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プレスリリース配信元:公益財団法人世界自然保護基金ジャパン

アメリカウナギの取引が世界的に急増、国内蒲焼のウナギ種別調査でも4割を占める

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)と中央大学(東京都八王子市、学長:河合 久)の白石広美・海部健三は共同で、2025年6月4日(水)に、絶滅が懸念されるウナギの取引や流通に関する最新のデータや調査結果等をまとめたファクトシート「ウナギ類の資源管理・流通の現状について」を発表しました。本ファクトシートでは、近年需要が高まり、違法漁業等の懸念も指摘されているアメリカウナギを含むウナギ類について、中央大学による日本市場での最新の調査結果と、関連する国際的な動向や課題を紹介しています。
ファクトシートのダウンロードはこちら(全4ページ、2MB)
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20250602ocean01.pdf



【ファクトシートの要旨】
ウナギ類は、世界各地で消費されている多くの種で資源の減少が深刻な状況にある。特にニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギはいずれも絶滅危惧種に指定されているにもかかわらず、IUU(違法・無報告・無規制)漁業や違法取引が後を絶たない。ウナギの最大の消費国の一つである日本には、採捕、養殖、流通における責任ある対応が求められる。また、資源の持続的な利用に向けて、関係国・地域による連携が不可欠。





中央大学によるウナギ蒲焼の種別調査結果
2024年に日本国内の小売店で販売されている133点のウナギの蒲焼について、DNAを用いて種を判別。約6割がニホンウナギ、約4割がアメリカウナギであった。今回、国内7都市で集めたサンプルを用いた調査によって、日本で流通するウナギの種別について初めて把握。日本で販売されているウナギ製品に、アメリカウナギが多く含まれていることを確認した。

アメリカウナギ(カナダ産)の課題
2010年代前半のニホンウナギのシラスウナギ(稚魚)の採捕量減少や、ワシントン条約によるヨーロッパウナギの国際取引規制により、アメリカウナギの需要が世界的に高まり、特にカナダでは近年、違法漁業が急増。カナダで許可されているシラスウナギの採捕量約10トンに対し、2022年には約43トンが香港に輸入されるなどの事態に。規制強化の動きとその効果が注目される。

アメリカウナギ(カリブ海諸国産)の課題
アメリカウナギの養殖需要の増加を受け、ハイチ、ドミニカ共和国、キューバなどのカリブ海諸国でもシラスウナギの採捕や輸出が始まる。その多くは北米経由で香港に輸出され、そこから東アジアに再輸出されているため、実際の取引状況が不明瞭。2022年にはハイチから100トンものウナギの稚魚が香港に輸入された記録があるが、政情不安の影響もあり、実態把握が難しい。



■担当者のコメント
中央大学 法学部 教授 海部健三
ウナギの仲間は16種あり、南極大陸を除く全ての大陸に生息しています。世界各地で漁獲され、国際的に取引されていますが、その需要の中心は東アジアにあります。日本を含む東アジアにおけるウナギの消費は、在来種であるニホンウナギだけでなく、国際貿易を通じてさまざまな国・地域の生態系や社会に影響を与えています。そしてその結果、ウナギの仲間全種をワシントン条約によって保護しようという提案が、ヨーロッパで準備されています。鰻料理は将来世代に繋ぐべきとても素晴らしい文化です。その一方で、ウナギの消費が他国に与えている影響についても、我々は目を向けるべきでしょう。






中央大学 研究員 白石広美
私たちが普段目にするウナギの蒲焼は、見た目ではどの種なのかを見分けることができません。そのため、気づかないうちにさまざまな種類のウナギを食べている可能性があります。しかし、種によって資源の状況や取引の実態は異なり、中には違法な漁獲や流通が問題となっているケースもあります。「丑の日」は、ウナギに注目が集まる特別な時期です。この機会に、価格や味だけでなく、資源管理の問題や取引のあり方といった、消費の先にある課題にも目を向けていただけたらと思います。





WWFジャパン 海洋水産グループ 植松周平
日本でのウナギ人気は依然高く、日本は世界のウナギの消費をけん引している国の一つです。我々一人ひとりが、他国での不透明で不適切な取引や、IUU(違法・無報告・無規制)漁業に加担しないために、日本政府やウナギを調達する企業にはしっかりとした対策を期待します。今年の12月より、水産流通適正化法において日本国内で採捕されたシラスウナギが対象になり、トレーサビリティ向上が期待されますが、国内親ウナギや輸入ウナギは未だ同法の対象外であり、改善が必要です。また、ウナギの資源管理を効果的に行なうための条約に沿った地域漁業管理機関の設立や、国際基準に準拠したトレーサビリティの仕組みの確立が必要です。日本の食文化を将来世代に受け継ぐためにも、皆で知恵を絞っていけたらと考えています。






ご参考
・中央大学法学部 海部研究室
https://kaifu-lab.r.chuo-u.ac.jp/wp/
・WWFジャパンウナギに関するウェブサイト
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/5977.html

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