富山市の神明地区では、農家の高齢化で増え続ける耕作放棄地の解消に向け、地域外から新たな担い手を誘致する取り組みが始まっている。地元の若手農家たちが協議会を立ち上げ、新規就農者のサポート体制づくりに乗り出した。

3割が耕作放棄地に…若手農家が奮闘

「これ以上田んぼができないという家は少しずつ増えています」

富山市神明地区で農業を営む各川豊章さんはそう話す。この地区は住宅や商業施設の周辺に田んぼや畑が広がり、面積は約120ヘクタール。古くからカブなどの野菜や米作りが盛んだったが、現在は3割ほどが耕作放棄地となっている。

8年前に富山に移住し野菜栽培を始めた友田拓造さんは、「なんとか地域の農業を守っていけるように協力して頑張っている」と語る。友田さんは地域の農家から借りた畑でカブやそらまめ、白ネギなどを栽培し市場に出荷している。

しかし、高齢化に伴い作付けをしない農地が年々増加。耕作を断念した農家から作付けを依頼されるケースが増え、現在は地域の若手農家数人が分担して引き受けている状況だ。

この記事の画像(4枚)

協議会を設立し新規就農者を募集

「農業に挑戦したいという人が集まってきて、ワイワイみんなでいろんなことに挑戦したい」

各川さんは今年、農業を始める人を地域全体で募ろうと協議会を立ち上げた。新規農業者をサポートする体制づくりなどに取り組んでいる。協議会では5年後の所得で300万円を目指して就農者を募集し、来年度以降に受け入れる方針だ。

ただ、貸し出す農地が課題となっている。この地域は区画が比較的小さいうえ、空いている農地が点在しているからだ。

富山農林振興センターの目黒修平普及指導員は「園芸団地というか、団地を組んで園芸を行う地域を決めてやっていけばできる。SNSも頻繁に活用しているので、そういう力も借りて情報を発信して行政も支援して取り組んでいきたい」と話す。

呉羽梨の生産に5年で20人が参入

県内でいち早く地域外からの担い手誘致に取り組んできたのが、富山市の吉作地区だ。富山市特産の呉羽梨の生産には、この5年で20人ほどが参入した。

4年前、団体職員から転職した二股久央さんもその一人。現在はおよそ1ヘクタールの梨畑を借り上げ、収入は前の仕事よりも増えたという。

「自分でものを育てるとか自分で作ったものを売ることが楽しい。体は辛いですけど楽しいという気持ちのほうが大きい」と二股さん。

新たな農家の参入で生産者同士のつながりも広がり、地域が活気づいてきたという。「外から人が来ないと産地の作付面積は増えていかない。就農しやすいような環境を作ることがどの産地にもベストな動きだ」と語る。

県によると、就農者の募集は各地で増え、県内14の産地で募集しているという。空いている農地は今後さらに増えると見られ、各地の取り組みの成果が注目される。

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。