鹿児島県の公立高校入試では、不合格者に対し中学校が事前に電話連絡する「不合格者の内示」という独特の制度がある。合格発表当日、「電話がかかってこないでほしい」と祈る受験生の気持ちは、県外の人には想像しづらいかもしれない。実はこの制度、全国で鹿児島県だけが採用している特殊なものだ。その唯一の制度が見直される可能性が出てきた。

全国で唯一の「不合格者への事前連絡」

鹿児島県教育委員会の地頭所恵教育長は6月11日の県議会で、「不合格者の事前情報提供はこれまでも検討してきたが、今後、中学校や市町村教育委員会などと協議しながら、情報提供の方法を検討していく」と述べ、現行制度の見直しを検討する方針を明らかにした。

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この「不合格者の内示」とは、公立高校の合格発表が正式に行われる午前11時より前に、高校側が不合格になった生徒の情報を希望する中学校に提供し、中学校から生徒に電話などで事前に連絡する仕組みだ。原則として公立高校の合格発表は、高校側がウェブ上で一斉に発表している。

県教育委員会によると、この制度の目的は不合格となった生徒への速やかな支援にあり、県内のほとんどの中学校が情報提供を希望しているとみられる。しかし、このような方法を採用しているのは全国で鹿児島県のみという状況だ。

伝達ミスが制度見直しの契機に

見直しの背景には、2025年3月に起こった受験番号の伝達ミスがある。高校から中学校への情報伝達に誤りがあり、本来不合格だった生徒に連絡が来なかったケースが発生、その後の確認で不合格を知った生徒や保護者に対し、高校側が謝罪する事態となった。

この制度は長年、鹿児島県の高校入試の特徴として続いてきたが、今回の伝達ミスを機に、その在り方が問われることになった。電話が来ないことを「合格のサイン」と捉える特殊な心理状態を生み出す現行制度に対し、より公平で明確な情報提供方法への転換が模索されている。

問われる受験生への気配りと情報伝達の在り方

「不合格者の内示」制度は、不合格となった生徒へのケアを迅速に行うという点では一定の意義を持っている。しかし、合格発表前の電話連絡を不合格のサインとする方法は、受験生に独特の精神的負担を強いる側面もある。

鹿児島県教育委員会が検討している新たな情報提供の方法が、どのような形になるのかはまだ明らかになっていない。しかし、受験生の心情に気を配りながら、正確な情報伝達を確保するシステム構築が求められている。

長年続いてきた鹿児島独自の制度がどのように変わっていくのか、今後の展開が注目される。

(鹿児島テレビ)

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