島根県安来市にある足立美術館の日本庭園は、アメリカの専門誌で22年連続“日本一”に選ばれ、庭園を目当てに訪れる人も少なくありません。
そんな美しい庭園づくりを担うのが庭師。
美術館では2024年と2025年に新人を迎え、「神管理」と呼ばれる庭園の徹底した手入れが、次の世代に受け継がれようとしています。

安来市の足立美術館では、開館約1時間前に庭園の掃除が行われます。
1970年の開館以来、毎朝欠かすことなく行われ、庭師など庭の管理スタッフだけでなく、職員総出で来館者を気持ちよく迎えます。
国内はもとより海外からも合わせて年間55万人以上が訪れる足立美術館。
アメリカの専門誌が毎年発表している日本庭園のランキングで22年連続日本一に選ばれています。
その専門誌でも称賛されたのが、「神管理」と呼ばれる徹底した庭の手入れ。
朝の掃除のあと、庭師たちが庭の隅々まで目を配り、手入れしていきます。

Qいま何の作業をしていますか?
庭師:
今、クロマツの芽取りの作業をしています。

この日は、美術館の近くの作業場で植え替え用の予備のクロマツの「芽取り」、新しい芽を摘み取り、枝ぶりを整える作業です。
足立美術館の庭師は現在8人、このうち4人は20代で、2024年は2人、2025年は1人、新人を迎えました。
若手庭師の1人である龍見洸樹さん(24)。
大阪府の出身で、京都の大学で「造園」について学んだあと、2024年に庭師を志し、足立美術館に入りました。

Qなぜ庭師に?
庭師・龍見洸樹さん:
(小さいころから)外で遊ぶのがすごく好きで、知らないうちに自然と自然の中で遊んでた。漠然と外でできる仕事がしたいと思っていた。

大学卒業後、庭師への憧れが強くなったという龍見さん。
「せっかくなら一番すごいところで挑戦してみたい」と考え、足立美術館を選んだそうです。

庭師・龍見洸樹さん:
掃除にしろ手入れにしろ(先輩に)まったく追いつけなくて。なんとか頑張って食らいつこうとは思うんですけど、(先輩と)すごくスピードが違いすぎて。まだまだだなと思っています。

「修業」に入ってからの1年を振り返りました。
龍見さんの「師匠」、河野伊織さん。
この道26年のベテランです。

足立美術館・河野伊織庭園係長:
枝ごとに順番に取っていけば、取り残しはないと思う。

2年ぶりの新人として迎えられた龍見さん、1年目の仕事ぶりは。

足立美術館・河野伊織庭園係長:
頑張っていますよ、一生懸命だというのは伝わりますけど。まだまだ覚えることもたくさんあるだろうし、一生懸命頑張ってほしいですね。

温かく見守っています。

庭師・龍見洸樹さん:
こういったらなんですけど…お父さんに近いといいますか。

足立美術館・河野伊織庭園係長:
お父さんに近い(笑)

そしてもう一人、龍見さんの同期の大川陽生さんは、山形県出身の21歳です。

Q、なぜ庭師に?
庭師・大川陽生さん:
植物が好きで、高校から農業系の学校に進んで、そこからもっと植物のことを学びたいと思って県外の専門学校に進学した。

もともと植物が好きだったという大川さんは、自分でも庭いじりができるようになりたいと庭師を目指しました。

Q遠く離れた島根へ来る不安は?
庭師・大川陽生さん:
正直ないといえば嘘になりますけど、でも自分がやりたいことがあったので、あまりそこまで強い抵抗はなかったですね。

大川さんの指導係になったのは、新田真一さん。
庭師になって28年のベテランです。

足立美術館・新田真一庭園課長補佐:
最初は覚えるのでいっぱいいっぱいだと思うんですけど、1年経験すればだいたい…でもまだまだですけど、頑張ってほしいな。

足立美術館では庭師の退職などが重なり、ここ3年ほどは深刻な人手不足に悩まされていました。
そこで、県内出身者限定から採用枠を県外にも広げたところ、2024年に龍見さんと大川さんを採用。
2025年も、さらに新人1人を迎えることができました。

足立美術館・新田真一庭園課長補佐:
やっぱり若い子が増えると活気が出て、うれしいですね。5人体制は厳しかったです。去年2人追加で、さらに今年1人追加で仕事が充実している。

庭師・龍見洸樹さん:
先輩方のような庭師になることが第一の目標。この身体一つでなんでもできる庭師になりたいなと思っている。

庭師・大川陽生さん:
自分が入ったことで(日本一の称号を)落としてしまわないように、もっと維持できようにしていくというのがプレッシャーでもある。よりきれいな庭を見ていただいて維持していくのが目標ですね。

『日本一の庭園』を次の時代へ。
研鑽を積む若き庭師たちのこれからに注目です。

TSKさんいん中央テレビ
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