コメ不足が鹿児島の主要産業である焼酎製造に暗い影を落としている。県内の酒造会社は今シーズンの仕込みを前に、原料となる加工用米の確保に苦慮し、「減産や休止、値上げを検討せざるを得ない」と危機感を募らせている。
「加工米が非常に足りなくなっている」焼酎製造の危機
鹿児島県酒造組合の濱田雄一郎会長は「加工米が非常に足りなくなっている。同時に価格が暴騰している。加工米が確保できない状況に陥っている」と厳しい現状を語る。濱田会長はいちき串木野市の濱田酒造の社長でもある。
鹿児島県の特産品である芋焼酎と黒糖焼酎は、その製造工程において加工用のコメを使用する必要がある。県内の酒造会社は例年7月から8月中旬にかけて今シーズンの焼酎の仕込みを行うが、多くの企業がこの加工用米をまだ確保できていないという。

原料価格の高騰で厳しい選択を迫られる製造業者
さらに深刻なのは価格の高騰だ。濱田会長によれば「2025年は2倍〜3倍(去年比)に価格が上がっている状況」だという。この影響は製造現場にも及んでおり、「生産を減らすか、休止するか、こういう声も(酒造会社から)聞こえてきている」と明かす。

他の物価上昇も重なり、焼酎の値上げも避けられない見通しだ。「他の物価も上がっているので、どうしても価格転嫁せざるを得ない」と濱田会長は述べる。しかし同時に「ビール、ウイスキーなど、ほかのお酒との競争もあり、簡単に値上げすることは難しい」という難しい立場にも触れた。
国の備蓄米放出に期待しつつも、長期的な課題も
この状況を受けて、小泉農林水産相は6月4日、備蓄米を加工用米としても放出する考えを示している。濱田会長はこの方針を歓迎しながらも、業界の将来を見据えて「小泉農水相の発言には期待している。しかし、我々はあと1、2年やればいいのではない。これから先、続けたいと思っている」と長期的な視点の必要性を訴える。

また、農家の生産意欲を削がないよう「(価格が下がりすぎて)生産体制が維持できないことになるのも非常に怖いところ」と慎重な姿勢も示した。
鹿児島の焼酎業界は、これまでの物価高に加え、加工用米不足という新たな困難に直面している。地域の誇りであり主要産業でもある焼酎製造の行方に、地元の関心が集まっている。
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