3年前の夏、南越前町を豪雨が襲いました。当時、甚大な被害が出た赤萩地区では28日、地区を流れる河野川に地元の児童たちが稚アユを放流しました。地区のシンボルである河野川に「アユが遡上しますように」という思いは、住民らの復興への願いでもありました。
  
小川一樹記者:
「南越前町赤萩地区を流れる河野川です。澄んだきれいな水が流れるこの川は、3年前、豪雨によって氾濫した川でもあります」
  
2022年8月5日、南越前町を襲った豪雨。赤萩地区を縦断するように流れる河野川が氾濫し、濁流が集落を飲み込みました。33世帯のうち1世帯が半壊、半数以上が床上浸水するなどの被害を受けました。
  
当時、区長は「ここが一番ひどいところ。こんなところ(住宅地)まで土砂が流れてきて川になってしまっている。立っていたら埋まってしまうような状況」と話していました。
   
あれから3年。河野川の周辺にはあちらこちらに氾濫の爪痕が残っていました。現在、赤萩地区には当時から1世帯減り32世帯が暮らしています。
  
当時、取材に答えてくれた元区長の小角譲さんは「元々はもっと川幅が広かった。下流に擁壁をつくる工事をしてもらったが、そのあとの雨で土砂が流れてきて溜まってどうしようもないので、ならしてもらった」と話します。
  
澄んだ水に見えますが、小角さんは豪雨前の状態には完全に戻っていないとし、生き物の力で川を浄化することが必要だと考えています。「川を直すというのは人工的に人間、機械の力を借りてというのもあるが、それから先は生物の力や住民のちょっとした気配りで元に戻るのではないか」
   
28日は、河野小学校の全校児童32人が稚アユ1万5000匹、ヤマメ4000匹を河野川に放流しました。放流した稚アユは秋に川で産卵します。その後、2、3週間で孵化すると日本海へ下り、翌年の春に河野川へ戻ってきます。2024年も放流を行い、この春はたくさんのアユの遡上が確認されたそうです。
   
この河野川は知る人ぞ知るアユ釣りの人気スポットで、8割が県外客。「ここで釣るアユの味は格別だ」と評判です。アユが遡上する河野川は赤萩地区の“復興の象徴”でもあるのです。
   
小角さんは「河野川は生活の中心になっているから、綺麗な川を見れば安心感も出てくるし、ちょっとずつできることをやっていけば結果も見えてくるのかな」と希望を口にします。
   
河野川のアユ釣りの解禁は6月28日です。    

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