2024年7月の豪雨から10カ月が経った山形・戸沢村蔵岡地区で、被害後初の田植えが始まっていた。地区の住民たちは逆境の中でも力を合わせ、ことしのコメ作りに取り組んでいた。

豪雨から月日流れ田植えの時期迎えた被災田
2024年7月の大雨で、地区全体が泥水に浸かった山形・戸沢村蔵岡地区。
5月27日、集落に広がる水田にはきれいな水が張られ、2025年も田植えの季節がやって来た。

蔵岡地区など計13ヘクタールの水田でコメを育てている農家の中村健一さん。

「近所のみんなは田植えが終わった、みんな俺の家に苗をくれる。みんな優しい、この地域の人は。心配してくれる」と話しながら田植えの準備をし、息子の大樹さんと一緒に青々と育った「雪若丸」の苗を植えていた。

土砂の流入で一つひとつの作業に手間かかる
2024年7月の大雨で最上川がはん濫し、集落全体が水にのまれた蔵岡地区。
あれから10カ月。水田に泥水と土砂が押し寄せ大量に流れ込んだ影響で、水田には今も場所によって大きな高低差が生じている。

中村健一さん:
水田の修復には3年くらいかかる。いま低い所と高い所で15センチくらい差がある。けっこう砂が入ったんだな…。苗が埋まるくらい差がある。5センチくらいの差にならすと大丈夫。災害後はこういうことがいっぱいある。

高低差があっても田植え自体はできるが、苗が水に浸からない部分が出るなど、稲を育てるのにより手間がかかる。

また、水田に水を張るための農業用水路を手ですくってみると、下の方には水上がりの泥がまだ残っていて、水の流れが悪くなっていた。
これまでは1日で中村さんの水田を水で満たすことができたが、現在は約3倍の時間がかかる。

そんな中でもかつてのご近所同士で助け合うことで、ことしも集落全体の95%の水田でなんとか田植えにたどり着いた。

おいしいコメができる“この場所”で作り続ける
これまで何度も洪水に見舞われてきた蔵岡地区の水田だが、中村さんは「洪水があると、上流から運ばれた土砂で水田がより肥よくになる」とあえて前向きにとらえている。

中村健一さん:
しっかり育っておいしいコメになってほしい。洪水で肥よくになる、それくらいしか洪水でいいことがない。昔からそれだけは思っていた。「おいしいコメができる」それがうちの集落の特徴。

蔵岡地区では今後「集団移転」で住まいは高台に移る見通しだが、それでも中村さんたちは生業のコメ作りをこれからも“この場所”で続けていくつもりだという。

(さくらんぼテレビ)