サントリーホールディングスは11日、再生可能エネルギーで地下水を電気分解して得る「グリーン水素」の製造・販売の参入を発表した。

二酸化炭素排出ゼロのグリーン水素は地産地消が可能で、企業の脱炭素化やエネルギー供給の新たな選択肢として期待されている。

国内初「グリーン水素」の製造販売に参入

清水俊宏記者:
東京・港区のこちらの会場では、サントリーHDから新たなビジョンの発表があります。テーマは水素です。

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2050年の脱炭素社会の実現に向け、必要不可欠なCO2を排出しない次世代エネルギー、水素。

サントリーHDは11日、再生可能エネルギーだけを使う「グリーン水素」の製造販売に参入することを発表。国内で初めて製造から販売までを一貫して手がける。

サントリーHD 藤原正明 常務執行役員:
水と生きるサントリーの水から生まれるエネルギー、これが水素であると。事業活動とサステナビリティをしっかり融合した新たな価値を作り出す。このグリーン水素の取り組みを加速したい。

今回活用するのは、2025年の秋に稼働予定の国内最大級の水素製造設備「やまなしモデルP2Gシステム」。

ここでは、天然の地下水を再生可能エネルギーの余剰電力で電気分解。取り出されたグリーン水素は必要に応じて、電気や熱エネルギーとして活用する。

年間のCO2排出削減量は1万6000トンにもなる。

サントリーはまず、このグリーン水素を天然水工場での熱殺菌や、蒸留所でのウイスキーの「直火蒸溜」などに使うことを検討している。

2027年以降は協業パートナーなどと共に、水素の製造・販売や、新たなビジネスの創出など様々に展開していく方針だ。

サントリーHD 藤原正明 常務執行役員:
グリーン水素は地産地消というイメージをすごく持っている。そのエリアで太陽光と水があればどこでも作れる。地域社会にすごく貢献するエネルギーなるんじゃないかと期待して活動していきたい。

「グリーン水素」でエネルギーの地産地消が実現

「Live News α」では、日本総合研究所チーフスペシャリストの村上芽さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
今回の試み、どうご覧になりますか?

日本総合研究所チーフスペシャリスト 村上芽さん:
気候変動対策では、化石燃料に代わるエネルギー源をどう活用していくかが重要です。

水素は、燃やしたときにCO2を排出しないことから、クリーンなエネルギーとして期待されてきましたが、サプライチェーンの構築が課題でした。

今回の試みにように、グリーン水素を作ってすぐ近くで使うことができれば、エネルギーの地産地消が実現することになります。

堤 礼実 キャスター:
グリーン水素の「グリーン」とは、どういう意味があるのでしょうか?

日本総合研究所チーフスペシャリスト 村上芽さん:
水素はその製造方法によって、グレー、ブルー、グリーンに分かれています。再生可能エネルギー由来の電気を使って水を分解することが「グリーン水素」の条件になります。

「グリーン水素」は製造過程でもCO2の排出がゼロのため、国も「グリーンイノベーション基金」という事業を通じて支援してきました。

堤 礼実 キャスター:
企業がどんなエネルギーを使うのか、これから変わっていくのでしょうか?

日本総合研究所チーフスペシャリスト 村上芽さん:
はい。今回のケースでは、元々水資源が豊富な山梨県で、再エネの発電にも余力があるという環境を活かした取り組みになっています。

企業から見ると、高い環境目標を掲げて工場で気候変動対策を進めたくても、熱の需要に対して、CO2排出量をゼロに近づけることは、なかなか難しいという現実がありました。

企業が再生エネを活用した「グリーン水素」という選択肢の持つ意味はとても大きいです。

堤 礼実 キャスター:
こうした取り組みが広がっていくと良いですね?

日本総合研究所チーフスペシャリスト 村上芽さん:
はい。具体的に飲料の製造工程で水素の活用が進むと、色々な波及効果もあるかもしれません。

何より、水と再エネがあれば、エネルギー供給というビジネスが可能だということを示すことになります。今回は、企業が工場の生産能力を高める際に、グリーン水素が調達可能な地域なのかどうかが、考慮される可能性があると考えられます。

もう一つ、再エネで作った電気が余ることもありますが、そうした電気の需給の調整役としても
期待することができます。
(「Live News α」6月11日放送分より)

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