新型コロナウイルスの影響で中止となった、岩手・山田町の山田祭。
山田祭は海上の安全と大漁を祈願し、漆塗りのみこしが海を渡る大杉神社と、金色に輝く重厚な暴れみこしで知られる山田八幡宮、2つの神社の例大祭からなる伝統の祭り。

東日本大震災にも負けず続けられてきた祭りの中止を、町民がどのように受け止め、当日をどう迎えたのか取材した。

9月21日、山田町の大杉神社で行われた例大祭。
疫病退散を願い、地元の神楽が邪気を払う「清祓い」をした。

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例年ならばこの日は、町が祭り一色になるはずが、関係者だけが出席して、神事のみ執り行われた。

担ぎ手:
毎年やっていることなのでショックは大きいですし、この日のためにみんな頑張ってやってきているので

町民:
普段お正月来れなくても、お祭りだけは帰ってくるって、楽しみにしている子供たちとか人たちがいっぱいいらっしゃるので、すごく残念です。でも仕方ないですよね

東日本大震災で神輿などが流れ…

大杉神社はこれまでにも数々の苦難があった。

東日本大震災では、山田八幡宮は無事だったが、海の近くにあった大杉神社の本殿と神輿が津波に流された。
震災の年と翌年の祭りでは、担ぐことができず、心の拠り所を失うほど大きな喪失感があった。

修復に出された神輿は、2014年にようやく復活。
大杉神社の神輿会のメンバーは、担げなかった3年分の喜びを分かち合った。

担ぎ手:(2014年)
一番の楽しみが祭りだと思うので、祭りが帰ってくる感じがしていいんじゃないですかね。復興に役に立てばいいんじゃないですかね

祭りは、復興へと進む人々の活力となり、バラバラになった人々をつなぐ大きな力となっていた。

早い段階で中止を決定

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻となり、震災後初めて中止となった。

山田八幡宮・大杉神社 佐藤明徳宮司:
5月末日に(祭りを)やらないという決定をしました。なぜかというと、終息する見込みがないなという感じで。そうでないと東京から来る方がたくさんいるんで

担ぎ手:
みんなの安全面的にも仕方がないかなと思ったんですけど、結構ショックが大きいですね

中止は、町の経済にも影響がある。
飲食店の「グルメハウスシンコー」では、例年、祭り期間1日の売り上げが普段の3倍ほどにもなるため、祭りの中止は大きな痛手となっている。

グルメハウスシンコー・山本茂雄さん:
コロナでそうじゃなくても(売上が)下降気味なので、お祭りがあれば、少しはまたそこから盛り上がるのかなと思ったんですけど、早いうちに中止になって残念

中止にショックを受けながらも神輿会のメンバーは、できることをしようと、神社の鳥居に飾るしめ縄を例年通り作ることにした。

大杉神社神輿会・上林善博会長:
いつもしている行事なので、祭りがなくてもこれは1年の行事としてやってました

大杉神社の神輿会では、3年前から自分たちで作るようになった。
材料は沿岸らしく漁業で使うロープで、さらしをひと巻きひと巻き、力を込めて巻いていく。

2週間以上かけて制作した、長さ約4メートルもあるしめ縄。
神社の鳥居など5カ所にかけていく。

大杉神社神輿会・五十嵐康裕さん:
やっぱり大杉神社が大好きだから、どうせ飾るんであれば、それこそカッコいいものをつけたい

毎年、より良いものを作ろうと心掛けていて、2020年はこれまでよりも太い立派なしめ縄が飾られた。

大杉神社神輿会・五十嵐康裕さん:
いいんじゃねえの、これで祭りがあれば最高だけどね。残念

2021年は山田祭を開催できると信じて

迎えた神事の日。
境内には、神輿会のメンバーなど続々と参拝する人の姿が見られた。

参拝した担ぎ手:
いつも拝んでいたので、来年お祭りできればまた頑張りたいなと思ってきました

参拝した担ぎ手:
来年、いつも以上に大暴れできればいいなと思います

神輿はなくても、町民が祭りを愛する気持ちが途絶えることはない。2021年こそは開催できることを信じて。

神輿会の人たちは、しめ縄づくりのほかに神社の周りも清掃した。
ただ神輿を担ぎたいのではなく「町のために」という思いがそこに現れている。

(岩手めんこいテレビ)