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真夏の午後、氷の音とともにふと浮かぶ味があります。


それは、昭和・平成・令和と時代を超えて、どこか懐かしく、心と体に染み渡る味、「氷茶(こおりちゃ)」です。


毎年、夏が来るたびに思い出され、お客様に選ばれてきた一杯。



森半のロングセラー商品「氷茶」が誕生して、今年で97年を迎えました。


市場の変化に応えながら、変わらぬ価値を守り続ける「氷茶」。その歩みと、今年のリニューアルに込めた想いを、代表取締役 森下康弘取締役社長 西坂太量販営業部 部長 黒田大史テクノセンター長 立開健司原料調達部 三好恭平 の5名にインタビューし、当時の資料と共に振り返ります。

根強いロングセラー、「氷茶」とは

「氷茶」は、1928年(昭和3年)より発売された水出し玉露・煎茶で、氷と水でじっくりと抽出することで、ビタミンCを豊富に含み、お茶本来の旨味や甘味を引き出した、すっきりとした味わいが特徴の清涼飲料です。現在も、水出し専用茶としてティーバッグタイプで販売されています。


「氷茶」誕生のきっかけ


―「氷茶」はどのような時代背景や想いから生まれたのでしょうか?


森下代表:「氷茶」の誕生は、お茶の消費が低迷していた当時の時代背景にあります。江戸時代、夏場の飲み物と言えば、「緑茶」「甘酒」「麦湯(麦茶)」が主流でしたが、明治時代後半からサイダーや氷菓など冷たい嗜好飲料が登場し、昭和初期にはお茶の消費が徐々に低迷していきました。


そんな中で「夏の茶の間に、緑茶を取り戻したい。」という茶業界の想いから生まれたのが、玉露を氷と水でじっくり抽出する「氷茶」でした。当時、「氷茶」は商品名ではなく、夏の販促施策の一つとして名づけられたものでした。


冷たい嗜好飲料に押されがちだった茶の存在感を、玉露の持つうま味と「置いておくだけで美味しい冷たいお茶」という新しい提案で再び人々の生活に根付かせようとしたのです。


この活動の中心人物となったのが、共栄製茶の初代代表 松本忠義 です。


―当時、松本忠義さんはどんな販促を行っていたのでしょうか?


森下代表:1927年(昭和2年)頃から自ら執筆した記事を雑誌などで発表し、「氷茶」の魅力を積極的に発信していました。京都府茶業組合連合会議所(現在の京都府茶業会議所)が昭和初期に発行した資料『夏のお飲みもの』には、玉露茶葉を氷水で抽出する「氷茶」のレシピが掲載されています。


当時の資料:京都府茶業組合連合会議所(現在の公益社団法人京都府茶業会議所)


森下代表:また、三浦政太郎博士や辻村みちよ博士の研究により、緑茶にはビタミンCが豊富で低温抽出することで、その成分を壊さず摂取できることが明らかにされ、この研究は「氷茶」の効能や価値を裏付けるものとなり、「氷茶」への関心を一層高めました。


ちなみに、大正時代の大阪を舞台にした朝ドラ(NHK連続テレビ小説)にも「氷茶」が登場するほど、大阪では「氷茶」が身近な存在として、浸透していました。

夏のお茶文化と戦時下の苦境


― 「氷茶」が夏の定番として受け入れられてきた中、その後どのような展開を見せたのでしょうか?


立開取締役:1920年(大正9年)、阪急マーケット(現:阪急百貨店)開設当初から森半(共栄製茶)はお茶の販売を行っていました。当初の資料を見ると、1927年(昭和2年)の夏には、百貨店の販促資料に「ビタミンCを保てる涼味と栄養に富む『氷茶』の作り方」として、レシピや楽しみ方を紹介していることが分かります。

しかし、太平洋戦争が始まると状況は一変。玉露や碾茶は贅沢品とされ、宇治の多くの茶園が食料増産のために転用されるなど、販促は一時中断を余儀なくされました。


当時の資料:氷茶のつくり方


それでも戦後、「氷茶」は夏のギフト商品として復活し、涼しさと高級感を兼ね備えた商品として、再び人々の元へ届けられました。


当時の資料:1986年のギフトカタログ



「氷茶」の名を守る商品登録


立開取締役:戦後、「氷茶」の商標登録申請を行いましたが、最初の申請では「氷を入れて飲むお茶」と誤解されるおそれがあるとして、認められませんでした。


しかし、松本さんが戦前から積み重ねてきた販促活動や広告、記事などの資料を整理し、森半の氷茶として再申請を行った結果、1981年に商標登録が正式に認められ、その名を守り続けることができました。


当時の資料:阪急百貨店「氷茶のいれ方」

時代と共に変化する売り方


―昔と今とで商品の大きな変化はありますか?


