週末には東北地方も梅雨入りの可能性がある一方、来週は関東地方などで35度以上の猛暑日が予想されるなど梅雨明けを思わせる状況が予想される。ただ、今年のような梅雨は、東北・北陸などで豪雨災害に注意が必要だ。
来週、東日本などで猛暑になるのは夏の太平洋高気圧が強まるからだ。これによって梅雨前線も北日本へと押し上げられてしまう。ただ、もう梅雨明けか?というと太平洋高気圧がそこまでは強くない。このため、梅雨前線が東北付近に停滞することが多くなる。意外かもしれないが、北陸・東北での梅雨の豪雨災害は、過去事例からも多い。
北陸・東北の梅雨の豪雨は、九州での梅雨の豪雨とよく似ている。九州では梅雨の時期に豪雨災害がよくあるが、これは太平洋高気圧の縁を時計回りに流れる気流が海からの大量の水蒸気を運んで、線状降水帯を発生させたり、梅雨前線を活発化させるためだ。実は、北陸・東北でも、全く同じ仕組みで、太平洋高気圧の縁を回る気流が列島を迂回して日本海から流れ込んでくる。
過去の主な事例を以下に示す。
●7.11水害(1995年)
梅雨前線活発化により新潟県・長野県・富山県で集中豪雨となり、糸魚川市の姫川が氾濫。妙高市でも河川氾濫。各地で土石流や地滑りが多数発生。
●8.4水害(1998年)
梅雨前線活発化により新潟市で1時間雨量97ミリ。市内広範囲が冠水し、都市部の排水能力に限界があることを示した豪雨。
●2004年新潟・福島豪雨
梅雨前線活発化により2か月分の雨量がわずか1日で降ってしまった。死者16名。急激な河川の増水や氾濫によって避難が間に合わなかった。
●平成23年7月新潟・福島豪雨(2011年)
梅雨前線が活発化し、線状降水帯が発生したとみられる。十日町市で1時間雨量が121ミリ。
●令和4年8月豪雨(2022年8月東北・北陸豪雨)
戻り梅雨により新潟県と山形県に線状降水帯が発生。大雨特別警報発表。最上川、荒川、五十嵐川などが氾濫。土砂災害が多数発生。
●令和5年7月豪雨(2023年7月秋田豪雨)
梅雨前線が長期間停滞し、72時間雨量が400ミリを超えた。河川が氾濫し、秋田駅周辺などが広範囲で浸水。
地震などによる津波から身を守るには避難することが一番であるが、大雨災害については何が最善か?その人の置かれた状況によって答えが異なる。避難は事態が切迫する前に行うべきで、事態が切迫してからの避難は命がけになってしまい、本末転倒である。道路が冠水してからの避難は、身体を流される危険や穴などに落ちる危険がある。そもそも自宅などが土砂災害や浸水などのリスクがあるかを把握しているか?が重要で、リスクが無ければ、命がけで避難所に向かう必要はない。逆に、リスクがあれば、早めに行動すべきで、高齢者や避難にサポートが必要な方がいれば、避難行動を早めなければならない。
こういったことは災害時に考えるのではなく、平常時に考えてほしい。災害時は根拠なく自分だけは大丈夫だという心理が働くためだ。その平常時に検討する材料がハザードマップだ。
太平洋高気圧が強まってくると、猛暑になる地域がある一方で、違う場所では大雨も懸念される。ハザードマップを確認して、ご家族と避難について話し合っていただきたい。
執筆:三井良浩(フジテレビ気象センター)