学・高野龍昭教授:
専門的な養成課程を修了した上で国家試験に合格することを最低限の要件としなければ、社会的信頼もこれから得られなくなる。(介護福祉士の)処遇や社会的信頼感が引き上がれば、裾野に入ってくる人たちもこれから増えるだろう。
日本が高齢化する中、人手不足も進んでいる。今後、介護福祉業界はどうなるのだろうか。
(「イット!」6月13日放送より)