立開取締役:発売当初は茶葉をそのまま詰めた商品でしたが、より手軽に楽しんでいただけるように一煎分ずつの小分けパックへ、さらに現在はティーバッグタイプへと進化しています。急須で淹れる機会が減っている現代に合わせ、忙しい日々でも簡単においしい一杯を楽しんでもらえるよう工夫を重ねています。


―販売チャネルも変わりましたか?


立開取締役:はい。2013年頃からは量販店(スーパーマーケットなど)でも販売を開始し、百貨店向け商品だけでなく、より多くのお客様に手に取っていただけるようになりました。市場の変化に応じて、商品の仕様や販路を柔軟に変えてきたことがロングセラーの秘訣だと思います。


リニューアルの変遷



2025年リニューアルした量販店向け「森半 氷茶」


2025年リニューアルした森半 氷茶


—今回のリニューアルで特に注力したポイントは何ですか?


黒田部長:

味わい、水色、時短、そしてマイボトルでの持ち歩きを重視しました。百貨店向けの氷茶と量販店向けの氷茶では原料が異なりますが、今回は百貨店の味わいに近づけるため原料を見直し、抹茶を加えて鮮やかな水色と抽出性を向上させました。


三好取締役:

量販店向け商品でもあるため、百貨店の原料に味わいや水色は近づけつつ、価格を抑える工夫をしました。百貨店仕様より旨味や甘味は控えめですが、深蒸し茶をベースに抹茶を加え、短時間でもしっかりとした味と色を実現しています。


西坂社長:

これまでの氷茶は、水200ml表記で作り方を記載していましたが、マイボトル文化の広がりに合わせ、500mlでも作れる仕様にリニューアルしました。環境に優しく、美味しさと手軽さを両立した商品提案です。また、これまでは夏限定での販売でしたが、近年暑い夏が長く続く傾向にあり、冷たいお茶のニーズも年々高まっています。そこで、氷茶は季節を問わずお楽しみいただけるように夏限定から通年販売にしました。


当社オリジナルボトルで持ち歩きも便利


—今回のリニューアルでは、どんなコンセプトで、どんな方に楽しんでいただきたいですか?


黒田部長:今回の氷茶は、 「リッチカジュアル」をコンセプトに、自分へのご褒美として、価格を抑えつつも、質の高いお茶を提案することに挑戦しました。


パッケージには商品登録当時の氷茶の崩し字を採用し、読みやすく改良しました。また、涼し気なターコイズカラーを復活させ、昔の資料で使われていた「涼味溢るる」「香味豊かなる氷茶」という表現も現代風にアレンジして氷茶の文言として追加しています。





—新しい味わいを作るうえで苦労した点はありましたか?


三好取締役:夏場は水出し茶市場が活性化し、各社が参入してくるため、香りと水色のバランスが常に課題です。

香ばしさを出そうとすると水色が濁り、水色を重視すると香りが弱くなるという相反する要素を調和するのも難しかったですね。また、原料調達の面でも、限られた時期にしか手に入らない茶葉を使うため、コストや入札の調整にも苦労しました。


—その課題をどのように解決されたのですか?


三好取締役:

百貨店向けの氷茶と同じく静岡の深蒸し煎茶や、抽出性の高いお茶を選び、抹茶と深蒸し茶を組み合わせることで、鮮やかな水色を演出しました。深蒸し茶も火入れの強いものを使用し、香りも立つように工夫しました。香りと水色という相反する要素をバランスよく実現し、まさに“いいとこどり”の仕上がりを目指しました。


—今後、氷茶のブランド価値やファンづくりのために、どのような取り組みを考えていますか?


黒田部長: 氷茶の専用ホームページを開設したいと思っています。商品パッケージにQRコード付きの冊子を入れ、裏面では伝えきれない魅力や飲み方、ティーペアリングの情報をスマートフォンで手軽にご覧いただけるようにしたいと考えています。


立開取締役:

前半にお伝えした通り、氷茶には長い歴史がありますので、その歴史をしっかり発信し、多くの方にその価値を知っていただきたいと思います。


西坂社長:

氷茶は1杯あたり75円前後という手頃な価格で、美味しいお茶を楽しんでいただける商品です。お客様の声をしっかり聞きながら、改善を続けていくことが何より大切だと考えています。また、情報発信は紙媒体に頼るのではなく、SDGsの観点からもデジタルを活用することが効果的だと感じています。


森下代表:『氷茶』100年に向けて、このブランドは、見た目をおしゃれにするだけでは売れません。伝統の上に進化を重ねた「氷で抽出する氷茶」という商品を、共に開発いただける人たちと一緒に、より深く作り込んで行ければと思います。

挑戦や失敗も必要なプロセスで、それらを通じて初めて価値が生まれます。改善を続けて、氷茶の魅力をさらに広げていきたいです。




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