2025年の山形のサクランボは同じ園地内や近いエリアであっても、着果数にバラツキがある状況が確認されている。実った分を確実に提供するため、贈答用の注文受付を止めたり、サクランボ狩りの受付けを制限したりするなど、苦渋の対応をとらざるを得ない園地も出ている。

今までにない不作で贈答用の注文受付中止
山形・山辺町の会田平四郎さんのサクランボ畑は、15アールのうち8割を佐藤錦が占め、毎年約500キロを出荷している。
しかし、2025年は佐藤錦の結実が悪く、大きな実は平年の1割にも満たない「危機的な状況」だという。

会田さんは、「佐藤錦はまったく実がついていない、見る影もない。何粒ついているか数えたほうが早いくらい実がない」と話す。

1メートル50センチくらいの枝の中で、ものになるのが1個だけ。それ以外の小さい粒は落下してしまう場合も。
ほかの佐藤錦の木を見ても、大きくと育っている実はほとんどなく、今までにない不作で、平年と比べてもよくなく、贈答用を送ることができないと言う。

現状を受け、会田さんは5月20日、佐藤錦の注文の受付けを止めた。
すでに注文を受けた客にも「ことしは発送できない」と断りの連絡を入れたという。

「今年こそ」と意気込んだが自然には勝てなかった
会田さんは、「4月中旬~下旬にかけてくもりの日・風の強い日があって条件が悪く、佐藤錦がうまく受粉しなかった」と、天候不順が結実に影響したとみている。
会田さんの園地では人工授粉を2回行ったが、強風の影響を受けめしべが乾いてしまい、受粉しづらくなったという。

昨年(2024年)の山形のサクランボは、高温の影響を受け平成以降で2番目の不作だった。
「2025年こそは」と意気込んだ先にあった“実が育たない”という思わぬ事態に、影響が見えてきた地域では生産者の落胆が広がっている。

サクランボ農家・会田平四郎さん:
毎年、生産者としては意欲をもって、「今年はやるぞ」という気構えでやっているが、自然相手だから自然には勝てなかった。
天候の影響で佐藤錦の実の数が少ない
一方、山形・上山市にある「高橋フルーツランド」を訪れてみた。

6月半ばに収穫を迎える露地もののサクランボが実る約1ヘクタール園地を、高橋フルーツランド・高橋社長に案内してもらうと、「交配がうまくいっていない。佐藤錦の場合はほかの品種の花粉がつかないと花は咲いても受粉しない。段々しぼんできて、ほかはみな落ちる。収穫できない」と説明してくれた。

2025年は開花時期の天候の影響で受粉を担うハチの動きが鈍く、主に佐藤錦で実の数が少なくなっている。

この園地では紅秀峰などの「交配樹」も佐藤錦の近くに植えているため、ある程度の実の数を確保することができた。
高橋フルーツランド・高橋真也社長:
紅秀峰の枝と佐藤錦の枝が交差しているところは、ハチが飛ばなくても受粉する。

「実の確保」のためお客が来ても断らざるを得ない
しかし、5月28日に発表された作柄調査の結果「収量少ない」が表すように、県内では着果数が少ない園地も多いとみられる。
サクランボを供給できる園地が限られてしまうことで、ある別の問題が起きていた。

高橋社長によると、「サクランボがなっていないと、なっている所に客が集中する。ある程度、予約で制限しないと品物がすぐなくなる」という。

高橋フルーツランドには、県の内外から例年約7000人がサクランボ狩りに訪れる。
加えて贈答用も扱っているため、すでにサクランボ狩りの団体予約も入っているが、2025年は「実の数の確保」のため予約なしで来る客を制限し、「完全予約制」をとることにした。
高橋社長は、「サクランボが実っていて、来てくれるお客さんがいるのに断るのは心苦しい。山形県の一番の果物だから…」と話していた。

これまで個人の来場者には実施したことがなかった完全予約制。
県内各地で確認されているサクランボの「実の少なさ」が、贈答用のサクランボ・観光にも影響を及ぼし始めている。

※高橋フルーツランド・高橋真也社長の「高」はハシゴダカ
(さくらんぼテレビ)