「IBD」という言葉を聞いたことはあるだろうか。「IBD」とは病気の一種で日常的に繰り返す下痢や腹痛、血便などの症状が特徴だ。指定難病の一つで、病気の原因は分かっていない。若年層の発症が多く、全国で40万人の患者がいると推定されている。安倍元首相が患っていた病気としても知られている。しかし、認知度は低く、そのため勤め先から理解を得られなかったりする事もあるという。そんなIBDを多くの人に知ってもらおうと取り組む、石川県金沢市の医師の活動にスポットをあてた。

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身近に潜む『IBD』と言う病気

石川県金沢市片町2丁目の松田小児科。ここに併設されているのが「消化器IBDクリニック」だ。

「ここが内視鏡室。まだ全然使っていないですけど。」と話すのは、石川県内で2人しかいないIBDの専門医、松田耕一郎医師だ。

松田医師は、6月2日、70年前から代々続く小児科に、IBDなどを診察できる専門のクリニックを併設し、リニューアルオープンした。

松田医師は、「IBDクリニックという名前にするとIBDってなんだというのを若い人たちはスマホで調べたりしますよね。最初は職員から、反対されましたけど、認知度を上げないと色々不幸になる人たちがいるので。」と、設立の理由を話す。

若年層に増えている『IBD』全国で40万人はいるという指定難病

若年層に増えている「IBD」。全国で40万人の患者がいるとされる指定難病だ。IBDとは炎症性腸疾患の略で、潰瘍性大腸炎とクローン病2つの疾患を総称した病名。

どちらも腸を中心とする消化管粘膜に炎症が生じる疾患で激しい腹痛、血便、1日に数十回の下痢を引き起こすこともある。

原因は不明で、誰にでも起こりうる病気だという。しかし、調査によるとIBDについて知っている人は人口の1割にとどまっているそうだ。

一方、この病気は継続的な治療や周囲からの理解があれば、大きなハンデを背負わずに日常生活が送れると松田医師は強調する。

松田医師:
周りの理解があれば通常に生活ができる、学習ができる、仕事ができるっていうふうな理解があれば、より良い生活になるかと思います。例えばトイレの近くに教室の一番後ろの出口の近くにすることで配慮してもらうとか和式トイレで苦労する方もいるので洋式トイレに変更してしまうことも大事。

しかし、広く知られていない病気であるために様々な弊害が生じていると言う。松田医師は「どんな病気かわからないってなると、人ってわからないことに対してはすごく恐怖を抱いたり不安を抱いたりするので、就労の面ですごく問題になるし、出産育児とか結婚とか、そういうことにはすごく大きな問題が常に潜んでいます。」と話す。

周囲の理解を得られず職を離れざるを得ないケースも

この日、クリニックのオープンを祝いに来たのはIBD患者の高木江里子さんだ。

松田医師が体調を尋ねると、高木さんは「張りが前良くなかったのが、だいぶましになった。」と答えていた。

高木さんは合併症で腸が狭くなり一部を摘出。1日に数回下痢が起きるほか、血便による貧血や倦怠感があると言う。

元々会社の栄養士として働いていた高木さん。勤め先には、特に隠したりはしていなかったし、病状も伝えてあったという。それでも、「トイレばっかり行っているよね」と言われ、「やっぱりわかってもらえないんだな」と思ったと言う。理解がないわけではないが、自分が気を遣う場面がたくさんあり、ストレスが多かったそうだ。

このため、高木さんは、栄養士の仕事を辞めた。今は自分のペースで仕事ができるよう手作りのお菓子を販売している。高木さんはまず病気を知ってもらうことが、患者が救われる第一歩だと話す。

高木さん:
見た目ではわからないのでだらけていると見られなくはないんです。そういう風に言われると自分がだらけていると思ってきちゃう。怠けているわけではない、本当にしんどいんだ、体力の部分で眠気がくるんだよというそういう部分を知ってほしいです。

北陸で初めての『IBD啓発イベント』

5月17日。IBDについて正しく知ってもらおうと松田医師が啓発イベントを開いた。IBDをテーマにした啓発イベントは北陸で初めてだ。

松田医師は話す。「こういう啓蒙活動を通して、僕の隣にそういう患者さんがいるかもしれないということだけでもわかっていただけると、本当にそういう患者さんが助かる。」

少しでも患者が生きやすくなるように。松田医師の活動は続く。

(石川テレビ)

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