農業経営は、人手不足に加え資材の高騰などのあおりを受けて厳しい状況が続いています。こうした中で注目されているのが、ICTを活用して省力化などを図るスマート農業です。大野市内では30日、ドローンを使ったコメ作りに挑戦している農家が種まきをしました。
大野市蕨生にある旭農園の水田で行われたのは、ドローンを使ったコメの種まき作業です。
種を積んだドローンが大きなプロペラ音とともに、事前にプログラミングされた軌道で指定した田んぼの上空へと飛んでいきます。
到着すると、上から種を一斉に噴射。種は四方八方に広がり、水面に落ちていきました。使われている種は酸素でコーティングされて3倍ほどの重みとなり、水面に落ちると重みとドローンの風圧で1センチほど沈み込みます。
ドローンを活用した種まきは、田植え機を使って苗を植える従来の方法に比べて作業時間が約6分の1となり、1人でも作業できます。
県内初となるこの取り組みは、農家が抱える人手不足や生産コストの上昇といった課題の解消につなげられないかと、旭農園が農業機器販売会社に相談したことが始まりでした。2年がかりで、ドローン1台で種まきから除草剤や肥料の散布ができるプログラムを構築しました。
今回、種をまいた品種「にじのきらめき」は高温や倒伏にも強く収量性にも優れていて、ドローンでの種まきにも適しているといいます。
今回、ドローンの開発や販売を手掛けるヤンマーアグリジャパンの担当者は「これまでは、農家が20日間ほどかけて稲を育ててから田植えをしていたが、ドローン散布の場合は田植え前に種を特殊コーティングするだけなので大幅な時間の短縮になる」と話します。
旭農園の旭政一副代表は「何も触らずに決められた量を決められた面積に撒くことができる。農業というと大変、汚れる、安いというイメージがあったかと思うが、最新機器を活用して農業が楽にできるのでは」と期待を込めます。
ドローンを活用したコメ作りは、次世代へ持続可能な農業をつなぐ切り札となるかもしれません。
ドローンで播種した「にじのきらめき」の収穫は、10月中頃を予定しています。