いわき信用組合 本多洋八理事長:
本当に申し訳ございません。
信用を第一とする金融機関としてあるまじき事案であると認識しております。

この記事の画像(16枚)

5月30日、20年以上にわたって行われた247億円あまりの不正融資について、釈明に追われた、福島県のいわき信用組合の本多洋八理事長。

第三者委員会は報告書で「我が国の金融機関の歴史を見ても類例をみないほどに悪質な事案」と指摘。礎であるはずの「信用」が大きく揺らぐ事態となっています。

預金者の名義で“無断借名融資”も

はじまりは、1件の内部告発からでした。

2024年9月、SNS上で「元信用組合職員」を名乗るアカウントが、いわき信用組合の長年に渡る不正について告発。

いわき信用組合は、遅くとも2004年から経営難に陥っていた大口の融資先の資金繰りを支援するために、限度額を超えた融資を行っていたとみられ、その過程で不正な資金の流用があったというのです。

その手口は、事業実態のない企業、いわゆる“ペーパーカンパニー”を通じて融資を行う“迂回融資”。さらに、預金者の名義を無断で使い開設した1200以上の口座を通じて、“無断借名融資”も行われていました。

第三者委員会・新妻弘道弁護士:
基本的には役員であったり、職員の親族、あるいは知人といった一定の関係のある方の名義を使っているようだと調査で明らかになっているのですが、一見関係ない顧客の名義を使っている事例も少なからず見受けられました。

そもそもなぜ、不正を犯してまで融資を継続しなければならなかったのでしょうか。
「サン!シャイン」は金融業界に詳しい、東洋大学の野崎浩成教授に聞きました。

東洋大学 野崎浩成教授:
今回の融資先というのがそこそこ金額の大きい融資先。そこが例えば不良債権になってしまうと、場合によっては赤字になってしまう。赤字になると責任を取らされるのは自分であると。経営陣の立場からからすると、なんとかそういう事態にはなりたくないと。

総額で247億円にのぼるとみられている一連の不正融資。
預金者たちは…。

預金者(50代):
経営陣の方の浅はかさが、いわきの名前を汚した。震災があって頑張っているところを今回の件で汚した気がして、正直憤りを感じるというか。通帳持っているけど解約しようかなという気にはなっています。

預金者(50代):
今後どうするか明確なことがほしい。
預金者(50代):
中ぶらりんのままなのでどうしていいか分からず…。

会見中、なぜか笑みを浮かべる場面も…
会見中、なぜか笑みを浮かべる場面も…

前代未聞の不祥事を受け現経営陣ら7人の辞任を発表したいわき信用組合ですが、会見中にはなぜか理事長が笑みを浮かべる場面もありました。

なぜ明るみに出なかった?

20年以上にわたって行われていたという不正融資。なぜ明るみに出なかったのでしょうか?

第三者委員会は、不祥事の背景に常軌を逸した上意下達の組織風土や内部チェック態勢の機能不全などがあると指摘。

<第三者委員会報告書より>
「パソコンを持っていることが怖くなり、ハンマーにより破壊して処分した」

さらに、第三者委員会が設置されるのと同時に、重要証拠が入ったパソコンを社員が破壊。証拠隠滅が図られた可能性も浮上しました。

また、震災後に国から受けた200億円の資金支援のうち調査で判明しただけでも、約10億円が不正融資に使われていたことが分かっています。

一連の不正を受け、業務改善命令を出した東北財務局。
いわき信用組合には、今後も説明責任を果たすことが求められています。

「サン!シャイン」スタジオでは、慶応大学総合政策学部教授の中室牧子氏に聞きました。

中室牧子氏
中室牧子氏

中室牧子氏:
今回の件は件数も、金額も非常に大きい。悪質性もかなり高いということにおいては、際立った案件だなと思います。
信用組合の経営陣っていうのは、地元の有力者によって構成されるケースが多いので、内部通報が起こりにくかったりとか、内部のけん制が起こりにくいというようなことはよく指摘されています。地元経済との密着みたいなのが裏目に出て、地元支援の名目でガバナンスが効きにくいというような問題もあったかなというふうに思います。

MC 谷原章介:
いわゆる、都銀だったり地銀だったり、それよりも信用組合というのはもう少し監査が緩めというのは昔からあるんですか?

中室牧子氏:
かつて指摘されてはいたんですけれども、ガバナンスが厳しく問われるような時代になってきたからには、例えば会計士や弁護士の外部の社外取締役のような役割の人っていうのを必須にするというような対策も必要だったのかなと思います。

MC 谷原章介:
まともに取引をしてきた企業が何らかの損害を被る可能性もありますよね。

中室牧子氏:
今回の件は、いわき信用組合だけの話にとどまるかって言われたら、必ずしもそうとは言えないのではないかと私は思っています。
他でも同じようなことが起きていないかということはチェックが必要ですし、再発防止が他にもきちんと適用できるようなあり方になっていくことが必要じゃないかなと思います。
(「サン!シャイン」6月2日放送)